傷ついた体にムチ打って。
シモン・ベルモンドとドラキュラ伯爵の戦いは決着がついたかのように思われた。しかし、我々は驚愕の事実を知る。戦いに勝ったシモンだったが、その戦いの中で付けられた傷が原因でもはや余命あとわずかだという。この世に正義はないのか?ハッピーエンドでは終わらせない。そんなファミコンディスクシステムで静かに始まったダークファンタジー『悪魔城ドラキュラ』。その続編がいよいよ幕を開ける。あれから7年。血のざわめきはまだ終わらない――。
今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を紐解いてみよう――。
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、コナミが1987年8月にリリースした『悪魔城ドラキュラ』の続編、『ドラキュラII 呪いの封印』です。
前作のモンスター系ホラー映画風味の世界観はそのままに、ゲームジャンルはステージ制アクションからアクションRPGに変更。そのあまりの変わりように、一般的に評価が高いとはいえない作品です。しかし、本当にそうなのでしょうか? 今回はそのあたりに切り込んでみたいと思います。
あの悪魔城の戦いで、見事ドラキュラ伯爵を滅ぼしたシモン・ベルモンド。しかし、その戦いの中で受けたキズはシモンの肉体を蝕んでいった。7年の月日が流れ、近い未来の自らの死を悟ったシモンは、ベルモンド一族が眠る天使の丘の墓へと足を向けていた。そこに謎の女性が現れる。
「あなたの肉体は、ドラキュラから受けたキズによって呪いをかけられています。このままではあなたは死に、力を取り戻したドラキュラ伯爵はふたたび甦るでしょう。それを阻止する方法はひとつ。このトランシルバニアの地には、ドラキュラ伯爵が死んだ際に散らばった、6つの体の一部を奉じる館があります。ドラキュラ伯爵はそこで100年間の眠りの中で力をつけていくのです。あなたは、その6つの体を集め、それを滅ぼさなければなりません。そうすれば、体にかけられた呪いは解けるでしょう」
女性は、現れた時と同じく、そのまま闇の中に消えた。
シモンは自宅に戻り、二度と使うことはないと思っていた先祖代々のムチを取る。ムチはシモンが握り締めると、呼応するかのように光を放った。1698年、シモン・ベルモンドは再び魔を絶つ戦いへと身を投じることとなった。ドラキュラの呪いを封印するために。

普通に考えれば、大ヒットした悪魔城ドラキュラの続編ならば、前作のシステムを踏襲し、よりパワーアップさせるというゲームデザインになります。
しかし、本作はその手段は取りませんでした。上層部より「当時流行のRPGの要素を入れろ」というお達しこそあったかもしれませんが、この続編を≪モンスター系ホラー映画の世界観における乾坤の血族シモン・ベルモンドの物語≫であることを貫いたといえます。
本作は、≪シモン・ベルモンドが自分が生き残る術を見つけるために、トランシルバニア全域を放浪する物語≫です。7年間、戦いから遠ざかっていた彼が、魔物たちとの戦いを経て少しずつ勘を取り戻していく。傷ついた身体にムチを打って自分の運命に立ち向かっていく。そんな物語です。
前作のように、悪魔城に殴りこみに行く物語とは異なります。だからこそ、ゲームジャンルが変わるのは当然のこと。むしろ、今回のシモンの物語を伝えるには、アクションRPGのほうがふさわしいとさえ、私は思うのです。
しかしかそれは、このゲームが面白いかどうかとは別の問題です。

本作は、前作同様のサイドビューアクションとして、トランシルバニアの各地域を旅していくことになります。
森林、湖、洞窟、沼など、今回の舞台は自然の豊かなトランシルバニア全域。夜の悪魔城城内しかなかった前作と違い、今回は太陽がのぞむ白昼のもと、その美麗なグラフィックでドラキュラの新たな世界を楽しませてくれるます。
ステージを越えると街があり、そこでは敵を倒すことで得られるハートでアイテムや武器を購入することが可能。また、教会では傷ついたHPを回復させることも。
硬派なアクションだった前作に比べて、「カンタンになった」という感想を抱く方もいらっしゃるかもしれません。私もそうでした。
そう、夜がくるまでは…。
『ドラキュラII』には内臓タイマーがプログラムされており、一定時間が経過すると突然、次の文字が画面に表示されます。
ソ シ テ、戦 慄 ノ 夜 ガ オ ト ズ レ タ !

いきなり暗くなる画面!美しかった背景はおどろおどろしい色合いに変わり、BGMはアップテンポなものに!
そう、ここからがドラキュラIIの真骨頂。闇夜に包まれたトランシルバニアこそ、このゲームの真の姿なのです。夜は闇の眷属たちの時間!本当の戦いはこれからだ!

夜になると、すべてのモンスターたちは攻撃力が2倍、耐久性も2倍、出現回数も増加する!逃げる場所なんて存在しない!
昼間は人々の憩いの場であった街も、夜は戦場の一つでしかありません。ゾンビが徘徊し、シモンに息を付かせる間も与えないのだ。しかしも、すべての施設は朝になるまで使用不可! 当然、HPを回復する手段は一切ありません!
まさに極限のサバイバル! 昼間のレベル上げは、夜を戦い抜くための前哨戦だったとでもいうのでしょうか?
後年、『サイレントヒル』で採用される死と絶望に彩られた裏の世界。実は、コナミは同様のコンセプトを1987年の段階でゲームに取り入れていたのです。
先に私は、『ドラキュラII』を前作とまったく異なるゲームデザインという言い方をした。その通り! アクションパートの難易度・緊張感は前作をはるかに凌ぎます。とにかく、敵を倒し、倒し、倒し、朝が来るのをひたすら待つしかない。やがて訪れる朝日を…。
悪 夢 ノ ヨ ウ ナ 夜 ガ 明 ケ タ !
この文字の表示とともに、夜は終わりを告げます。「助かった!」。そんな声が思わず出てしまうゲーム、それが『ドラキュラII 呪いの封印』。圧倒的な絶望感の中、ひたすら朝の訪れを待つラブクラフト作品に通じるものを私は感じます。
『ドラキュラII 呪いの封印』の最大の功績は、「この作品をもって悪魔城シリーズの世界観を構築した」という点にあるでしょう。ただの悪魔城殴りこみアクションから、まさに“キャッスルバニア”というべき舞台となるトランシルバニアが描かれました。
また、前作以上の魅力を放つ、ドラキュラの体の一部を守護する悪魔たち。こういったエッセンスは、魔力がもっともヨーロッパを覆っていた暗黒の17世紀を舞台とした、闇の眷属と人間の最大の戦いを描く次回作『悪魔城伝説』で見事に昇華されることになります。
見た目が大きく変わったことにより、どうしても前作との相違がネガティブに取られてしまう本作。しかし、きちんとプレイされた方なら感じていただけるはずです。
本作に眠るドラキュラの魂を。惜しむらくはアクションとRPGのゲームバランスがあまり良いとはいえず、プレーヤーに苦戦を強いる場面が多すぎること。それも、考えようによっては、シモンの今回の旅がいかに困難だったか、と見ることもできますが、ヒントが少ないのはいただけませんね。攻略サイトナシでの自力クリアは、ちょっと難しいかも。
とはいえ、
実は別ゲームといわれているMSX版『悪魔城ドラキュラ』の発展形といわれるゲームシステムになっていること、後に『月下の夜想曲』でリスペクトされていることなど、シリーズを語る上で外せない作品。勇気あるベルモンドは、ぜひ一度、立ち向かっていただきたいと思います。

一番オススメなのは、WiiUかニンテンドー3DSのバーチャルコンソール(VC)です。手っ取り早く遊ぶことができます。画面が大きいWiiUのほうがオススメかも。
▼オススメの遊びかたはこちら▼
▼音楽に興味がある方はコチラもご参考に▼
=注意=
この記事に使われているゲーム画面やゲーム音楽の著作権はすべて権利者にあります。当ブログは権利者の恩赦によって使わせていただいている立場ですので、権利者から削除要請があった際には迅速に対応いたします。