「スピードショック!ビジュアルショック!サウンドショック!」といえばメガドライブだが、それよりも前にファミコン少年・少女たちはそんな衝撃を受けるゲームと出会っていた。1985年に発売された『チャレンジャー』がそれである。ハイスピードで暴走特急と併走する主人公!列車と背景の多重スクロール!国本剛章による軽快なサウンド!それらは、アクションゲームとしてもスーパーマリオとは違う、夢とロマンと“挑戦”にあふれた大冒険を予感させた。
さあ今宵も、時代に埋もれしレトロゲームの歴史を紐解いていこう――。
こんにちわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、ハドソンが1985年に発売したファミリーコンピュータ用アクションゲーム『チャレンジャー』です。「STOP THE EXPRESS!」という文字とともに、暴走する列車の屋根に飛び移るチャレンジャー!目指すは、先頭車両!国家犯罪者ドン・ワルドラドからマリア姫を救出するのだ!
勇ましくカッコよすぎるBGMは、フランツ・シューベルトのピアノ連弾用の名曲「軍隊行進曲」のアレンジ。ファミコンなのにラスタースクロールを多用し、擬似的に多重スクロールを再現するあたりは、さすが技術力に定評のあるハドソン。「すごいことが始まる!」と誰もが瞬時に理解したこのオープニングは、当時のファミコン少年・少女たちのハートをこれ以上ないくらいキャッチしたのでした。
君は知っているか? これが『チャレンジャー』のストーリーだ!
考古学者であり、ナイフ投げの達人でもあるその男の名は「チャレンジャー」。彼は研究のために世界中を飛び回っている冒険家でした。そんな彼のもとに、一人の中国人が訪れました。彼は自らを李成岑(りせいしん)と名乗り、チャレンジャーにある依頼をしてきたのです。
「南海にあるワルドラド島の調査をお願いしたい。」
聞いたこともないその島には、古代の遺跡や秘宝が眠っている神秘の島なのだとか。好奇心を刺激されたチャレンジャーは依頼を受け、ワルドラド島があるというロスマリー王国へと飛んだ。
島に上陸する許可を得ようと王宮に出向いたチャレンジャーは、王国の兵士と謎の一団との戦闘に巻き込まれる。傷ついた兵士の話によると、たった今、王の一人娘マリア王女が犯罪集団ブラッディワッカーにさらわれたという。ブラッディワッカーのアジトは、なんとワルドラド島!一味は島に通じる鉄道「メタモルフォセス号」で逃亡を企てている。
話を聞いたチャレンジャーは走る!やるべきことは決まっている!STOP THE EXPRESS!なんとかして鉄道に乗り込み、悪漢どもの手からプリンセスを救い出すのだ!
上記のように、まさに8bit時代の『アンチャーテッド』よろしく冒険ロマンを繰り広げるのが『チャレンジャー』というゲームです。ステージは4つあり、それぞれいろんなところを探検する独立したシステムになっています。
SCENE 1 STOP THE EXPRESS!
マリア王女を拉致し、乗っ取った特急列車メタモルフォセス号で逃走を図るドン・ワルドラド。その列車に飛び乗って、手下を倒しながら先頭車両を目指せ!
※画像はイメージです。
SCENE 2 SEARCH PRINCESS!
ワルドラド島にやって来たチャレンジャーが、トップビューで4方向にスクロールする広大な島内を捜索。時間と戦いながら、王女の居場所を見つけるヒントを探せ!
※画像はイメージです。
SCENE 3 GET KEYWORD!
水が吹き出す洞窟。チャレンジャーはその噴水を足場代わりに、対岸にあるキーアイテム、カギ・指輪・王冠を取らなければならない!
※画像はイメージです。
SCENE 4 RESCUE PRINCESS!
アジトの最上階で、いよいよドン・ワルドラドとの最終決戦を迎える。
※画像はイメージです。
当時は「1本のカセットに4つのゲームが入った!」と騒がれていましたが、正直それは言い過ぎというやつで、SCENE 3とSCENE 4はオマケゲームレベル。実質、SCENE 1とSCENE 2の2本入りというのが妥当なところでしょう。
SCENE 1の元ネタは、ハドソンがMSXで発売したアクションゲーム『暴走特急SOS』です。
※暴走特急SOS
実は、本作の企画はもともと『暴走特急SOS』のファミコン移植として進められていたものがボリュームアップしたという経緯があります。このゲームを今遊ぶのは難しいのですが、調べてみたら海外のファンの方がリメイクをフリーソフトとして配布しているようなので、興味がある方はぜひ。
▼Devod cooper氏によるリメイク版(フリー)▼
http://www.jdgames.co.uk/projects/express/
SCENE 2は、当時としては広大なマップを縦横無尽に走りまくるトップビューアクションに。スタート地点から「どこに行けばいいか分からない」というノーヒント仕様。さらに、タイム制が導入されており、いきなり生命のタイムリミットがあるため、初めての方はいきなり面食らうでしょう。
でも、大丈夫!冒険家の本能に従って、「洞窟があったら入る」をくりかえして行けば、取っておいたほうがいいアイテムに出会うので集めればいいだけです(ただし、その習性を利用したデストラップもある)。問題のタイムも洞窟に入るたびにリセットされて99に戻ります(ただし、一回だけ)。
このあたりは、実にファミコンゲームらしいですねwww。
SCENE 3は、噴出している水のタイミングに合わせてジャンプをして、洞窟の奥にあるキーワード(3種類)を取ってくるというもの。洞窟を出れば再びSCENE 2のマップ移動となり、新しい洞窟に入ると再びSCENE 3へという流れです。
キーワードは、カギ、指輪、王冠の3つなのですが、「それだったらキーワードじゃなくて、キーアイテムじゃねーの?」とツッコミを入れたくなるのが人の常。しかしここは、レトロゲームレイダースとしての想像力を働かせて、「危険な洞窟を奥まで進み、壁画に描かれている古代文字からキーワードを読み解いている」のを、分かりやすく表現しているのだ。その制作者の意図を読み解くヒントが、この“KEYWORD”なのだ。と、好意的に受け取っておきましょう。
SCENE 4では、いよいよドン・ワルドラドとの決戦です。アジトであるピラミッドの内部を登っていき、最上段に要るワルドラドにナイフを当てていきます。倒すために必要なナイフは4発。
ワルドラドの突進は死亡フラグ立ちまくりの即死攻撃ですので、一旦、前にいた岩場に戻って、ワルドラドが奥に行ったら再び最上段に戻って攻撃、をくり返していけば倒せます。プリンセス前の浮遊床はジャンプで乗ろうとすると転落死してしまうため、ストンと前に降りるだけでOK。最後の最後で冒険者としての勇気が試されるのです。
そんな本作ですが、実はケータイ用のアプリとしてリメイクされています。配信キャリアはi modeとEZ web。画像がスーパーファミコンゲームっぽくなっており、後年のハドソンにありがちな「きちんと作られすぎている優等生みたいなゲーム」です(ほめ言葉)。
▼ハドソンブランドのケータイ/スマートホンページ▼
http://www.hudson.jp/mobile/view.php?id=20101142
世界を股にかけて活躍する考古学者であるチャレンジャー。そのモデルは、スティーブン・スピルバーグ監督、ジョージ・ルーカス総指揮の『インディジョーンズ』シリーズのハリソン・フォード氏ではないかと推測されます。
※ハリソン・フォード氏
本作のパッケージイラストにいるマリア王女の奇抜な髪型は『スターウォーズ』旧三部作に出てくるレイア姫にそっくり。そんなレイア姫と結ばれることになる運び屋のハン・ソロを演じたのもハリソン・フォード氏です。
※レイア姫
さらに言うならば、なぜかまっとうくじらにナイフを当てるとパワーアップする本作ですが、ハリソン・フォード氏が海外では珍しく、クジラ料理屋の常連であることをみなさんご存知でしたか?
※くじら丼
結局、『チャレンジャー』というゲームはファミコンユーザーに多くのインパクトを与えたものの、その後、続編が作られることはありませんでした。ちなみに、勁文社のゲームブックとして本作の後日談が発表されています。その内容は、ドン・ワルドラドを倒し、マリア姫を救出したチャレンジャーは姫から衝撃の事実を知る。王国から盗まれた秘宝がまだワルドラド島にあること。その秘宝を奪還するために、チャレンジャーの新たな冒険が始まるというものでした。
さて、そんな本作の最大の遺産は、「1つのゲームの中に複数のゲームを盛り込む」という幕の内弁当商法の確立ではないでしょうか。この路線を継承したのが、『ハドソン版 ドラえもん』であり、この路線に終止符を打ったのが『Bugってハニー』だと私は考えております。
それにしても、1本のゲームの中に複数のゲームを入れ込むという発想。これって、純粋に開発コストが増えることを意味するんですけどね。そういう意味で、一番のチャレンジャーはハドソンだったような気もします。
=注意=
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