【名作発掘】 『パックマン』――週刊少年ジャンプの新連載第一話のようなカタルシス!

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食欲は、純粋。


ニンテンドークラシックミニに収録されているファミコンゲームのひとつ。あまりにも有名すぎる名作『パックマン』とはどんなゲームなのか。あらためて、当ブログでも扱ってみたいと思います。

さあ、今宵も、歴史に埋もれしレトロゲームの魅力を語っていこう。

ブログ代表
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。

今回発掘した作品は、『パックマン』。ナムコ(現:バンダイナムコエンターテイメント)がリリースしたアーケードゲーム(ゲームセンターでプレイできる業務用ゲーム)で、1980年の作品となります。

パックマン_2
(画面はファミコン版です)

ゲームのジャンルとしては「ドットイートゲーム」というアクションゲーム類に分類され、その名の通り、ドット(画面上に点在する” ・ “)を食べていくことを目的としています。

世界にドットイートゲームというジャンルを確立させた功績
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前述した「ドットイートゲーム」というジャンルの開祖は、1979年にセガがリリースした『ヘッドオン』という作品です。これは、自機である自動車を操って画面上の” ・ “をすべて消していくというゲームでした。

ヘッドオン
(ヘッドオン)

ファミコン世代の方なら、『ルート16ターボ』の画面で『シティコネクション』をやった感じといえば分かりやすいでしょうか。この作品は、『インベーダー』の熱気が冷めはじめた時代において、ポスト:インベーダーの地位を狙ってセガがチカラを入れて作った作品だったらしいのですが、残念ながら大ヒットまではいきませんでした。

しかし、さすがはセガといったところ。目の付け所は悪くありませんでした。なぜなら、翌年に似たようなゲームデザインで作られた『パックマン』は世界的な大ヒットゲームとなるのですから。ところが、『ヘッドオン』と『パックマン』には、大きな差があったのです。

それは、ゲームで操作するモノに”キャラクター性”があるかないか。

「ゲームキャラクター」という概念を最初に作ったのは、ナムコの『パックマン』だった、といっても過言ではないでしょう。ナムコは、操作するプレイヤーの分身に、そして敵たちにキャラクター性を与えました。

パックマン_1

実はこれ、当時ではかなり画期的なことだったのです。

キャラクター性がついたことで、「敵を避けてドットをすべて獲得するゲーム」が、「食いしん坊のパックマンが、いろいろな性格のオバケたちの妨害をかわして、大好きなクッキーをすべてほおばっていくドタバタ劇」に様変わりしたわけですから。

このような背景もあり、海外ではパックマンのことを「80年代のミッキーマウス」と呼んでいました。

今見ると、かなりシンプルなゲーム画面ですが、当時の人たちはそこに『トムとジェリー』のような、パックマンとオバケたちの攻防を思い描きながら、ゲームを楽しんでいたのかもしれませんね。

そんな魅力によって、女性プレイヤーを惹きつけたのが大ヒットの要因といわれています。これは、開発当時から意図していたものだそうで、「ドットを消していく=クッキーを食べる」としたり、「ひと切れ取ったピザから生まれたキャラクターデザイン」も、女性ウケを狙ったとのことでした。

結果、アメリカでは空前のパックマンフィーバーが巻き起こり、当時のアーケードゲームとしては異常値である10万台の販売に成功。パックマンを主人公にしたテレビアニメの最高視聴率は56%を記録。そのゲーム性が似ていることから、敵対的買収を仕掛けられた企業が買収企業に対して逆にTOBを仕掛ける対抗措置のことを指す「パックマン・ディフェンス」という経済用語まで生み出してしまうほどでした。

ちなみに、ギネスブックにも最も成功した業務用ゲーム機として認定されています。

これだけ成功した作品ということもあり、コピー品も数多く出回ったことでも有名です。『ニューパックワン』、『ハングリーマン』、『スキャンダルマン』…などなど。何も知らない幼気な少年少女ならカンタンに騙されてしまうような一見すると『パックマン』だけど遊んでみると全然違う、パクリゲームが溢れていたのも時代として時代なのでしょう。

そんな中で異例なのが、パックマンがリボンを付けて女の子になっている『ミズ・パックマン』でしょう。これは、もともとはマサチューセッツ大卒生たちが勝手に作ったパックマンの亜流が後に正式に認められ、1984年にリリースされる『パックランド』では、リボンをつけた女の子版パックマンが正式なファミリーの仲間入りを果たしてしまいました。

まあ、いろいろと話してきましたが、『パックマン』というゲームは、世界ビデオゲーム史を語るうえで欠かせない作品ということです。「パックマン以前」と「パックマン以後」でゲームが変わるほどの影響力を持っていました。かの『スーパーマリオブラザーズ』の生みの親として知られる宮本茂さんも、「もっとも影響を受けたゲーム」として『パックマン』を挙げているほどです。

超シンプルなゲーム性、ゆえに時代をこえて面白い
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『パックマン』のゲーム内容は、とてもシンプルです。

スティックでパックマンを動かし、画面上にあるドット” ・ “(設定ではクッキー)を食べつくせばステージクリア。しかし、それを邪魔する4匹のオバケが存在し、それぞれには行動に性格があります。パックマンはオバケたちに対して攻撃する手段を持ち合わせていないので、捕まったらゲームオーバー。時には引きつけ、時には避けて、効率よくクッキーを食べつくしましょう。

そんなパックマンがオバケたちに対抗する唯一の手段、それがちょっと大きなサイズのドット” ・ “であるパワークッキー。これを食べると、パックマンは一定時間オバケたちを食べることができ、
連続して食べていくと得点が2倍⇒4倍⇒8倍と上がっていきます。

この攻守交代によってもたらされるカタルシスが、本作のキモです。

この、耐えて耐えて耐えてからの発散、というカタチは、世界的なステルスゲームとして有名になった『メタルギア』シリーズの骨子にも通じるところがあると思います。週刊少年ジャンプの新連載の第一話的展開ともいえる「グッとくる様式美」とでも言いましょうか。

ゲームの面白さの核のようなものを体現している作品といえると思います。

ファミコン版はとても良くできた移植です。このファミコン版はニンテンドークラックミニにも収録されていますので、これを機に世界ビデオゲーム史に大きな影響を与えたゲームとして、あらためてプレイしてみてはいかがでしょうか。

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