二つの月、「愛」と「友情」と「裏切り」のファイナルファンタジー。
スーパーファミコンでこの作品を初めてプレイした「あの夏」のことを、私は一生忘れることができないだろう。『ファイナルファンタジーIV』。名曲「赤い翼」からはじまるオープニングに、私は国産RPGの新しい夜明けを見た。これからゲームはもっと凄くなる。そんな興奮を、私は抑えることができなかったのだ。
こんにちわ、レトロゲームレイダース・ジョーンズ博士だ。
今回、発掘した作品は、1991年7月にスクウェアから発売された『ファイナルファンタジーIV』。そう、あの夏はやたら暑かった。当時、私は親からゲーム禁止令を受けていたため自分のスーパーファミコンを持てなかったのだが、大好きなFFの新作が出ると聞いていても立ってもいられなかった。そんな私を不憫に思ってくれた友人がオレを家に招いてくれ、FF4をプレイさせてくれたのだ。
スーパーファミコンの本体スイッチを入れてはじまる期待の新作FFのオープニング。拡大縮小機能をうまくつかった滑空する五機の飛空挺!そして流れる決してファミコンでは表現できない荘厳さをまとった勇ましい曲「赤い翼」!それはまさしく“最高の演出”だった。
「映画的演出」…今ではゲームを語るときにこれほど陳腐な言い方もなくなってしまった。しかし、この当時、FF4のオープニングはまさにこの言葉でしか表現できない域に達していた。「RPGはプレイするゲームではなく、観る楽しみも与えてくれるのか!」。まさに、FFが劇場型RPGとして新たな歴史を歩みだした瞬間。それは、鮮烈としか言いようがない衝撃だった。
ファイナルファンタジーIVはすべてのRPGを過去のものにした!
それは言い過ぎではない。SFCだけに留まらず、メガドラも、PCエンジンも、FF4以前と以降では作り方があるで変わっている。従来通りの作りに終始したドラクエ5が名作にも関わらずユーザーから絶賛されなかったことも、FF4によってユーザーの価値観が変わってしまった影響のひとつなのは疑う余地もない。
FF4は「従来のRPGの常識と、これまで培ってきたシリーズの不文律」に挑戦した作品だ。主人公のセシルにスポットを当てたストーリー、常に入れ替わる仲間たちによるパーティ編成、美しいグラフイックで描かれたダンジョン、しかもそれが惜しげもなく使われていく構成、ドラマティックかつ二転三転するストーリー、コマンド制を廃止したアクティブタイムバトル、タイミングによって攻撃方法が異なるモンスターたち、どこまでも広がる冒険の舞台、そしてそれを奏でるBGMの豊富さ…。すべてが規格外だった。
眼下に広がる森やかなたの山脈まで描かれたダンジョン。
溶岩が湧きたつ地底にまで冒険の舞台は広がっていく…。
戦闘シーンは前作までと異なり背景がきちんと描かれるように。
今プレイし直してみると、雰囲気が『ラストストーリー』とよく似ている。
戦闘自体がイベントのワンシーンとして描かれるのは今作がシリーズ初。
航海中にリバイアサンに襲われるというパターンは前にもどこかで…?(笑)
地下水脈の奥に眠っている、10本足の悪魔・オクトマンモス!
その爆発力はパーティを全滅させかねないほどの威力!脅威のマザーボム!
絶対回避不可の三位一体攻撃を得意とする、メーガス三姉妹!苦戦は必至だ!
お前も蝋人形にしてやろうか!? 魔人形・カルコブリーナが襲いかかる!
ゴルベーザ四天王、土のスカルミリョーネ! 死んでから本領発揮するアンデッドの王!
ゴルベーザ四天王、水のカイナッツォ! その必殺攻撃は…以下自粛。
ゴルベーザ四天王、風のバルバリシア! 身にまとう風のバリアを脱がせてもスゴイ!
ゴルベーザ四天王、火のルビカンテ! 「炎とはこうやって使うものだ!」。
黒い甲冑・ゴルベーザ! 一流の剣を使い手であり、魔法にも精通する謎の男。
span>
全滅寸前のセシルたちが謎の幻獣に助けられる!この霧のドラゴンはたしか…!?
暗黒騎士では闇に勝てない!セシルは自身の暗黒面と対峙する決意をする。
磁力の洞窟では鉄製武器を装備していると行動不能に…!
ミシディアに伝わる古の伝承は、セシルの辿る運命に大きく関わっていく…。
セシルやカインの育ての親であるバロン王は、最近、なんだかお疲れのご様子。
壁が迫ってくる罠によってこのままでは全員の命が危ない!その時…!
育った村を焼かれた過去を持つリディアは、初歩魔法であるファイアを使うことができない!
悲しすぎる父と母との再会によるエッジの怒りは、彼の潜在能力を引き出す!
都市を飲む込むほど巨大な殺戮兵器“バブイルの巨人”相手に勝算はあるのか?
アサルトドアーの9ディメンジョンはリフレクを使えば逆にカンタンに倒せる武器になる。
「セシルとローザの子が見れないのは残念だが…」シド、やめろーーーーーっっ!!
このタイミングでFF4と出会えたことは幸せだったと思う。なぜならこの感動は、今FF4を未プレイの方にプレイしてもらっても決して感じることができないものだからだ。あのFCからSFCへ移行する時代。今からすればチャチなFCのRPGを貪ってプレイしてきた下地があったからこそ、衝撃的なFF4の魅力を味わい尽せたのだ。
FF4は時代を超えた名作ではない。ストーリーとしてはライトノベル以下だし、セリフ回りも実はひどい。これよりもずっと完成度の高い作品はいくらでもあるだろう。しかし、人々が新しいRPGに渇望していたあの時期に出たという事実が、FF4をFF4たらしめている。
近年、PSPで『ファイナルファンタジーIV』と、セシルとローザの息子であるセオドアが主人公の『ジ・アフター・イヤーズ』がセットになったコンプリートコレクションが発売された。かつてFF4に魅了されたパラディンたちはノスタルジィな気持ちに浸るために、未プレイの方は昔の挑戦的なスクウェアの魂を感じるくらいの期待値でプレイしてみてはいかがだろうか。
「新しいRPGを創る!」─―そんなスタッフの意気込みが、クリスタルの輝きのように美しい。今、遊んでも楽しいかは微妙だが、国産ゲーム史に名を残す偉業を成し遂げたのは間違いない。