戦闘機なのに手が生えている。攻撃を喰らうと救急車がやってくる。雲からベルが飛び出してくる。メルヘンであり、コミカルでもある世界観のシューティングゲーム『ツインビー』!2人同時プレイによって生じるランダムな状況変化は、プレーヤーに「協力」か「対決」かの選択を迫る。そんな魅力をもった本作が今回のテーマです。
さあ今宵も、時代に埋もれしレトロゲームの歴史を紐解いていこう――。
レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、コナミが1986年1月にファミコン用ソフトとして発売された『ツインビー』。当時、ファミコン初といえる2人同時プレイが可能なシューティングゲームとして、脚光を浴びました。「イチゴだ、カニだ、ピーマンだ、負けるなツインビー!どんぶり島を救いだぜ!」というTVCMも流れていましたね。
宇宙歴2801年――。
平和な南の島どんぶり島は、突如、空からあらわれた侵略者の魔の手に落ちることとなった。侵略者の名は、スパイス大王!彼は島を支配下に置くと、どんぶり島に伝わる4つの宝玉を4人の部下たち、オニオンヘッド将軍、パラレルディッシュ将軍、タイガーシャーク将軍、クローデバイス将軍たちに分け与えると、島は分割統治されることとなった。
しかし、この事態を良しとしない者たちもいた。島に住む風変わりな科学者シナモン博士とその弟子たち。数ヵ月前、博士は別宇宙から飛来したフシギな戦闘機とパイロットを救出する。戦闘機の名はツインビー。パイロットの名はアンナモン。機械と人間が自由に意思を疎通できるという国からやってきた彼らの協力により、博士はツインビーの対となる機体ウインビーの製作に成功。博士の息子であるドンナモンがウインビーパイロットとして練度をあげていた。
どんぶり島のかつてない危機を前に、2機と2人は立ち上がる。「2人とも気をつけるんじゃぞ!ワシも救急ユニットなどでサポートするからな!」。2人は大きく頷き合う。「行こう、ドンナモン!敵はもうすぐそこまで来ている!」、「お前こそ、ドジ踏むんじゃねえぞ、アンナモン!」。かくして、研究所から飛び立った2機はスパイス大王の軍隊に対し、果敢に戦うこととなった――!
※SCCアレンジ版は原曲にはないリズムがあるところが魅力!
本作は、空中と地上攻撃ができる、「ゼビウスタイプの縦スクロールシューティング」です。しかし、飛来してくる敵が、くだもの、やさい、海産物、動物、日常雑貨品に似た戦闘機であること、地上物を破壊して手に入るボーナスアイテムが、くだもの、キャンディなどであること、軽快なコナミミュージックによって、ポップな世界観を作り出しています。
上記ストーリーを読むと、「設定」は意外と殺伐としているんですけどね(笑)。
本作の原点といえるアーケード版、本作の移植作であるMSX版に比べて、ファミコン版は難易度が抑え目になっています。後半になると、倒さないといやらしい動きをしてくる敵が増えてきますが、2人いれば充分に対処できるため、クリアがムズカシイというゲームではありません。
そんな本作には、何度もプレイせずにはいられない魔性のシステムが存在します。それが、本作の最大の特徴ともいえる「ベルパワーアップ」です。
ゲーム中に出てくる雲に弾を撃ち込むと出てくるベルは、弾を当てていくと色が変わり、それを取るとツインビーがパワーアップするという仕様になっています。
スピードアップ
ツイン砲
分身
バリア
ベルは弾を当てるごとに放物線を描いて飛んでいくため、敵の編隊と重なることも少なくありません。「敵を倒すための弾のせいで、分身がとれなくなっちまった!」なんてことは日常茶飯事!それが2人プレイとなると、相手の弾がこちらの育てていたベルに当たり…ということも。さらにさらに、この独特のパワーアップ方式のため、一度ミスをすると立ち直りがとても困難。後半になると敵の攻撃もそれなりに激しくなってくるため、ベル育てが難しくなります。
苛立ちから、「テメー、ジャマすんなよ!殺すぞ!」、「なんだと、もういっぺん言ってみろ!」と、モニタのこちら側も殺伐としたリアルバウトになりかねない、そんな『マリオブラザーズ』のような一面も持っているのです。同時に、友情が試されるゲームでもあります。
筆者の話になりますが、2面のパラレルディッシュ将
軍にやられたため、3面をノーマル装備で挑まなくなったときのこと。パワーアップかましている相棒の様子に、「ちくしょう、コイツ、パラレルディッシュのときに後方でチマチマした戦いしてロクな援護しやがらねえからオレがやられたんだ。コノ恨ミ、ハラサデオクベキカ!」と恨みを積もらせていたところ。
「ホイ、青行ったぞ!」、「次、白行ったからな!」と、相棒がベルを育て贈ってくれたのです。「お、おう!ありがとな!」と照れ隠しで無愛想になってしまいましたが、今なら言えます。あの時オレ、ちょっとキュンとしちゃったぜ…と(照)。
まさに、2人プレイの醍醐味を味わえるシューティングゲームといえるでしょう。
後につづくツインビーシリーズの“はじまりの物語”である本作。本作『ツインビー』、100年後の子孫たちがスパイス大王の孫と戦う『もえろ!ツインビー』、最大の敵ポコポコ大魔王を相手とする『ツインビー3』、そして第一期シリーズの実は完結編であるGB版『ツインビーだ!』と物語は続いていきます。
さらに、シリーズの世界観の再構成&再スタートとなる第二期シリーズ、アンナモンとドンナモンの子供たちライト、パステル、ミントたちが主人公の『出たな!ツインビー』、『POP’Nツインビー』、『レインボーベルアドベンチャー』、『ツインビーヤッホー!』、そして『ツインビーRPG』へ。ツインビーワールドは広がっていくのです。
その行く末が良かったのか悪かったのかはここでは問いません。そしてかつて私が、あるラジオを一生懸命聞いていたり、イベントが中止になって憤慨していたり、パーソナリティーのお姉さん家の近所に住んでいたりしたことも、どうでもいいことなのです(笑)。
本作の時点で、スパイス大王率いる軍団の襲撃は、明らかに「オーバーテクノロジーを持つ異星人襲来」です。地球側に対抗する戦力はまったくないという状況。異なる宇宙からやってきたアンナモンとツインビーは、スパイス大王、そしてその背後にいる者にとっても想定外だったわけです。
後に、シナモン博士はコールドスリープをくり返し、三代目ツインビーチームまでサポートを行なっていきます。そこには、スパイス大王の後に来る“新たな敵”を予見していたのかもしれません。または、親友でもあったアンナモンの故郷へ愛機ツインビーを還してあげるためだったのかも。それは分かりません。
本作は、現在ではWiiのバーチャルコンソール、3DSでは3Dクラシックスシリーズとして立体バージョンで遊ぶことができます。接待ゲームとして、今でも重宝する一品です。
3Dクラシックス ツインビーのホームページ
バーチャルコンソール ツインビーのページ
=注意=
この記事に使われているゲーム画面やゲーム音楽の著作権はすべて権利者にあります。当ブログは権利者の温情によって使わせていただいている立場ですので、権利者から削除要請があった際には迅速に対応いたします。