こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、1990年3月にNECアベニューから発売された、PCエンジンCD-rom2用シューティングゲーム『スーパーダライアス』。タイトルから分かるように、タイトーの名作シューティングゲーム『ダライアス』の移植作品になります。
PCエンジンというはハードは、8ビットハードではありましたが、使える色数が豊富だったこともあり、ローンチよりアーケードゲーム移植が豊富でした。それもアーケードの性能向上に伴ってだんだん完全に近い移植ができなくなってくるわけですが、特に『ダライアス』にはそうカンタンに移植できない大きな問題が1つ。
それは、「3画面」。
こちらの記事でも書きましたが、『ダライアス』は3画面の横に長い特殊な画面構成によって、他にはない独特の世界観を売りにした作品です。
今でこそ、16:9のテレビと解像度の向上によって完全移植が可能になりましたが、1990年の家庭用ゲーム機が使用するのは4:3比率の家庭用ブラウン管テレビ。とても完全移植なんてできません。
しかし、その難題と向き合い創意工夫を凝らして「名移植!」と言わしめたのが、この『スーパーダライアス』だったのです。
3画面は家庭用では実現不可能。ならば、1画面で移植せざるを得ません。しかし、もともと3画面でのゲームプレイを想定している『ダライアス』のプログラミングをそのまま持ってきても、それは1画面で視界が狭くなったダライアスにしかなりません。
開発を担当したビッツラボラトリーは、まず、何が『ダライアス』を『ダライアス』として構成しているかを研究し、できることとできないことを分けて、取捨選択を試みました。
ダライアスらしい神秘的な背景は可能なかぎりそのまま残しました。
(背景はとても細かく描きこまれています)
ボスである巨大戦艦の全体表示は諦めるも、一部分表示になっても迫力あるサイズ表示を選択。
(原作よりも迫力があるかもしれません)
サウンドはアーケード版音源をそのままCD-DAで。しかもドルビーサラウンド仕様にしてヘッドホンをつけてプレイすると没入感がすばらしい。収録の出来の良く、当時発売されていたサウンドトラックよりも有能でした。
(サウンドトラックとしても使えます。が、高いなぁ…)
ビッツラボラトリーの職人技は、1画面用シューティングゲームとして、細部の微調整を徹底的に行なった点にあるでしょう。3画面が1画面になったことで、アーケード版でははるか彼方の右画面の端から登場する敵の編隊や弾をそのまま移植するのではなく、スピードを遅くしたり、タイミングを原作より遅らせたり、すべて細かく調整しました。
特に『ダライアス』のボス戦は、3画面という広いフィールドの中で、時に近づき、時に離れて、縦横無尽に戦闘をくり広げるものですが、1画面ではそれはままなりません。近接戦闘でも避けられない攻撃にならないように、弾の発射角度を広げるといった実に細かい変更が行われています。
(原作をやると、細かい違いに気が付きます)
しかし、それだけでは商業的にまだまだ弱い。
そこで、オリジナルボスを追加しました。『ダライアス』は、A ZONE~Z ZONEまで全26ステージあり、ステージクリア後のルート選択によって進めるステージが変わってくるわけですが、実はボスは11体しかいません。
『スーパーダライアス』では、タイトーの協力のもと、アーケード版のそもそもの構想であった「全26ステージに26種類のボスが登場する」を採用。ロケテスト後にもろもろの事情で削除されたボスをはじめ15体のボスが追加されました。
つまり、これらの要素によって本作は、「家庭用でかぎりなくホンモノに近いダライアスであり、アーケード版の欠損部分が保管された唯一のダライアス」というポジションを確立。タイトルに付けられた「SUPER」は伊達ではない作品となったのです。
ちなみに、PCエンジンの周辺機器であるバーチャルクッションを使用すると、ボディソニックまでいい感じで再現…、いや、むしろ専用筐体以上の一体感を味わえます。
レトロゲームの楽しみかたは1つに、「不出来を愛する」というものがあります。ハード性能というカベにより完全移植がムリだったとき、開発陣がその問題とどう向き合ったか。その成果は、作品にはっきり残っているのです。
そういう点で、『スーパーダライアス』は絶対に押さえておくべき作品と言えます。
特に、Wiiバーチャルコンソール版がオススメ。実機もいいですが、PCエンジンCD-rom2はHDMI出力に対応していないため、ドット絵をキレイに見たいのなら、Wiiバーチャルコンソール版がいいです。実機ではあった処理落ちも改善されています。
秋の夜長、ヘッドホンをつけて、ボディソニックに身を委ねて、『ダライアス』の宇宙に浸ってみるという選択はいかがでしょうか。