さあ、この世の“狩り”の時間だ。
日本でしかヒットしていない大作『モンスターハンター』シリーズ。その中においても、PSPでリリースされた『ポータブル』シリーズは、「多人数で狩りを行なう楽しさ」をストレートに提示。“農耕民族”であるがゆえに、“狩猟民族”に魂から憧れる日本国民の心を掴んだ。中でも、『MHP2G』はシリーズ最高のタイミングでリリースされ、多くの人々を魅了。出会い系ガジェットにもなり、狩友⇒夫婦になったカップルも数多く存在する。
これは、アタシの知り合いの奴の話なんですけどね。
MHP2Gがキッカケで結婚した、という奴がいるんですよ。
仮にMとしておきましょうか。
あるとき、Mから電話がかかってきて、
「結婚式で流す二人の馴れ初めムービーを作ってくれ」って言うんですよ。
アタシ、本職のコピーライターのほかに、
ムービー制作を請け負うといった副業も少しやっているもんですから、
ああ、いいよ。じゃあ今度会おうやって話になったんだ。
その日は意外と早く来ましてね。
ムービー制作は、アタシと友人のKの二人で行なっていて、
Mはアタシたち共通の友人でしてね。
あいつもとうとう結婚するかとか、
Bzの歌みたいな話をしながら待ち合わせ場所のファミレスに向かったんだ。
でもね、実はアタシ、
その日、どーも厭な予感がしてたんだ。
特に根拠はないですよ。
でも、なんか今日は厭なもの見ちゃうんじゃないか、そんな予感がしてね。
ヘアセットも決まらないし、コンタクトレンズもうまくはまらない。
そーんな感じの日だったんですよ。
ファミレスに着くと、すでにMとMの彼女が先に待っていましてね。
「紹介するよ」と紹介された彼女が非常に個性的な人だったんですよ。
ムービー制作のために、いろいろとエピソードを聞いたんですが、
彼女さんは非常にティガレックス並に肉食的な方のようで、
女に縁のなかったMに、MHP2Gと巨乳という女的なところをエサにして、
Mを捕食した…って感じだったんですよね。
「実は、コイツの腹には新しい生命が宿っていてな」
「イヤン、くっく」
そんな感じで脳みそがポッケ村のお花畑になっている二人は幸せそうだったので、
それはそれでよかったとアタシは思ったわけですよ。
ただ、気になったのは、Mの彼女はいろいろヒミツがありそうで。
なかなかムービーのネタになる個人のエピソードを教えてくれないんだ。
私も仕事柄、取材によくいったりするものだから、
相手の懐に飛び込んで「口八丁」「手八丁」という双剣の乱舞を試みたんですが、
向こうのガードはグラビモス級でまったく歯が立たない。
そこで、Kとアイコンタクトで連携を試みて、
アタシが例の双剣乱舞攻撃でポポノタンが沢山取れそうなオッパイを褒めたりして
注意を引いているスキに、
ビールという名のガンランスをKがMとM彼女に何本も追撃していき、
1~2時間くらい経つといい感じでへべれけにピヨることに。
ようやく口が軽くなってきたところでコンボをたたみ掛けると、
年齢の詐称とか、昔●●●●で働いていたとか、
ここでは書けないような過去がいろいろボロボロと出てきちゃってですね。
アイテム掘り探すつもりが、
いつの間にか自分たちのほうがシビレ罠を踏んでしまったというか。
Mのやつ、こういう女性が伴侶で大丈夫かなと心配したんですけどね、
杞憂だったみたいで。
トイレで連れションしているときにアタシに言うんですよ、
「アイツがいろいろ背負っているのは知っていた。
でも、それをオレも背負っていこうという気になったからプロポーズした」。
その言葉に、アタシ、グッと来ましてね。
不器用なコイツらのために最高のムービーを作ってやろうと思ったですよ。
そんなアタシのいい雰囲気をぶち壊したのは、
MとM彼女と別れて二人を見送っていたときのKのひと言でした。
「アイツの嫁さん、ババコンガみたいだったな」。
お前、そーゆーことを言うもんじゃないよ、
二人が幸せならそれでいいじゃないか、と嗜めようとすると、
「あっ、創作の神が降りてきた!帰ろう!」
と、慌ただしくその日はそんな感じでお開きになったわけです。
実はその後、本職のほうがめちゃくちゃ忙しくなってしまって、
アタシはムービーの全体の構成とコンテまでは関わったんですが、
詳細の演出やと選曲はKに一任することになり、
完成品を見ることなく、披露宴当日を迎えることになりました。
そして、ついに80名の参加者の前で、
アタシたちが制作に関わった二人の馴れ初めムービーが流されることに。
最初の耳に入ってきたのは、この曲でした。
※モンスターハンターポータブル2ndG 『英雄の証』
ムービーのクオリティは高く、モンハンと二人の馴れ初めを知っている者も、
そうじゃない親戚の方々からも、感嘆の声が上がるレベルで大成功でしたね。
披露宴が終わった後に、MとM彼女の二人からも
「モンハンが二人を結び付けてくれた。
あの曲はそういう意味で思い出の曲だったから、最高のムービーだったよ」と。
喜んでもらえて、本当に嬉しかった。
でもね、アタシはKの悪意に気がついていたんだ。
モンスターハンターのテーマを使用した理由は、Mへのメッセージ。
「リアルでババコンガを狩って嫁にするという
高難易度のクエストをたった一人で達成するなんて
Mよ、お前こそ、真の“モンスターハンター”だぜ」
二人が幸せならそれでいいじゃないか。
アタシは、そー思うんですけどね、ええ。
いやぁ、世の中には本当、不思議な話があるもんですねぇ。