名作『スターソルジャー』に続いて、TDK全国ファミコンキャラバンの公式ソフトに認定されたのが、この『ヘクター’87』でした。しかし本作、脅威的に難しいのです。その難易度の高さたるや、俺の友人であるゲーム依存症気味だった近所に住むフクシマくんが15分でコントローラーを投げ捨てて発狂したのか机に座って勉強し始めたほど。そして、昨年あれだけ盛り上がったキャラバンを大幅に盛り下げたA級戦犯とも言われています。ひいいっ、恐ろしい。そんな『ヘクター’87』とは、一体どんなゲームだったのでしょうか。
さあ、今宵も、歴史に生まれし、レトロゲームの魅力を紐解いていこう――。
こんばんわ、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘した作品は、1987年7月16日にハドソンから発売されたファミコン用シューティングゲーム『ヘクター’87』。第3回TDK全国ファミコンキャラバンの公式ゲームです。
※grad1u53さんの動画よりBGMを紹介させていただいています。
ヘクター’87って、こんなゲーム
<ストーリー>
星歴4622年。タイムハープ社の調査船団は、太古の地球に調査に向かっていた。しかし同じ頃、謎のバイオメカの軍団が、地球の古代文明の時代に出現し侵攻を開始。歴史改変を目論んでいた。タイムハープ社の調査船団の多くは、襲撃を受けて撃破されてしまう。ただ一隻残った船の名は「ノア」。光粒子砲とクラスター爆弾しか持たない調査船1隻 VS バイオメカ軍団という絶望的な状況下、ノア号の孤独な戦いが始まる。
・・・というわけで、
本作は、さまざまな時代の古代文明を舞台に、調査船ノア号と謎の存在ヘクター率いるバイオメカ軍団が激しい戦いをくり広げるというシューティングゲームです。コナミの『沙羅曼蛇』のオマージュか、縦スクロールステージと横スクロールステージが交互にくり返されます。
(ステージ1はインカ帝国。前方に見える木のバケモノみたいなものが回復アイテムを吐き出してくれます)
(とにかく敵の動きが速くいやらしい。1面クリアできないことも珍しくありません)
(ステージ1のボス「イオタキャノン」。中心部の2つの目のようなところが弱点)
(ステージ2はマヤ帝国。後ろから現れる敵がとにかく面倒くさい)
(洞窟の中では、上下の壁や炎、そして敵の体当たりに注意!注意すべきものが多すぎる!)
(ステージ2のボス「マヤフェイス」。落ち着いてやれば倒せる!)
(ステージ3はアトランティス大陸。このあたりから敵の弾がパンパなくなります)
(とにかくザコ敵が硬い!こいつにも8発くらい当てないと倒せません!)
(ステージ3のボス「アトランコマンダー」。弱点は赤く光っている目だ!)
(ステージ4はエジプト。このゲームくらい対地ミサイルが活躍するゲームも珍しい)
(ステージの後半はピラミッドの中へ。『沙羅曼蛇』を思い起こさせるなぁ)
(ステージ4のボス「イージーゴーレム」。上から振ってくる岩がとても厄介!)
(ステージ5はムー大陸。地上建造物が多くて、誘爆を起こさないと対処しきれない)
(攻撃すると複雑な動きをする敵も、攻撃しなければやり過ごせる…ということも)
(ステージ5のボス「ムーメダル」。本体の周囲を回っているメダルから破壊せよ!)
(ラストステージは邪馬台国。とにかく敵の動きと攻撃が激しいので超感覚で対処だ!)
(このような落下物を通り抜けた直後は上下に動いて、敵からの攻撃をかわすこと)
(いよいよヘクターと対面!弾は自機に向かってくるので、左右に動いて誘導しよう!)
そんな『ヘクター’87』ですが、いろいろヤバイです。
まず、自機がカッコ悪い。そして自機のスピードが遅い。その割に敵はすべて硬い。そして敵は大抵イヤなところに弾を撃ち込んでくる。ファミコンでよくこれだけの弾を出せたなというくらい吐き出してくる。加えて、撃ちもらした敵はほぼ間違いなくイヤな動きをしてきて体当たりしてくる。分かりやすく例えると、すべてのザコ敵が『魔界村』のレッドアリーマークラスのシューティングゲームって感じです。
(『魔界村』のレッドアリーマー)
本作は、ライフ制が採用されており、ノア号は1発や2発くらい敵の弾に当たっても撃墜されません。でも3発目が当たればアボーンです。でもご安心ください。ステージ内には、ライフ回復アイテムを吐き出してくれる敵がいて、コイツにクラスター爆弾を投下すれば、どんどんライフ回復アイテムを吐き出してくれます。しかし油断召されるな。一ヵ所に数秒以上いると、ほぼ間違いなく弾が飛んできます。敵も寄ってきます。敵の体当たりをくらっても1発でボカーン。避けた拍子に壁にぶつかっても1発でドカーン。そしてとどめは、コンティニューなしという鬼仕様。
『スターソルジャー』は「敵の編隊を倒していく爽快感」を追求したシューティングでしたが、本作はまったく別のアプローチのシューティングゲームであり、「弾を必死に避けて死中に活を見出す」が求められます。設定も仕様も玄人好みであり、お子様向けではないことは確かでしょう。
本作をプレイしてクリアを目指すのであれば、『スターソルジャー』的な攻略発想は捨てるべきです。本作のプレイ感覚は、あくまでも個人の感想ですが『ゼビウス』に近い感じ。『ゼビウス』も自機に向かって敵が弾を撃ってくるため、同じ場所に長時間いるのは得策ではありません。意図的に動いて、敵の弾をかわしていく必要があります。本作も基本はその戦法です。
(こちらはゼビウス)
ただ、本作はなかなかパターン化を作りにくい仕様であるため、都度異なる敵の包囲門に対し、臨機応変に対応していくシーンが多いです。これが、もうアタマで考えてうんぬんというレベルじゃないですよね。第六感の先の感覚がシゲキされるような感じです。やられて、やられて、やられてまくっているうちに、脳の奥にある何かが開いていく感じがして、「数秒先の敵の動きが見える」「生き残るための道が見えてくる」気がして、結果として、上手く避けられちゃいます。
これがね、気持ちいいんですよ(マジで)。
プレイし続けているとニュータイプとして開眼していくようなところがあるので、俺は「これはシューティングゲームではない。人工進化装置だ」と言いたい。『マインドシーカー』よりも本作のほうがビンビン来てるぜ、鉄雄。それくらい人間って、追い込まるとやれるもんなんですよ。40歳をすぎた俺でも全面クリアできちゃったもんね。
『ヘクター’87』は、その超絶難易度をもって、「人間って素晴らしい」ってことを教えてくれた気がします。キャラバンシューティングの中では異質な存在なのは間違いなく、手軽に爽快感が得られる作品ではありません。大人になるとアタマが硬くなってくるもの。それをほぐしていく脳トレ的な側面もあるのかなと、ひさびさにプレイして感じました。
(一度クリアするとタイトル画面がちょっと変わります)
(そして自機が『ボンバーキング』になるのでした!イエーイ!)
=注意=
この記事に使われているゲーム画面やゲーム音楽の著作権はすべて権利者にあります。当ブログは権利者の温情によって使わせていただいている立場ですので、権利者から削除要請があった際には迅速に対応いたします。