【怖い話】 チャイルドプレイ

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怖い話タイトル

知り合いの話。

その人のことを「U」、
Uのお姉さんのことを「U姉」、
Uの妹さんのことを「U妹」と仮称することにする。

U姉は都内の出版社に勤めている。
実家から通うには通勤時間が長い為に都内で一人暮らしをしていた。
滅多に実家に帰らないU姉だったが
今年のゴールデンウィークは実家に帰ってきた。
一人ではなく、二人で…。

出迎えに玄関に出た家族は驚愕する。

U姉は小学生になるくらいの女の子を
抱きかかえていたのである。

いつ産んだ?
相手は誰だ?
名前はなんていうんだ?
なんで相談しなかったんだ?

大慌てとなるUの家族の中でひとりだけ、
U妹は冷静だった。

「お姉ちゃん、ドールなんてやってたの?」

U姉はニンマリと微笑んだ。

「名前は“リカコ”よ」

それはオランダ妻のように端正な顔立ちで、
精巧に作られているようで金髪が植えられ、
ゴスロリ系のヒラヒラのついた服が着せられていた。
遠目で見れば、外人の女の子に見える精巧さだ。

「最近、ハマっちゃったのよ」

人間に似せて作られていながら
どこか人間に似ることを拒否しているような
そのドールちゃんに対して、
家族全員になんとも言えない嫌悪感を湧かせた。
感情を露骨に顔に出した両親に対して姉は口を尖らした。

「ちょっとやめてよ。この娘が怖がるじゃない」

U母は表情をさらに険しくした。

その夜、久しぶりに家族全員で焼肉を食べに行った。
U父やU母は、U姉に肉を取ってやりながらあれこれと話題を振る。

「仕事は、どうなんだ?」
「私、リストラされるかも」

「体は大丈夫なの?」
「最近、特にダルいわ」

「いい人とか、いないのか?」
「いないわね」

どことなく会話がぎこちないのは
上座にドールちゃんが座っていたからに他ならない。
しかも姉の仕業か、ドールちゃんの前には
おしぼりと割り箸、取り皿まで置かれていた。
コップにはビールが注がれている。

『ビール飲むんかい!』
と、Uはツッコもうとしたが冷静な妹に止められた。
「怒らせると、怖いから辞めた方がいいよ」

食事が終わり、姉が自室にこもったのを確認した後で
U家の緊急家族会議を開かれた。

あのコ、どうしちゃったのかしら?。
ああいうの流行っているらしいけど。
姉ちゃん、相変わらず男っ気がないみたいだしな。
趣味なら、どうこう口出す事じゃないんだが…。
なんか気持ち悪いのよ、アレ!
もう少し可愛げがあればいいんだけどなぁ。
そういう問題じゃないよ、兄さん。
理由はわからないけど気持ちを悪い。
U姉もいろいろ30後半、地元の同級生たちもほとんどが結婚している。
ひょっとしたらドールへの執着はそのあたりのデリケートな
心の問題と直結しているかもしれない、そっとしておこう。
何言っているの、こんなの持っていたらますます結婚できないでしょう。
母さん、落ち着け。
これが落ち着いていられますか。ご近所にはどう説明すれば。
U兄のダッチワイフということにすれば。
バカ、俺の世間体はどうなるんだ。
じゃあ、父さんの…。
アホなこといってないでマジメな考えなさい。

結局、
何も結論が出ないまま様子を見ようという事で落ち着いた。

その日の深夜。

自室でエロ画像の収集をしていたUは、ふと喉の渇きを覚えた。
「下階で何か飲んでこよう」
午前3時を回ろうとしていル時刻。
階下に下りるとリビングの明かりがついていた。
(誰か起きているのかな?)

パチッ…パチッ…パチッ…パチッ…

何か音がする。

リビングに入るとソファにU姉がいた。
「リカコちゃん」を抱きかかえている。
背後からではよく分からないが、なにやら微笑んでいる。
リビングから台所に回り、
冷蔵庫からジュースを取り出して飲んでいると、

パチッ…パチッ…パチッ…パチッ…

また、あの音だ。
音は姉のいた方からしていた。
何気なく姉を方を見る。

   姉は、足の爪を切っていた。

   人 形 の 足 の 爪 を 。

うふ、うふふふ。

姉は笑っていた。

その表情に、ドールに感じたのと同じ嫌悪感を抱いた。

ゴールデンウィークの最終日の前日。
U姉が都内の部屋に戻る日、
家族は見送るというよりは見届けるかのように玄関に集まった。

来た時と同じようにリカコちゃんを抱えて
家族に背を向けて門に歩き出したU姉は
不吉な言葉を残して去っていった。

  「今度は、他のコたちも連れてくるわね」

家族は全員、イヤな顔をしたという。

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