【秀作発掘】 『沙羅曼蛇(MSX版)』――見た目に騙されちゃいけない、とにかくすんごい沙羅曼蛇。

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『炎の予言』が大躍進。


MSX版『沙羅曼蛇』は、1986年にリリースされたアーケード版『沙羅曼蛇』の移植ではなく、似て非なる作品。同名タイトルではありますが、ファミコン版以上に別進化を遂げています。自機の2色表示、少ない背景色数など、MSXのコナミシューティングは「今やるのはちょっとね…」と敬遠されがちですが、家庭用シューティングゲームでよくこれだけのアイデアを詰め込んだ実験作は他に類を見ません。今では絶対作れないゲーム。まさに、レトロゲームならではの面白さの結晶といえるでしょう。

さあ、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を紐解いてみよう――。




ブログ代表
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。

今回発掘した作品は、コナミが1987年12月にMSX用ゲームソフトとして発売した『沙羅曼蛇(MSX版)』。アーケードの同名タイトルの移植と思わせて(パッケージイラストも同じ)、実はまったく違うスゴいゲームとなっています。

ひと言でいうと、「『沙羅曼蛇』の設定を再解釈して、ただ目の前を敵を倒すだけのSTGに探索要素を加え、かつ、ビッグコアを超える大型戦艦がバッカンバッカン出てきて、ソフトがあると『グラディウス2』に出てきたヴェノムとの再戦が実現するMSX版グラディウスシリーズ3作目」といったところ。

自機は2色、背景色数も少なく、スクロールはガタガタ…。しかし人間と同じで、ゲームの真価は見た目では判断できません。本作の魅力は、家庭用シューティングゲームの在り方を模索する超・実験作であるところです。

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ざっくり見せる、MSX版のスゴイとこ
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★5つの特殊アイテムがある!
画面のスクロールを一定時間止められる【スクロールストップ】。オプションをVの字隊形に配置できる【オプションホールド】。暗くなったステージに灯りをつけられる【スパークライト】。壁を破壊できる【トランフルボム】。2機の間にオプション配置ができる【オプションチェイン】。2機が合体できる【ユニオン】。

いろいろゴチャゴチャ書いたけど、『パロディウス』シリーズにおけるベルパワーアップのようなものとお考えください。

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(これはオプションホールド使用時)

★7つのEX兵器がある!
強化されたミサイル【ホークウィンド】。岩盤をも砕く強化されたレーザー【メテオレーザー】。最強の兵器【スクリューレーザー】。追尾型のミサイル【ホーミングミサイル】。2機合体時に使える【ツインレーザー】。さらにその上を行く【トリプルレーザー】。合体時に使えるリップルの強化版【アーミングホール】。

これらは前作であるMSX版『グラディウス2』の追加兵器と同様の扱い。前作との違いは、一部の兵器がないとクリアが困難なステージがあることです。

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(このように、硬い岩盤を撃ち抜いていく攻撃力!)

★オリジナルBOSSがデカい!
『沙羅曼蛇』ということで、アーケード版同様にゴーレムとテトランは出てくるものの、それ以外のBOSSはすべてオリジナル。前作MSX版『グラディウス2』の醍醐味の1つはヴェノム率いる将軍たちが指揮する巨大戦艦との戦いでしたが、同様の興奮が本作にもあります。

セデューサ
(第二戦闘母艦 セデューサ)

デッドエンド
(巨大戦闘母艦 デッドエンド)

エニグマ
(戦略コントローラー エニグマ)

メタルスレイブ
(超弩級戦闘母艦 メタルスレイブ)

★ステージ分岐がある!
ステージ2以降は、「惑星アイネアス」「惑星ラウィニア」「惑星キルケ」の3つのうち、好きなコースを選択することができます。それぞれのステージの難易度はランダムで設定されるため、コンピュータALEXのデータを見て、攻略順序を考えるべきです。

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(このようなデモが導入され、ステージ選択へ)

★謎解き要素がある!
ステージ3以降のBOSSを倒すには、敵のシールドを弱体化させるために最初に破壊すべきコアがあります。このコアはプレイごとに変更されてしまう仕様。しかし、ステージ内にある古代遺跡を見つけて『炎の予言書』を解読すれば、その弱点が分かるのです。

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(これだ、”黄金にかがやく球”!)

★各ステージにバックストーリーがある!

OPERATION 01
-TOP FLIGHT SPEED TO LATIS-
スラッシャー、サーベルタイガーの2機で惑星ラティスに突入。残留ラティス人全員を輸送船レイラに収容することが目的。
OPERATION 02
-CONDUCT TO SPACE STATION ZOT-
輸送船レイラを安全領域まで護衛・誘導することが目的。宇宙ステーションZOTに残る全残留ラティス人も収容する。
OPERATION 03
-SET THE LEEK SYSTEM-
惑星アイネアス、惑星ラウィニア、惑星キルケにおけるサラマンダ軍の殲滅及び掃討が目的。掃討後それぞれの惑星にリークシステムを設置する。
OPERATION 04
-CRUSH SALAMANDER-
惑星オデュッセウスに駐留しているサセマンダ軍の大本営を完全制圧、オデュッセウスの完全解放が目的。同惑星での最終リークシステムの設置、全リークシステムのリンクを確認後システムを作動。これによって惑星ラティスにはびこるゼロスフォースを除去することができる。
OPERATION X
-WRATH OF VENOM-
MSXの2スロットに『グラディウス2』を挿しこむことで遭遇可能。また、これによって、リークパワー増幅器であるクリスタルブリーズの採取が可能となり、これによりリークシステムが完全出力できて惑星ラティスを救うことができる。それを阻止せんとするヴェノムと
の最終決戦へ。

このように、いろいろ凝ったシステムや演出のフル装備が、MSX版『沙羅曼蛇』の魅力です。

MSX版沙羅曼蛇のストーリー
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ラティス系惑星群――テスラ系銀河の中に位置するこの惑星群は、生命誕生から1億2千万年もの歴史を有し、惑星ラティスを中心に4つの惑星(アイネアス、ラウィニア、キルケ、オデュッセウス)で構成されている。
 
さまざまな文献をみるに、かつて古代ラティス文明というものがあったという。その文明は、現在実用化されているリークパワーよりも強力な原始リークパワーを活用した超文明であったといわれているが真実は定かではない。
 
研究により古代ラティス人は惑星グラディウスのリーク人の祖であるとも考えられるのだが、それも明らかにはなっていない。なぜなら、古代ラティス人は古代太陽の死滅により滅びてしまったからだ。
 
しかし、古代ラティス人はその大いなるい力によって、”炎の予言”と呼ばれる予言の文章をいくつも遺していた。彼らは1万年に1度の神聖な日食の日、地下祭壇にて儀式を執り行ない、その強大な古代リークパワーをもって、1億年もの先の未来をも見通す事ができたという…。
 
古代ラティス人は、自分たちの遥かな子孫、つまり私たちの滅亡までも予言していた。
”炎の予言・序章”と呼ばれるテキストには次の詩が記されている。
 
 我等は赤き太陽の永遠に沈みし時から やがて滅び行く運命と知りしものなり
 我等は我等の子孫を救うため 我等の見うる来たるべき世界の予言を行うものなり
 我等は六つの章にわたり 未来の災いをここに 炎の予言 として書き記す
 
そして今、予言の時がやってきた。
惑星ラティスを取り巻く4惑星は、サラマンダと呼ばれる謎の艦隊によって攻撃を受け、惑星ラティスは瞬く間に制圧されてしまう。
 
多くの同胞たちがサラマンダ軍の制圧した軍設備等に収容されていく中、運良く難を逃れえた者たちは、輸送中継ステーションZOTに退避。同盟国である惑星グラディウスに向け、救援要請を発信することができた。だが、おそらく時間の問題で、自機にここも攻撃を受ける事だろう…。
 
オデュッセウスに本拠を置いたサラマンダ軍により、惑星軍は全て制圧され、惑星ラティスはサラマンダ軍が発生させたゼロスフォースによりオゾン層を破壊され、ラティス人の生存が不可能な状態にされてしまっていた。
 
救援要請を受けたグラディウス皇帝ラーズ18世は、シードリーク法の軍事利用をもって、ラティス系惑星群の危機を救うため行動を開始した。シードリーク法とは、リークパワーの照射により、惑星の大気圏外に人口オゾン層を発生させるメカニズムであり、本来ならば未開の無生命惑星を生存可能な状態にするためのものである。
 
『シードリーク作戦』は、開始された。
 
本作戦は、残留ラティス人達の救助、ラティス系惑星群における沙羅曼蛇軍の排除と殲滅。同時にリークシステムの設置・作動によりゼロスフォースの除去。これらの行動を極めて短期間の間に行わなければならない。なお、炎の予言には本件と関わる条項が示されている可能性が極めて高く、新たな予言の探索と解明も平行して行なうことが望ましいとされた。
 
そしてもう1つ。本件には反逆者ヴェノムが関わっている可能性が高いというのがグラディウス軍上層部の見解。もし、ヴェノムを発見した場合は、すみやかに掃討することが2名のパイロットに託された。
 
本作戦に起用されたのは、最新鋭超時空ファイター「スラッシャー」を操るイギー・ロックと、パートナー機の「サーベルターガー」に搭乗するゾウィー・スコットの2名。両機は作戦遂行のために惑星ラティス星系へと飛び立った。

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MSX版『沙羅曼蛇』は、MSX版『グラディウス2』の続編として作られています。『グラディウス2』が惑星グラディウスに暮らす少数民族リーク人による反乱を描いた物語だったのに対して、今回はリーク人の起源が眠る惑星ラティス侵攻にリーク人反逆者ヴェノムが関わるという物語。

ヴェノムはバクテリアンに魂を受け渡したはずですが、リーク人の復権を心から願っている、彼からはそんな強い意志を感じます。

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本作は、MSXのスロット2に『グラディウス2』のソフトを挿しておくと、OPERATION 03終了後に、OPERATION Xが発動。『グラディウス2』の懐かしいヴェノム艦にて、司令官ヴェノムとの戦いが再びくり広げられることになるのです。

MSX版沙羅曼蛇のハイライト
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探索要素のあるシューティングというのは、逆にいえば、フツウのシューティングでは勝負できないからこそ、別方向の可能性を追求した結果ともいえます。

本作は、発売当初もあまりいい評価の作品ではありませんでした。理由は、最凶レベルの難易度により、一度でも死んだらそこからのやり直しが難しく、グラディウスらしい立て直しの面白さがないということ。『グラディウス2』がないと真エンディングを見れないということ。この2点が大きな理由でした。

しかし時代は流れて今、私はこの思いきった方向に舵取りしたこの作品に魅力を感じずにはいられません。「ゲームとはかくあるべき」という固定観念や売れるパッケージ化が進んでことにより、自由なゲーム開発ができなくなった近年では、二度とお目にかかれない挑戦だからです。

本作の中には、「できないことはすっぱり諦め、できることで最高のモノを作ろう!」という職人の心を感じます。アイデアのほとばしりこそ、本作の真骨頂。レトロゲームの面白さを体現している作品ともいえるのではないでしょうか。

二度も失敗したヴェノムは、次回、いよいよ禁断の手段を講じて惑星グラディウスに復讐を図ります。次作『ゴーファーの野望 エピソードII』も、ぜひプレイしてみてください。

  

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