
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、データイーストが1992年10月にメガドライブ用アクションゲームとして発売した『チェルノブ』になります。
いきなりですが、レトロゲーム発掘において楽しいことの1つとして、「信じられなくいアタマが悪い、もしくは気が狂っているゲームと出会える」という側面があります。
これは、バカゲーとかアホゲーなんて言葉でいっしょくたに括ってしまってはダメな話。バカやアホを装っているゲームではなく、真のバカ、真のキ○ガイが作って、しかもなんか世に出ちゃった…そんな事故みたいな作品がレトロゲームにはたくさんあります。
では、本作がソレか?というと、そうではありません。しかし、本作の元になったアーケードゲームは完全に頭がおかしい作品でした。
※user6681さんの動画でBGMを紹介させていただいています。
それは、1986年4月26日1時23分に発生。
当時、ソビエト連邦(現・ウクライナ)の領地内にあった、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉を使用したチェルノブイリ原子力発電所の4号炉がメルトダウンを起こし大爆発。空気中に量にして10トン前後、14エクサベクレルの放射性物質がまき散らされました。
国際原子力事故事象尺度レベル7(最高レベル)認定された、世界最大規模の原子力発電所事故です。
これによって、爆心地から半径30キロ圏内は事故から30年が経過した今も居住が認められておらず、350キロ内には今でも高濃度放射能のホットスポットがあるといわれています。
事故を収束させるために、放射能防護服といったまともな装備がないまま、のべ80万人におよぶ労働者によってさまざまな処置が行われました。一番有名なのは、石棺とよばれるコンクリートの壁を4号炉を覆うように作られたコンクリートの壁でしょう。
人類史上最悪の原子力発電所事故と呼ばれたこの事故報道によって、ソビエト連邦の片田舎であった「チェルノブイリ」は、世界にその名を知られることになりました。
その約半年後。
平和な日本のゲームセンターに『チェルノブ』という、どう考えても、世界最悪の原子力発電所事故を彷彿とさせるタイトルに、皆が戦慄しました。
ソビエト連邦の国旗を思わせるロゴ、「ATOMIC RUNNER」「戦う人間発電所」というサブタイトル、炭鉱夫が大量の放射能を浴びて超能力を身につけるという設定…。
すべてが、オール・オブ・不謹慎!
その心中を考えたら、まともな大人ならこんなゲームを作りません。しかし、ゲームを作る大人がまともという保証はどこにもないのです。
当時のマスメディアの標的となり、異例の記者会見が開かれることになりました。データイースト社長福田哲夫氏の弁明に、各社の注目が集まります。おもむろに登場した福田氏。しかし、その口から出たのは想像を絶する内容でした。
「タイトルが似たのは偶然」
「カルノフの従兄弟が主人公だからチェルノブ」
『カルノフ』とは、データイーストが発売した中東出身のデブハゲ親父が主人公の誰にニーズがあるのか分からないアクションゲームのことです。
「時代設定も、ゲームの舞台も違うのに、親戚というのはおかしいのではないか?」という厳しいツッコミができるゲーム史に精通したメディア関係者がその場にいなかったことが悔やまれます。
とはいえ、会社的にいろいろな危機だったことは確かなため、家庭用ゲーム機への移植に際し、「ソビエト」と「放射能」と「原子力」は外そうということになりました。『チェルノブ』を構成する3大要素がなくなったことは、カレーに例えると、ジャガイモと人参と玉ねぎの消滅に等しいことです。
作品を牽引する爆発力のある「替わりのネタ」が必要になります。それが、なぜか「古代インカ」になりました。
かくして、270度の方向転換を余儀なくされて作られたのが、このメガドライブ版『チェルノブ』なのです。
・・・という、独特のフォントと言いまわしではじまるオープニングが終わると、いよいよゲームスタートです。
『チェルノブ』はアクションゲームなのですが、そのアクション部分に特徴というかクセがあります。
なぜか後ろを向けません。「わがまえに敵はなし!!」とおっしゃっていますが、敵は当然後ろからも襲いかかってきます。どうやって攻撃すんねんという話になりますが、それが、空中を飛んで回転しながらの攻撃になります。
(↑空中でバク転しながらのビーム発射)
「当たりにくそうだな…」と思った方は正解。とても当てにくいです。ゆえに、本作は後ろからくる敵をどう対処するかが肝となります。
「わがまえに敵はなし!!」とはポジティブな言いかたで、本当は「わが背後に死角あり!!」ということだったのかもしれません。
しかし、この空中回転のなんともいえない浮遊感が本作の売りであり、空中回転360度攻撃を自在に操れるようになってくると、本作は他の作品にない爽快さが湧いてきてクセになります。
そんな本作のもう一つの顔は、メガドライブ最高クラスのグラフィックとサウンドが光るという点。敵の組織デスタリアンが地球の先住民であり高度な文明を持っていたことは分かるのですが、すごく変な世界観がとても丁寧に描かれています。
ね?最高でしょ(笑)。
音楽もイカしていて、メガドライブの音声の貧弱さを逆手にとって、あえてサンプリング多用の民族音楽を使ってきたり、世界観とのマッチングはもちろんのこと、より『チェルノブ』の『チェルノブ』たる要素を際立たせています。
これは押さえておくべき1本です。
メガドライブソフトで出来がいいものは現在価格高騰気味なのですが、本作も7000~15000円くらいの価格がついています。Wiiのバーチャルコンソールでは617Wiiポイント(617円)です。
興味が湧いた方は、ぜひ、バーチャルコンソールでご購入を!
=注意=
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