【怖い話】 ピンクなお店で同級生と再会した話。

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怪異

知り合いのクロダくんから聞いた話。

私生活でむしゃくしゃすることがあって、
「スッキリさせよう!」って、ソープランドに行ったそうなんですよ。
受付で適当に好みの女の子を選んで、
応接室で5分ほど待たされて、ボーイに呼ばれて部屋に入る。

女の子は、「ナナ」という名前。
写真では「26歳」ってなっていたけど、本物はもう少し年は行ってそう。
(30ちょっと過ぎ。オレと同じくらいか)
なんて風に思っていた。

「あれっ?ひょっとして、クロダくんじゃない?」

いきなり本名を呼ばれてドキッとする。
目の前の泡姫が、なつかしそうな表情をしている。
(誰だ? 知り合いじゃないと思うが…)
怪訝な顔をしていたのだろう、泡姫は自分から正体を明かした。

「私だよ。学部がいっしょだったでしょ。ムラカミだよ」

名前を聞いて思い出す。
学生時代にいつもつるんでいた仲間内の一人、ムラカミさんだ。
顔をよく見てみると、たしかに面影がある。

「えっ、ムラカミさん? 全然わかんなかったよ!」

「クロダくんは、変わらないね!」

大学の卒業式以来、10年近く会っていなかった。
年月のせいで歳を取った…というよりも、
ムラカミさんは、ガラリと印象が変わっていて分からなかった。

学生時代、ムラカミさんは美人という感じではなかったけど、
ショートカットが似合っていて、いつも快活で、
誰とでも分け隔てなく、親しみやすく、話しかけてくれる女の子だった。
一時期、その姿を目で追っていたこともある。
だから、無駄な肉がついていない、そのしなやかな身体のラインを知っていた。

そんなムラカミさんが生まれたままの姿で自分の前に入る。
椅子の前に座り込んで、石鹸水をといでいる。
恥ずかしさと、照れくささと、何かに反する罪の意識がまじって、
血液がドクンドクンと脈打つのを感じる。

「あれー?同級生相手というシチュエーションに興奮しちゃった?」
「そうかもね…(笑)」
「そうなんだー。クロダくんはスケベなやつなんだなー」

そう言いながら、泡のついた身体を密着させてくる。
耳元でムラカミさんが囁く。

「でも、それはクロダくんだけじゃないんだよ…」

手を誘われた彼女の秘壺はすでに、熱いぬめりがあった。

ムラカミさんは、学生時代に同級生のスズキと付き合っていた。
スズキはマザコンの疑惑のある男で、
ケータイの待ち受けに「母親」の画像を入れていて、ドン引きした。
他にも、

親と買い物に行った、
親と映画に行った、
親が新しい服を買った、

そんな話題が多く、ムラカミさんと付き合ったのは“偽装”ではないかと、
ウワサする者もいたくらいだ。

そんなスズキは、2年目の夏休みに始めたホストのバイトにのめり込み、
やがて大学に姿を見せなくなった。
退学したのだ。
それでも、ムラカミさんとは続いているとのことだった。
そんなムラカミさんは、都内のある商社に内定をもらって、
そこに勤めていたはずだったのだが…。

「スズキくん? うん、まだ付き合っているよ。」

ベッドの中、クロダのウデ枕の中でムラカミさんは語った。

「彼も、大学辞めてからいろいろと苦労して。
 ずっと支えていたから、なんだか別れられなくなっちゃったんだよね。
 結婚しようって約束しているんだ。
 この仕事をしているのも、結婚資金を貯めようと思ってね。」

「そ、そうなんだ。
 じゃあ、こういう関係になったのは、ちょっとマズいかな?」

「ええー? 気にしなくていいよ。そーゆー仕事だもん。
 私が彼に言わなければいいだけだもの。 それに…。」

「それに?」

「…言えないよ。
 クロダくんのセックスで、マジイキしちゃったなんて…。」

「ちょっ、ムラカミさん!」

「ねえ…、さっきのやつ…、もう一回してくれる…?」

その日、クロダはなんともいえない気持ちで帰路につくこととなった。

学生時代に高嶺の花だった女の子と風俗に堕ちていたこと。
その娘とヤったこと。
その娘は同級生の婚約者であったこと。
その娘からセックスを褒められ、お願いをされたこと。

嫉妬、背徳感、優越感、いろいろな感情が混ざったある主の高揚感は、
日付が変わっても続き、しばらく彼をいい気分にさせた。

週末。クロダは大学時代の同級生、カネダ(男)と飲む約束をしていた。
飲みの席、クロダは少し口をすべらせてしまう。

「オレ、この間、某所でムラカミさんに会ったよ。」

「あー、そうなんだ。オレは先週スズキに会ったよ。」

「えっ。」

スズキの名前を聞いて、クロダの中で罪悪感が甦る。
カネダの話はこうだった。

先週末、街を歩いていたら唐突に声をかけられた。
振り返ると、そこにはすごく痩せていたが、間違いなくスズキがいた。

“ひさしぶりだなぁ。カネダ。”
“スズキか。本当にひさしぶりだなぁ。元気にしていたか?”
“ああ。まあ、良かったら、少し飲まないか?”

そして、二人で繁華街から少し外れたバーに入った。
その店は、ススギの馴染みの店のようだった。
そこでカネダは、大学中退後のスズキの人生を知ることになる。

意気揚々としてホストに転進したものの、すぐに身体を壊して辞めることに。
そのときに、仲間内のギャンブルで大きな借金をつくっていたこと。
その借金が原因で苦労したこと。
いろいろな仕事に就いたが、そのたびに身体を壊してすぐに辞めたこと。
そんな日々の中で、母親が亡くなったこと。
何もかも失ったスズキを支えてくれたのは、ムラカミさんだったこと。
ムラカミさんはまるで母親のように献身的で、
借金返済と結婚資金のために会社を辞めて風俗で働いている。
来年には、結婚しようと思っている。
そんな話だった。

「そうか。スズキもいろいろ合ったんだな。
 そして、がんばっているんだな。なんか、いい話だな、それ。」

自分の中の暗部を隠そうとして、そんな話題を振ると、
カネダはなんだか変な顔をしていた。

「“いい話”、なのかなぁ。
 なあ、クロダ。スズキさ、そのあとに変なことを言うんだよ。」

「変なこと?」

「ああ。」

以下はスズキの言動(カネダ証言)。

「今は、母親と暮らしていたマンションでムラカミと暮らしているんだ。
 ムラカミには、母親が使っていた部屋を使ってもらっている。
 気持ちの整理がまだつかないから、
 母親の荷物はまったく処分できていないんだ。
 “処分はいつかするから、しばらくはそのままにさせてくれ”と言ったら、
 “いいよ。スズキくんの大切な人のものだもん”って。
 理解してくれるんだな。
 それどころか、毎日、仏壇にお供え物してくれたり、
 朝なんか1時間以上も、仏壇の前で手を合わせてくれている。
 なんかブツブツ言っているけど、
 どこかで習ったお経なんだろうなぁ。ウチの親も浮かばれるよ。
 最近は、母親が使っていた、
 ハシや茶碗、湯のみ、皿なんかを使うようになってきて、
 料理も母親の味に近づいてきてるんだ。
 服とか、クツとか、下着とかも、
 “お義母さんのもの、使わせてもらっていい?”ってさ。
 ウチの家に入るという嫁の自覚なのかな。
 とにかく、お金はかからないし、お金はもってきてくれるし、いい女だよ。」

カネダは不味いものを吐き出すように、煙草の煙を吐き出す。

「それからさ、スズキが言うんだ。
 で、ムラカミさんに会ったお前にどうだったか聞きたいことがあってさ。」

カネダが気味悪そうに語る。

「ムラカミさん、整形したらしいんだよ。」

クロダは、ムラカミさんに再会したときに感じた違和感、
その正体に気がついた。

>「えっ、ムラカミさん? 全然わかんなかったよ!」
>
>「クロダくんは、変わらないね!」
>
>大学の卒業式以来、10年近く会っていなかった。
>年月のせいで歳を取った…というよりも、
>ムラカミさんは、ガラリと印象が変わっていて分からなかった。

思い出した。今なら分かる。

再会したムラカミさんの顔は、
学生時代、スズキのケータイの待ち受け画面になっていた、
スズキの母親にそっくりだったんだ。

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