2016年にプレイステーション4のアーケードアーカイブスに『ダライアス』が登場した。3つのモニタを使用した3画面専用ゲームという特異性から完全移植は不可能といわれていた作品でしたが、家庭用テレビの画像解像度向上によって、ついに完全移植が可能になったのです。しかし、それは『ダライアス』であって『ダライアス』ではありません。『ダライアス』とは、やはり専用筐体あっての『ダライアス』だと私は思います。今回はその点について触れた内容です。
さあ、今宵も、歴史に埋もれしレトロゲームの魅力を紐解いていこう――。
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、タイトーが1986年にアーケード用シューティングゲームとしてリリースした『ダライアス』です。近年では、『ダライアスバーストCS』などが発売された、息の長いシリーズの第一作目にあたります。
『ダライアス』は、専用の大型筐体と海洋生物をモチーフにした敵のメカデザインが特徴であり、そのように認識している方も多いのではないでしょうか。
個人的な意見ですが、『ダライアス』はシューティングゲームとしては特筆すべき点は特にありません。いたってシンプルな作り。複雑なシステムが搭載されていることもなく、物足りなさを感じるかもしれません。
ぶっちゃけ、ゲーム単体としては「そんなに面白くもない」と感じる方がいてもおかしくありません。
では、なぜ本作は”名作”といわれるのか。
それは、『ダライアス』が「五感で浸れるシューティングゲーム」というジャンルを開拓した存在だからに他なりません。
かつてコナミの『グラディウス』は、あり得ない世界(ステージ構成)をつくることで”宇宙”を私たちに感じさせてくれました。私は『ダライアス』の出発点も同じだった、もしくは『グラディウス』に多大な影響を受けた、と私は感じています。
そう、『ダライアス』のコンセプトは「”宇宙”に浸(ひた)らせるシューティングゲーム」。
その理由は、全ステージに描かれた美しい背景の数々を見れば一目瞭然です。惑星ダライアスに関連する世界観や物語を伝えようとするなら、あんな背景には決してなりません。
15~19インチモニタを横に3画面連結(したように見える)表示、BGMやSEを体感できるボディソニックを内蔵したシート、ボリューム調整可能なヘッドホン端子、吸い込まれそうな奥行きを感じさせる多重スクロール…そのすべては、プレーヤーを浸らせるためのものでした。
あと、これは完全に私見なのですが、本作は「水槽鑑賞」を制作時のモチーフにしていると思っています。
(↑美ら海水族館より)
大きな水槽とそこで泳いでいる魚たち。その姿を観賞する時に感じるあの感じ。別世界を見ているような、不思議な感じが漂うというか。『ダライアス』のプレイには近しいものを感じるんですよね。
もしかしたら、プレーヤーの感覚に訴える手法の1つとして、あえて水槽を意識させているんじゃないでしょうか。そう考えると、水生生物をモチーフにしたボスデザインにも、ある種の整合性を感じられます。
『ダライアス』といえば、小倉久佳氏作のサウンドがすばらしいのひと言。しかし、これらの楽曲は初めて聞く人にとってはいまいちパンチが弱く、単体では魅力を感じにくいかもしれません。しかし、『ダライアス』の宇宙を構成するその他要素とゲームで1つになったとき完璧なものになる、そんなナンバーばかりです。
本作をご家庭で楽しむ場合は、なるべくアーケードの専用筐体に近い環境を作るべきだと思います。
モニタはなるべく大きなものを用意する。
部屋は必ず暗くする。
ヘッドホンを使用する。
ボディソニックスピーカーも使う。
「なんでそこまでする必要があんねん!」と思われるかもしれませんが、『ダライアス』のプレイは”浸ること”こそ本質であり、そのためには手間をかけるべきだと感じます。それだけの価値がある作品です。