第一報を聞いたとき、耳を疑いました。あの『SNATCHER(スナッチャー)』がPCエンジンに移植されるなんて。しかも、コナミのSUPER CD-rom2参入第一弾だって。どうやらギリアンたちがしゃべるらしい。画面が動くらしい。どうなっちまうんだ、『SNATCHER』は!期待と不安が織り交ざる中、発売決定記念のパイロット盤として発売されたのが、この『SNATCHER CD-ROMantic パイロットディスク』だったのです。そこでくり広げられていたのは、われわれの想像をいい意味ではるかに超える『SNATCHER』であり、本編の期待が上がるしかない内容でした。しかも、このパイロットディスク、ただの体験版ではなく、凝りに凝りまくったアイテムなのでした。
さあ、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を紐解いていこう――。
こんばんわ、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘したのは、コナミが1992年8月7日に発売したPCエンジン用の体験版『SNATCHER CD-ROMantic パイロットディスク』です。
「体験版」と聞くと、「ゲームの序盤がちょろっとできるだけかなー」と思うでしょう。たしかにそうなのですが、それだけでは終わらないのが小島秀夫監督。本作は、雑誌の付録についてくる無料の体験版レベルをはるかに超えており、定価1620円以上の価値がある、『SNATCHER』の世界にどっぷり浸かれる内容なのでした。
内容は、こんな感じです。
ゲーム本編の序盤、廃工場のくだりをプレイすることができます。そもそも『SNATCHER』は、1988
年にPC-8801Mk2SR以降とMSX2で発売されたアドベンチャーゲーム。テキスト主体でグラフィックの色数も少ないPCゲームが、PCエンジンSUPER CD-rom2に移植されるにあたって、グラフィックがとてもキレイになり、背景の雲がスクロールして動いていたり、何よりギリアンとメタルギアmk-2が声を出してしゃべる!期待が果てしなく膨らんでいく内容でした。
予告編
小島監督がおそらく一番力を入れて、一番作りたかったと思われるのが、この予告編です。とても出来が良く、『SNATCHER』がやりたくなること間違いなし。PCエンジンで初めて『SNATCHER』を知った人に向けて「こういう作品なんだよ」とアピールして作られているのですが、所々、PC版にはなかったシーンも入られているのです。そう、PC版からのファンに対してのアピールにもなっているんですよ。
そもそもPC版の『SNATCHER』は未完の作品でした。「第一部」「第二部」という二部構成なのですが、物語が完結しないのです。すごく続きが気になる「これからどうなるんだ!?」というところで終わってしまうんですね。2年後、MSX2で『SDスナッチャー』という、ゲームジャンルがRPGに変わったものの『SNATCHER』の続きの部分を収録した作品が発売されました。この予告編では、「『SDスナッチャー』で語られていた部分が、アドベンチャー形式になっていますよ」と、わずか数シーンの新作カットでそれを伝えているのです。
「まだ耳がじんじんする。くそー、スナッチャーめ!」
「アリスがズタズタに引き裂かれています」
「…危ないところだったな」
「ダメだ!タイミングがつかめない!」
「死体の顔を復元することで誰がスナッチされているか分かるということか…」
「スナッチャーのドラキュラじみた習性の理由は、不完全な人工皮膚にある」
「大きな花火を上げてやる!」
「逃げて、ギリアン!これはワナよ!」
『SNATCHER』は2042年のネオ・コウベシティを舞台としたサイバーパンクアドベンチャーです。綿密な世界設定が存在しており、その情報の中には、ストーリーの謎に関わるものもありました。そんな用語解説がメインなのですが、登場人物紹介では各キャラクターがしゃべります。ゲーム用に収録されたものの使いまわしではなく、このパイロットディスクのための収録がされているこだわりようです。
(SDスナッチャーのエンディングで使われていた画像が復活!)
(主要キャラクターたちは、みんなしゃべります)
(武器や乗り物はパイロットディスクのために描かれています)
コナミの美人広報として有名だった早坂妙子さんによる、PC版『SNATCHER』について熱い解説を書いていた山下章さんのインタビュー。『SNATCHER』がいかにすごい作品だったか、山下さんが語っています。
古川もとあきさんによるPCエンジン版用の新曲、PC版のアレンジ曲を聴くことができます。メタルギアmk-2が足踏みしながらリズムに乗っている姿がかわいらしいです。
「ファンなら持っておきたいコレクターズアイテム」なのですが、全編を通じてこだわりがすごいです。別の見方をすると、小島秀夫さんの仕事の考えかた、厳しさが感じられる作品とも言えるかもしれません。たぶん、パイロットディスクにこだわりたいけど、開発予算が発生するから、有料体験版にする…という感じで決まったのではないでしょうか。フツウに考えて、体験版を金出させて買わせるなんて、あり得ないですからね。でも、やってのけた。しかも、このパイロットディスクは一時期、高値で取引されるほどの人気を博しました。
=注意=
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