二千年の歴史を刻み、受け継がれてきた恐るべき暗殺拳があった。その名を─―「北斗神拳」!天空に連なる七つの星のもと、一子相伝の北斗神拳のゲーム化をめぐって、悲劇はまたくり返されるのか?
さあ今宵も、歴史に埋もれしレトロゲームの魅力を紐解いてみよう――。
ヒャッハーッ、汚物は消毒だ!
こんにちわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、199X年にプレイステーションから発売された狂気と自由と暴力の世紀末アクションゲーム『北斗の拳 世紀末救世主伝説』。北斗の拳のゲームというのは、どうにもビミョウな印象をお持ちの方も多いでしょう。
ファミコン版にいたっては、キャラクターゲームにも関わらず、ファンに対して「引かぬ、媚びぬ、顧みぬ」というサウザー様並の鉄の姿勢でしたし、セガマークIII版は不朽の名作でしたが、セガマークIIIというハード自体が「修羅の国」以上に未知の領域だったので、一般の人々に伝わることはありませんでした。
しかし、本作は違います。非常にファンのツボ(経絡秘孔)をついた作りとなっており、小さなお子様から大きなお子様まで北斗に殉ずる愛を持つ方々なら必ず楽しめます。パッケージをよーく見てください。ねっ、死兆星も見えないでしょう?これだけ推すわけですから、私も相応の態度を取らねばなりません。北斗の文句は俺に言え!
▼北斗の拳 ゲーム版OP▼
まさに、YouはShock!である。まさに、オレの胸に落ちてくる!である。見事なまでにアニメ版のオープニングを再現したこのムービーを見て、たぎらないわけがない。この胸に灯ってしまった業火のようなアツい心は、もはやクサリで繋いでも今はムダ。かーちゃんが「ご飯だよー」と部屋にやってきてゲームを止めようものなら、邪魔する奴は指先ひとつでダウンさせる勢いです。まさに、北斗あるところに乱あり!これほどまでに、武論尊を身近に感じるゲームがあったでしょうか。いや、ありません。
YouはShock! アニメ版とほぼ同じ声優で進むストーリー!
本作にはさまざまなゲーム流派(モード)が用意されています。原作のストーリーを追っていく【救世主伝説】、作中のムービーを観賞できる&自在にセリフを変えて遊べる【世紀末シアター】、作品に出てくるキャラ同士で戦える【覇者決定戦】、無尽にわきでてくるザコ敵に無双のように蹴散らしていく【ザ・あべし】。
ファンの経絡秘孔を知り尽くした制作者の愛で、鼓動が早くなるのを止められません。もちろん、本作のキャラクターを演じる声優さんはアニメ版に準じているという徹底ぶりです。そして次の事実に、YouはShockを受けるでしょう。本作が発売した2000年は、南斗水鳥拳のレイを演じた塩沢兼人さんがなくなった年でもあり、実は本作の収録が遺作であるということ!私もこの事実を知ったとき、俺の鼓動、早くなる!と男泣きしたものです。
昔、クリスタルキングは言いました。お前求め、さまよう心、今、熱く燃えている、すべて溶かし、無残に飛び散るはずさと。オレと言う男はこの歌詞を聞くたびにレイを思い出さずにはいられないのです。悪に染まりかけたレイの心を救ったマミヤ。そんなマミヤへの愛を守るために死んでいったレイ。お前は本当に幸せだったのだろうか。その死地への旅立ちにどんな意味があったのか。明日も問いをかけずにはいられません。おっと、若干話の道筋を見失ったようです。
あのドラマがきちんと再現されている北斗の拳のゲームは、本作をおいて他にないでしょう。このように、本作では北斗の拳を構成する数々のドラマが再現されます。思わずニヤリと微笑みしちゃうシーン、忘れたシーン、顔などがボーンとするシーン、沖縄県民が見たくはないさーと言いそうなシーンなど。物語はラオウとの決着まで第八章で構成されています。
力の入った作りこみに制作者からのメッセージを感じずにはいられません。北斗の拳への愛をとりもどせ!と。
オレ(制作会社)の名前を言ってみろ! 「ナツメです!」
本作は、ドラマパートの間に一対多数のアクションパートがあります。ゲーム自体はそのくり返しになるので、心のない人は「単調なくり返しで、メーカーは手抜きをしている。ぶひひ…」などと言うでしょう。しかし、それは誤りです。そしてこう言ってやりたい。貴様など北斗神拳の前では脂肪のカタマリにすぎない、と。
本作のアクションは、実にシンプルです。
序盤のステージまでは「パンチ連打」だけでもクリアはできます。まあ、原作もそんな感じでした。しかし、ノーダメージや効率的な撃破を考えると、そのほかの技を駆使するべき。このような初心者へカサンドラの門を開きつつ、ベテランへのやり込みという名の聖帝十字陵をも実現する。そんなレベルの高いアクションゲームを作るのはどこのどんな奴だと思って調べてみたら、制作は種モミ…いや、ナツメでした。さすが、いい仕事をします。
さて、本作を語る上で欠かせないのが、【リアルタイム・あべし・システム】!
原作を知っている方なら、名前を聞いただけで胸がときめき、「Hey!Hey!Hey!どういうことだい?」と問いただしたくなることでしょう。それについては私としても、「Hey!Hey!Hey!落ち着きなよ。」と言うほかありません。【リアルタイム・あべし・システム】とは、アクション中に敵が光った瞬間に攻撃を当てることで発動!まさにWelcome to this crazy time!このイカれた時代へようこそ!の世界。敵がセリフをしゃべる前に、画面に表示されたコマンドを入力することで、原作やアニメの肝だった残虐シーンを再現するQTEです。
この記事を読んでいる君はTOUGH BOYですか?Are you TOUGH BOY?TOUGH BOYなら下記の動画を見てください。そこでTOUGH BOYはリアルタイム・あべし・システムの神髄を見るでしょう。
さて、動画を見ていただければ分かるとおり、ナツメのリアルタイム・あべし・システムにかける執念がハンパではありません。まともな奴ほどfeel so bad!です。敵がしゃべるセリフのどのタイミングで秘孔を突いたかで死亡時の絶叫が変わるのです。まさに、原作の通り!そのパターンの無限さはこの動画の再生時間を見ていただければいかに膨大かお分かりいただけるはず。これを見てもなお、正気でいられるなんて運がいいぜ、YOU!というやつです。
あなたがTOUGH BOYだと自覚があるならすべて試してみてください。もちろん、私はTOUGH BOYじゃないという方にもメリットはあります。このシステムを発動・成功させることで、攻撃した敵の撃破はもちろん、周囲の敵にもダメージを与え、なんと自分の体力も回復。たちまちTOUGH BOYになれます。もちろん、通常攻撃だけでもクリアはできますが、そんなたっぽいことをやっていたらこの世界では生き残れません。
愛ゆえに、一度はプレイしなければならぬ!
西暦2000年、時はまさに世紀末という絶好のタイミングで発売された本作。秋葉原という澱んだ街角で、僕らは出会った、この奇跡のようなゲームソフトと。『北斗の拳』のゲームは数多く発売されており、クソゲーだけでなく、良ゲーも多いのですが、Keep in burning、原作の雰囲気を忠実に表しているという点でライバルの中を駆け抜けて本作は間違いなくトップクラスの名作です。
西暦2012年、現代は私たちが子供の頃に夢見た未来世界ではなく、また核戦争による荒廃した世界でもありません。しかし、この腐敗と自由と暴力のまっただ中であることは変わりないのではないでしょうか。『北斗の拳』という作品は、ケンシロウたち大人たちの生き様を見て、「生きる」ということはどういうことなのか?をバットやリンといった次世代の希望たちが感じていく物語だと私は解釈しています。No boy No cry。かつて少年だった私たちは、今や第二部のバットやリンのように涙を棄てて立ち向かわなければならない大人です。
生きやすい世の中とは言えないでしょう。それでも、私たちは生きていかなければならない。悲しみは、絶望じゃなくて明日のマニフェスト。『北斗の拳』はそんな私たちが疲れたときに、もう一度立ち上がる80年代にバイブルのような気がします。
We are living, living in the eighties!
We still fight, fighting in the eighties!
失ってしまったアツい何かを思い出したいとき、原作を読む返すのと一緒に、本作をプレイしてみてはいかがでしょうか。