【名作発掘】 『トワイライトシンドローム探索編/究明編』─―女子高生たちのキケンな午前2時。

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私たちゼッタイに信じない。この目で本当に視るまでは。

限りなく“ホンモノ”に近い心霊系エピソード…。臨場感あふれる深夜の探索…。1990年代のリアルな女子高生たちのモーション…。少女たちの成長を見事に描ききったストーリー…。そんな余韻をぶち壊す驚愕の後日談(隠しエピソード)…。これはもう伝説の作品といえるだろう。

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こんばんわ、トライライトシンドローム/ジョーンズ博士です。

今回発掘した作品は、1996年3月にプレイステーション用ソフトとして発売された『トワイライトシンドローム 探求編』と、同年7月に発売された『トワイライトシンドローム 究明編』の二本。同タイトルは、開発元・販売会社を変えてシリーズが発売されていますが、それらとはまったく別物なので、類似品にご注意ください
※ただし、Specialは探求編・究明編がセットになったBEST版なので“買い”だ!

トワイライトシンドロームとは、どんなゲームなのか?
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ひと言で言えば、女子高生3人組が、街にまつわる10つの怪奇事件に関わるADVです。うん。たしかに、間違っていません。しかしこの説明では、まったくこの作品の“本質”を伝えられていないといったところ。私が考える本作の凄さは以下の点です。

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◎ 限りなくホンモノに近い心霊エピソード
このブログをご覧の方はすでにご存知かもしれませんが、かくいう私は怖い話蒐集家という一面も持っています。私自身も、これまで変な経験をいくつかしてきています。そんな私をして、ゲーム史上もっとも、「ホンモノっぽい!」、「たしかにこういう話はある!」、「こんな体験はある!」と唸ってしまうエピソード&演出。この追求が素晴らしいところです。

◎ 限りなくホンモノに近い女子高生たちの日常
この作品のセリフパートは長い。そして、読みにくい。なぜか。それは、1990年代前半の女子高生らしさを可能なかぎり表現しているからです。それは、サイドビューにおける探索パートでも同様のことがいえます。2Dのドット絵にもかかわらず、アニメーションパターンを増やし、女子高生らしい所作・動作の表現に力を入れているのです。

◎ 限りなくホンモノに近いSEやBGM
本作では、あまりBGMが流れません。ゲームシーンのほとんどで使用されるのが、日常生活における生活音。それをBGMのように流しているのです。もちろん、SEもすべて生活音のものばかり。ゲームらしいコミカルな効果音は皆無といえます。

なぜ、これほどまでに限りなくホンモノに近いこと執念を燃やすのか?そこに、このゲームの“本質”が隠されている気がします。本作はADVではあるが、「物語を読み解くこと」、「謎を解き明かすこと」が目的ではありません。肝試しの臨場感を体感することが、この作品の“真のプレイスタイル”なのでしょう。

PSで肝試しを100%堪能しましょ♪
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この作品の大きな特長、それは「探索モード」です。「サイドビュー画面で、ドットで描かれた女子高生が、ポリゴン(一部ドット)で描かれたフィールドを移動する」というこのモードは、ほぼ全シナリオで使用されている(一部、出番のないシナリオもある)。

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実は、このモード。シナリオクリアを目指そうとすると相当メンドーくさい。普通のADVなら「→移動」とコマンドを押せば目的地に着くところを、わざわざ歩くのです。そう、システム的に走ることはできない。このゲームに否定的な方はこの点をよく指摘されます。しかし、待ってほしい。このゲームのメインが、この探索モードだとしたら? 3人の女子高生ユカリ・チサト・ミカたちと、その場所を歩くことが目的だとしたら? このゲームの真に楽しむためには相応の準備が必要となります。

以下は、レトロゲームレイダース推奨のプレイスタイルです。

その壱. 真夜中にプレイする。(午前2時以降が最適)

その弐. 部屋の照明は消す。(モニタの光だけでOK)

その参. ヘッドホンでプレイする。(かすかな音も聞き漏らすな)

その死. 自分の真横に鏡を置く。(たまに視線を感じるが気のせいだ)

その後. たまに振り返って「誰だ!?」と聞く。(返事があったらやばい)

このプレイスタイルとこのゲームの組み合わせは、個人的に最恐です。第三の噂「最終電車」と第八の噂「錆びた穽」、第九の噂「オカルトミステリーツアー」が特にいい感じ。ぜひ、性能のいいテレビと性能のいいヘッドホンで楽しんでほしいですね。

怖いだけじゃない!絶妙なストーリーテリング!
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本作は、「三人の女子高生たちが街に潜むさまざまな怪異に足を突っ込んで何かを解き明かす」という物語ではありません。現実に少しずつ不満のある17歳・16歳の女の子たちが、憂さ晴らしにホラースポットに行ってエラい目に遭う…というだけのお話です。

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また、この作品の主人公である2人、長谷川ユカリ岸井ミカになんともいえない感情を抱くでしょう。それは、「イラッ」とか「ムカッ」というシンプルな感情ではなく、“理解できない異質な存在”とでもいうべきでしょうか。感情移入できないのです。私が男だからなのか。90年代の女子高生が異常だったのか。とにかく、本作では彼女たちの日常が一部描かれるのですが、その度になんとも言えないすわり心地の悪さを感じるのです。

ところが、そんな印象は最終章である第十の噂「裏側の街」で一変します。夕焼けの街に迷い込んでしまった三人はそこでさまざまなことを忘れていくことになり、ついに自分の中で本当に大切なものに気がつくというシナリオ。そう、『トワイライトシンドローム』とは、さまざまな体験を経て、少女たちが一歩前進する物語だったのです。

最後になって、ようやく長谷川ユカリと岸井ミカが「理解できる人間」になったような気がして、エンディングは上質なジュブナイルを呼んだかのような清清しさすら感じます。

これが、計算によるものなのか。はたまた偶然の産物なのか。正確なところは分かりません。ある筋から聞いた情報によると、シナリオ面の制作は相当難航していたらしいので、後者っぽいですね。とはいえ、ただのホラーゲームという枠に当てはまらない、妙な器の大きさを感じさせるゲームはそうはありません。

そして、ハッピーエンドの後に待つ、狂気の隠しシナリオ!
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「探索編」と「究明編」の全10のシナリオにおいて大吉エンディング(Good ED)迎えると、隠しシナリオ「Prank」をプレイすることができます。これは、三人の中で後輩にあたる岸井ミカを主人公にした本編の後日談なのですが、本編とはまったく異なる恐ろしさを感じるショートストーリーです。

ある日、登校中に謎の甘い香りを感じたミカ。それに対して、三人のひとりで霊感がある逸島チサトはミカに何かを感じて言う。「ミカちゃん、それ、妖精のイチズラだよ」。しかしその後、なぜか早送りのような奇妙な動作をくり返し、ミカを見捨てて帰るチサト。普段ではあり得ない行動だ。そんなあり得ない“異変”が、ミカの日常のいたるところで起き始める。

不可解、不可思議、理解不能…。すべての常識が崩壊し、ゆがめられたような世界に翻弄されるミカ。なんとか一連の事象から脱出することができたと思いきや、そこで待っていたのは制服を血だらけにしたユカリとチサト。一体、何が起きているのか。どこまでがで、どこまでが現実なのか。

後日談であり、次回作の予告にも取れる「Prank」。実は、事実上の続編『ムーンライトシンドローム』のあるシナリオに同様の展開があるにはあるが、個人的には無理やりはめ込んだ印象があり好きではない。「Prank」は、「Prank」単体として楽しむか、もしかしたら生まれていた本当の続編に思いを馳せて楽しむのがいいかもしれません。

ロムカセットからCD-ROMへの移行、そしてハード性能の飛躍な進化と、そのスペックをいかに使用するかという挑戦と苦悩と野心があった90年代後半。それは、バブル崩壊後の日本と同様に、手探りで進まざるを得ない危うさを感じる時代でもありました。折りしも、同じく手探りで一歩一歩進まなければならない“真夜中の探検”をテーマにしたこのゲーム。

そこには神がかったシンクロがあり、それはそれで不気味ですね。

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