富、名声、力…。この世のすべてを手に入れた男、海賊王キャプテン・ビアド。彼が死に際に放ったひと言は人々を海へと駆り立てた。「オレの財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の果てにすべてを置いてきた」。男たちはロマンを追い求める。今こそ、カセットの中で進路を取れ。魔界島の冒険が君を待っている。
こんにちわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回、発掘した作品はカプコンが1987年4月14日に発売したファミコンソフト『 魔界島 七つ島の大冒険 』です。制作は「の~みそこねこね」のキャッチコピーでお馴染みのコンパイル。同社は後にリリースされたMSX版の移植にも関わっています。
なぜ、魔界島なのか?
この作品は、もともとはカプコンがアーケードゲームとしてリリースした『ひげ丸』の移植作品でした。『ひげ丸』というゲームは、一画面固定のアクションゲームで、主人公のモモタルーが画面上においてある樽を持ち上げ、敵の海賊たちに投げつけて倒すというセガの『ペンゴ』によく似た作品。そのままでも充分面白いのですが、時代がベタ移植を許しませんでした。
なにせ、もともとは1984年の作品。当時ファミコンでは、画面はスクロールする、多彩なステージが待ち受ける、デカいボスキャラがあらわれる、といったゲームが増えていた中で、そのままの移植ではファミコン少年少女たちを魅了できるはずがありません。
しかし、ファミコンバブルというある種異常な熱気の中、新しいゲームは常に求められている時代。そこで、『ひげ丸』のコンセプトをもとに、まったく新しい海洋大冒険ロマンを仕立てようと作られたのが、この『 魔界島 七つ島の大冒険 』だったのです。
世はまさに、大海賊時代!
海洋冒険モノに必要なものは何か? それは「財宝」と「想像を絶する未開の世界」、そして「知恵と勇気で難局を突破する物語」である。大昔より少年少女たちの心を掴んで離さないおとぎ話にはこの要素が欠かせない。当然、『 魔界島 』にも受け継がれることとなります。
その象徴がサブタイトルについている7つの島々。まさに前人未到のアドベンチャーワールドが『魔界島』という作品の核であることは言うまでもありません。
≪ひげ丸海賊船≫
ゲームの舞台となる海域のすべての島には巨大な門が設けられており、カギを手に入れなければ上陸することが出来ない。そのカギを持っているのがひげ丸海賊団だ。モモタルーは7回、ひげ丸海賊団と戦わなければならない。
≪クック島≫
通称・はじまりの島。島には好戦的な原住民が住んでいるが、武器になる岩も数多く存在しており、スペースの広いエリアも多いため戦いやすい。まさに、ビアドの財宝にいたる“入門編”にふさわしい。画面にいる全裸の茶色の敵の名前は「ブッシュ」。アメリカ大統領からつけられた名前だと思いたい。
≪カース島≫
悪魔を崇拝する謎の教団が支配する呪いの島。島内にいる使徒たちはナイフを投げてくる。また、弾を飛ばしてくる炎など、不気味な敵も多い。重大なヒントを記しているモノリスも登場。この謎を解くには解読書が必要になる。ボスの大司教は狙いを外すと岩がなくなり、攻撃手段を失いかねないので注意。
≪マーメイド島≫
人魚の伝説が残る島。島内には水辺が多く、ジャンプアクションが重要となる。落ちるとダメージを3000ポイント受け、その分をカバーするのは大変なのでノーミスで臨みたい。また、クラーケンの触手がいたるところに出現。モモタルーの行く手を阻む。あるところには、伝説の人魚がまだ存在するという噂もあるがはたして…?
≪ヘビ島≫
まさかの人物が登場。『魔界村』の主人公・アーサーが入り口に立ってモモタルーに警告する。「この島は、魔界村の戦いで逃げた魔物たちを閉じ込めてある」。島内は巨大な塔となっており、中には魔界村の敵たちがわんさかわんさか。ボスは懐かしの一角獣!彼が死に際に言った「我々のボスがお前に真の恐怖を与える」…とは?
≪ドクロ島≫
ゲーム中もっとも不気味な雰囲気を漂わせている島。岩の影には筋肉質な血管という有機的なものが見え隠れし、島の中央部には巨大な心臓が脈打ち、島中の血の池に新鮮な血液を運んでいる。ここは本当に島なのか?何か巨大な生き物の上なのではないのか?この海域が悪魔の海と呼ばれて
いるその片鱗を感じさせる。
≪オオカミ島≫
ついに、ひげ丸海賊団の本拠地へ殴り込み!ひげ丸海賊団も総力をあげてモモタルーに攻撃のキバを剥いてくる!地形トラップはほとんどないものの、狭いエリアで多くの敵と戦わなければならない局面が多い。スピードと的確な操作が欠かせない。そして、この島でモモタルーはあるモノと出会うことになる。
≪ジャックナイフ島≫
刃渡りのような氷の島…なのだが、この島には重大なヒミツが隠されている。すべてのアイテムを集め、キャプテン・ビアドの謎を解き明かしたとき、この島は名前の通り、「ジャックナイフ」であることを我々の名前に示す。
≪???≫
意外な展開のストーリーと、ひと筋縄にはいかないゲーム攻略
さて、このゲーム、「七つの島はただクリアすれば先に進める」という単調な展開ではありません。カギを手に入れても呪いのせいで入れない島の呪いを解きに行ったり、本当の島のボスを倒すためにもう一度戻る…など、ゲーム展開には数々の工夫がなされています。
BGMについても言及しないわけには参りません。個人的にFC屈指の名曲と思っている「ひげ丸海賊団のテーマ」をはじめ、「マーメイド島」「オオカミ島」など名曲も多いです。
ゲームの難易度もカプコンにしては抑え目で、ライフゲージのシステムにより、時間をかければ誰でもライフゲージを満タンにできるため、余裕をもってプレイすることができます。慣れればショートカットできるので30分ほどでクリアすることも可能です。
さて、ここからはトリビア。もともと『魔界島』とはファミコン版『魔界村』の続編として作られていたオリジナル作品のコードネームでした。このプロジェクトは結局ボツになってしまうのですが、その名残が魔界村キャラクターたちが出てくるオオカミ島。タイトルの込められた開発者たちの想いは、ゲームをクリアしてみればきっと分かるはずです。
「ただマップが広いだけが海洋冒険の表現方法ではない」、「8bitでもユーザーを楽しませる方法はいくらでもある」と、カプコンの職人魂を感じさせてくれるこの作品。今ならバーチャルコンソールでも遊べます。