今の人たちにとっては「昔のファミコンゲーム」といった印象かもしれませんが、『ゼビウス』はアーケードゲームの未来を切り開いた作品でした。当時、ナムコ社内からもまったく期待されていないタイトルであり、一押しタイトルと一押しタイトルの間に出す”場つなぎ”のような存在だったため、あまり口出しされなかったことが功を奏したのかもしれません。
システムプログラムは『ディグダグ』などの深谷正一さん。メカニックデザインはナムコの誇る職人「Mr.ドットマン」こと小野浩さんによるドット絵を元に『マッピー』の遠山茂樹さんが担当。音楽は慶野由利子さんが担当。全体をまとめたのは、当時まだ新入社員だった遠藤雅伸さんでした。
さあ、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を紐解いていこう。
※2018年4月15日22時、画像を追加。
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、ナムコが1983年1月にアーケードゲーム用シューティングゲームとしてリリースした『ゼビウス』です。おそらく名前を聞いたことがある方がほとんどだと思いますが、なぜ、本作が名作といわれているかを、この記事では分かりやすく説明したいと思います。
(PSのSD/G+よりキャプチャーしました)
STGのステージを2段階上げた!
『ゼビウス』とは、「アーケードゲームにおけるシューティングゲームのステージを2段階くらい上げたスゴイゲーム」です。
レトロゲーム史を学んでいくと、ある作品の誕生によって、その後に作られるゲームのレベルが引き上げられるといった事象が見られます。『ゼビウス』とは、まさにそういう存在。アーケードゲーム史において、「ゼビウス前」と「ゼビウス後」と分けられるくらい、時代を作ったゲームといえます。
では何がすごかったのでしょうか。簡単にまとめてみました。
◎グラフィックが最先端!
当時のアーケードゲームは、キャラが単色、背景が黒一色、いかにもコンピュータゲームというものが多かった。しかし本作は、平地、森、道、海といった戦いの舞台が描かれ、しかもスクロールする。さらに、敵や建造物は影のグラデーションがつけられ立体的な表示に。さらにさらに、敵がコンピュータであるように、敵の赤く光る部分はヴォンヴォンと点滅する。ビジュアルが当時の他のゲームとケタ違いだった。
◎攻撃方法が最先端!
空中と地上に対して、それぞれ武器が異なり、それを使い分ける縦スクロールSTGの元祖。空中攻撃のザッパーは3連射が可能だが、地上用武器ブラスターは着弾予定のカーソル部分にボタン発射後、少しタイムラグがあって爆発。この時間差はブラスターの落下時間を意味するのだが、この細かい演出により、空中と地上ではまったく別の戦いかたが求められる。いままでにないリアリティと戦いの奥深さが新しかった!
◎敵の動きが最先端!
すべての敵がすでに決まっている動きをするのではなく、自機の動きによって軌道を変える敵を採用。簡単な攻略パターン化を阻止するとともに、プレイのたびに新鮮さがあり、同時に新しい局面と出会う緊張感が保たれた!
◎ゲーム内難易度調整が最先端!
『ゼビウス』では、敵のレーダー基地ゾルバクを破壊すると、空中に出てくる敵が少なくなる(正確にはそうではない場合もあるのだが説明が長くなるので割愛)。また、1機やられたあとの立て直し場面でも、敵の攻撃は弱めになる。このようなプレイ内容によってゲーム難易度が変更される仕様が斬新だった!
◎「隠しキャラ」が最先端!
何も見えないところにブラスターを撃ち込むと現れる「ソル」「スペシャルフラッグ」。出現とともに高得点が得られる隠しキャラはゼビウスから生まれた。その場所を知っていること、知っていて出現させられることが、ゲームプレーヤーたちのステータスになった!
◎音楽が最先端!
1フレーズ4秒ほどのもののくり返しなのですが、独特の浮遊感があり、これぞ電子音シーケンスという構成によるミュージックが、実にテクノ。無機質なメタリックをイメージさせるこの曲と、異文明との戦いという世界設定がマッチして、なんともいえない作風を作り出している!
◎世界設定が最先端!
本作には綿密に作られた世界設定がある。自機にも、敵1機ごとにも、きちんとした設定があり、ゲーム中の動きを見ると納得させられる。この「ここまでやるか!」感こそが、『ゼビウス』の魅力であり、当時のプレーヤーたちはブラウン管の向こうに『ゼビウス』という世界を感じ、アーケードゲームというものでここまでの作品が作れるのだと、感動したのです。
侵略者の名は、ゼビウス軍。彼方の外宇宙にある第四惑星ゼビウスより飛来し、超知性体ガンプによって統治された軍隊だった。その目的は不明。地球よりもはるかに進んだテクノロジーを駆使したゼビウス軍に対して、多国籍から構成される地球軍は応戦するものの、核攻撃をもってしても彼らの装甲を破壊することはできず、わずか数週間で南アフリカは制圧されてしまう。

(画像はファードラウト伝説より)
紀元前12000年前。当時の地球にあった前文明によって、バイオコンピュータ「ガンプ」は創られた。もともと人類への奉仕を目的としたものだったが、長い年月にわたって人工知能として思
考を重ねてきたガンプにはいつしか自我が芽生えるように。そして、人類と同じようにドークト(ESP)を有していた。そしてガンプは、「自らが人類を管理下に置くことによってのみ、人類の恒久的な繁栄はもたらされる」と考えるようになり、そのための恐るべき計画を実行に移しはじめる。
そのために、ガンプは自分のレプリカを6体作り、惑星ゼビウスをはじめとする6つの惑星にガンプレプリカと適応者である人類を移住させる。そして、不適応者である人類は地球の氷河期で全滅させようと考える。そして、14000年後。地球を中心にして、移住先の6つの惑星は惑星交錯(ファードラウト)を起こすとき、6つの惑星で人類のドークトを支配した6つのガンプレプリカは、地球に膨大なドークトを流入させ、ガンプはより高度な存在へと自身を進化させるつもりなのだ。

(画像はファードラウト伝説より)
ムー・クラトーはラスコ・クラトーの子孫だった。ムーと現地球人の邂逅は、14000年という月日によってわけ隔てられた同種族の邂逅でもあった。
ムー・クラトーは、現地球人にゼビウス軍より盗み出した技術による最新鋭戦闘爆撃機の設計図を渡す。素材は、ゼビウス軍と同様のイル・ドークトを使用。ゼビウス軍の装甲を貫くスパリオ砲を持つ。その機影は、かつての先代地球人が未来の向けて残した設計図であり、後の原住民に受け継がれ、ナスカの地上絵として現代まで姿を残したもの。太陽の鳥の名を持つ戦闘爆撃機「ソルバルウ」。
しかし、ソルバルウのスパリオ砲は超能力兵器であり、クラトーのマトリクスを持つものでしか扱えない。そこで地球防衛軍は、世界各地よりクラトーのマトリクスの持つ者たちを集められていった。そして、ついに3機のソルバルウが完成。ムーをはじめとする3名のパイロットも決定。ソルバルウ計画が発動することとなった。
惑星ゼビウスを中心とする6つの惑星が直交するファードラウトまでに、ゼビウス軍の橋頭堡を破壊して南アメリカを制圧するというもの。これが叶わなければ、6つの惑星総人口分のドークトとファードラウト効果によって、人類は永遠にガンプの支配から逃れることはできない。絶望の中の最後の希望を乗せて、3機のソルバルウは発進した。
これでも結構端折っているのですが、長いですよね。もう少しまとめるとこんな感じです。
先代地球人によって作られた生体コンピュータ「ガンプ」が意志を持ち、超能力を有して、人類を管理独裁しようとする。その動きに先代地球人も反攻し、オリジナルガンプの破壊に成功するが、ガンプはすでに6つの惑星に6つのレプリカを作っており、それぞれの惑星では人類の管理がはじまっており、その超能力をレプリカガンプが支配している。
オリジナルガンプの願いは、数万年おきにおこるファードラウトという惑星直交という奇跡とそこで生じる力場を利用し、6つの惑星で集めた超能力を使って、自らにさらなる進化を行なおうとしていること。その目的は分かっていても先代地球人の戦力・技術力ではガンプの野望を阻止することはできなかった。
14000年後。ファードラウト直前になって、ガンプに反攻するすべてのキーパーツが揃う。ガンプの弱点。超能力兵器スパリオ砲。太陽の鳥ソルバルウ。クラトーのマトリクスを持つ操縦士。ガンプの人類支配に対する一大反攻作戦が幕を開ける。
実は、『ゼビウス』という作品の中に諸悪の根源であるガンプは出てきません。本作は、人類対ガンプの戦いにおいては、ファードラウトによるガンプの進化を阻止するための戦いでしかありません。その戦いに勝利しても、惑星ゼビウスには軍本隊が存在し、ガンプレプリカもまだ6つ存在します。
そう、絶望的な戦いなのです。
それでも、ガンプの支配から逃れるために。次の希望に襷をわたすために。人々は戦いつづけるというのが、『ゼビウス』という作品のバックストーリーなのです。
そして、かつてのプレーヤーたちは、そんな胸アツな思いを抱いて、ゼビウス軍との戦いに身を投じ、身銭をきっていったのでした。
いかがでしょうか。
この記事を読んで、「ゼビウスのイメージが変わった」「プレイしてみたくなった」と感じていただけたら幸いです。
ちなみに、本作の前日談といえる『ゼビウス ファードラウト伝説』、本作の続編『スーパーゼビウス ガンプの謎』、ファードラウトサーガ最終章『ゼビウス3D/G』という作品がシリーズとして展開されています。興味があれば、そちらもプレイしてみてください。