【名作発掘】 『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』─―父の背を追い、父を超えて、少年は勇者になる。

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タイトル3

勇者の瞳が見つめる先にあるものとは…!?

「RPGにおける冒険とは、ただ先に進むことではない。いろんな出来事を仲間たちと分かち合うことだ」。そんなことをドラゴンクエストIIIは教えてくれた気がする。パーティ編成は自由。仲間にする職種、そのパラメータによって、冒険の難易度は変わってくる。どの組み合わせが正解なのか。否、どの組み合わせも正解なのだ。だから、本作においてストーリーはそこまで重要ではない。でも、何度でもプレイしたくなる魅力が、日本全土を待ちこんだハルマゲドン(CMキャッチコピー)の正体なのかもしれない。

今夜も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力に迫ってみよう。

ジョーンズ
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。

今回発掘した作品は、エニックス(現スクウェアエニックス)から1988年に発売されたファミコン用ソフト『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』です。

キャッチコピーは「日本全国ハルマゲドン」。今ではまったく意味が分からないと思いますが、当時の状況を知る人たちは「たしかにハルマゲドンだった!」と妙にうなづけてしまうほど、この世に生まれたこと自体が大事件だったファミコンソフトです。それこそ、大人も、子供も、おねーさんも、上へ下への大騒ぎ!その有様は、まさにハルマゲドン!古きよき一つのゲーム史が終わり、新しい時代を開闢させたといっても過言ではないほど、歴史に多大な影響を残した怪物だったのです。その年、本当に日本が震えました

それだけ、偉大なる傑作RPGなわけですから、ネット上にも多くの感想や考察が載っています。いまさら手垢のついた考察を語っても意味がないので、今回はちょっと見方を変えた話で本作を再評価してみましょう。

まずは、こちら(↓)をお聞きください。

いわずと知れた本作のラスボス「ゾーマ」の戦闘BGMです。この曲名は「勇者の挑戦」といいます。実はこの「勇者の挑戦」だけシリーズの中で異質なのをご存知でしょうか。

ドラゴンクエスト1 「竜王」
ドラゴンクエスト2 「死を賭して」
ドラゴンクエスト3 「勇者の挑戦」
ドラゴンクエスト4 「悪の化身」
ドラゴンクエスト5 「大魔王」
ドラゴンクエスト6 「魔王との対決」
ドラゴンクエスト7 「オルゴ・デミーラ」
ドラゴンクエスト8 「おおぞらに戦う」

シリーズにおいてラスボスの曲は、ラスボス自身の強さ・巨大さをアピールしたものばかり。そこにおいて本作だけは、闘いの激しさを演出しています。もっと言ってしまえば、主人公である“勇者”にスポットが当てられている曲なのです。

なぜか?

それは、ゾーマと対峙する前に主人公たちが“ある人物”と遭遇するところにヒントがあると、私は考えています。その人物とは、主人公の父・オルテガです。

オルテガ←海外版のオルテガ

オルテガは、たった一人でゾーマの居城と化したアレフガルド大神殿の最深部まで到達し、幹部大悪魔の一角・キングヒドラと激戦をくり広げているのでした。

slime 『ドラゴンクエストIII』の冒険とは何だったのか?
redline

 「世界の支配をもくろむ魔王バラモスの討伐」という目的があったため気がつかれにくいのですが、勇者の冒険とは、「主人公が偉大なる父の足跡を追う旅」でした。

ドラゴンウォーリアⅢ_3
国内版では容量の都合でカットになったといわれている
父オルテガとバラモスの手下との火口での戦い。
このシーンは、スーファミ版で収録されることになった。

父が果たせなかった悲願のために、若き勇者は旅立ちを決意します。その旅の先々でも、主人公は先行していた父の存在を何度も感じることになるのです。

01 04
16歳の誕生日。少年は父の悲願「魔王バラモス討伐」の旅に出る。

09 17
「勇者オルテガの息子」ということで、故郷アリアハンでは主人公への期待が高い。

23 29
海を渡った先のロマリアでは、盗賊カンダタから国宝「金の冠」の奪取することを依頼される。

25 36
夜の墓場に行くと死者が語りだしたり。森の中でエルフの隠れ里を見つけたり。

40 46
呪いのため村人が10数年眠っていたノアニールには、オルテガの足跡が…!

52 55
世界にはいろいろな人たちがいる。正しいことだけでは乗り切れない。

51 59
そして、ロマンス…。

60 61
バラモスが世界に放った呪いによって会えなくなった恋人たち。

62 66
東方の国を見聞する旅の途中で、コショウ商人の娘が悪党にさらわれてしまったという。

72 75
人さらいたちのアジトで待ち受けていたのは、カンダタ!またお前かっ!

78 81
世界のどこかにあるという転職のダーマ神殿。そして滅ぼされたはずの村テドン。

83 86
日出づる国ジパングで待ち構えていたのは、強敵やまたのおろち!

93 94
最北の村で村人から慕われているポカパマズとは、父オルテガのことだった!

90 91
世界各地を植民地にしていたという帝国エジンベア。その地下には西方の秘宝が眠るという。

17 01
東海岸に新しい街を創りたいという老人が一人。仲間の商人がチカラを課すことに。

04 53
「ギアガの大穴」とは一体…!? どうやらバラモスはそこから来たらしいが。

07 10
滅ぼされていることに気がつかない村人たち。勇者は一人、「地球のヘソ」と呼ばれるダンジョンへ。

26 27
かつての仲間が作った街はどんどんと発展していくのだが、そこでは“歪み”もまた…。

13 15
世界から忘れられた島「ルザミ」。海賊たちのアジトでは毎夜宴が催されていた。

20 24
鎖国政策を行なっていた強国サマンオサ。国家崩壊を導いていたボストロールと対決!!

38 36
航海する船を迷わす魔境オリビア岬。その恋人エリックの魂が乗るという幽霊船。

41 37
オルテガと合流を果たせなかった勇者サイモン。オルテガの従者と名乗るホビットとの出会い。

29 30
そして、ついに崩壊するサッカーバーグ。

43 44
ついに、難攻不落の天然要塞と化していたネクロゴンドに進入!ここからの激戦は必至だ!

50 52
甦る不死鳥ラーミア! その雄々しき姿は後の世において勇者の紋章として描かれる。

55
今こそ、決戦のとき! バラモス覚悟せよ!

59 60
だが、バラモスを倒しても平和は訪れなかった! 一向は災いの元凶ギアガの大穴へ!

61
世界の下にはもう一つの世界が存在した!?その名は「アレフガルド」!!

62
光を奪われたこの世界は、大魔王の完全な支配化にあった!

77 84
魔の領域であるアレフガルドでは、出現するモンスターの強さも地上の比ではない!!

69 75
なんと、父オルテガは生きて、このアレフガルドにたどり着いていた!

82 88

72 89

94 99

103
父さん! 待っててくれ! ボクも、もうすぐそこに行く!

106 107
な、なんだってー!?

109 110

111 112

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115

オルテガは、常に主人公より先に進み、息子に進むべき道筋を示してきました。

冒険の中で成長し、本当の勇者へと近づいていく主人公は、ついに、最終決戦の地で父に追いつくのです。しかし、残念なことに、オルテガは敗れ、胸に抱かれている青年が自分の息子だと言うことに気がつかないまま、息を引き取ってしまいます。彼の最後の言葉はこうでした。

 わたしは もうだめだ……。
 そこのたびのひとよ。
 どうか つたえてほしい。
 
 わたしは アリアハンのオルテガ。

 もしも そなたがアリアハンに
 いくことが あったなら……。

 そのくににすむ わたしのむすこをたずね
 オルテガが こういっていたと
 つたえてくれ。

 へいわな せかいに できなかった
 このちちを ゆるしてくれ…とな。

この言葉から伝わってくるもの、それは一つしかありません。オルテガは勇者ではなく、「父親」だったということです。自分の子供が平和に過ごせる世界にするため、彼はどこまでも傷つき、世界の果てを彷徨いながらも、「勇者」であり続けようとしていたのです。

そして同時に、このようなこともうかがい知ることができます。オルテガは自分の息子には平和の中で生きていて欲しかった。それは、常に危険と隣り合わせである冒険に身を投じて欲しくなかったのでは、と。だからこそ、目的を果たすまで家に帰ることなく、最後の最後まで平和のために身をすり減らしたのではないか、と。

そんな一人の父親の願いは叶いませんでした。
しかし、彼自身が意識していなかったとしても、彼の足跡は、彼の背中を見て育った新しい世代たちの道標となり、その歩みはついに彼自身のすぐ背後にまで追いついていたのです。

父の死の悲しみとその亡骸を越えて、少年は先へ進みます。

122

オルテガが死んだ通路。そこから先は、オルテガが進めなかった道。そう、最終決戦の目前において、子はついに、偉大なる父を超えるのです。

父の歩んだ先の道を進み、父が叶えられなかった悲願を成就する。ゾーマとの決戦には、そんな勇者としての成長物語が隠されていたのです。そう考えると、曲名が「勇者の挑戦」というのも納得できると思いませんか。

124

父と子の物語

そして、父を超えて少年が勇者へと成長するRPG

そんな風に考えてプレイしてみると、また違った景色が見えてくると思います。

好きなパーティを組めばいい。
好きな進路を取ればいい。

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、今でももっと楽しめるRPG。
だからこそ、名作といわれるのだと、私は思うのです。

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