
こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘した作品は、1988年2月頃より稼働となったコナミのアーケード用アクションゲーム『悪魔城ドラキュラ』(アーケード版)。ファミコンディスクシステムで産声を上げた作品がアーケードの舞台に立つという快挙を成し遂げた本作、一部では神格化している意見もお聞きするのですが、ぶっちゃけ、俺は大失敗作だと思っています。思ってはいるのですが、すべてがダメなわけではなく、レトロゲームとして今ふり返ることで見えてくる魅力もあるとも思っている作品です。レビューというのは、悪いことを書くこともあるものですし、それは書き手が魅力を感じる素養がなかっただけの話ですので、「違うぞ!」と思われる方はコメントでぜひともご意見をいただきたいと思っています。
そんなわけで前置きが長くなりましたが、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を掘り起こしてみよう――。
『悪魔城ドラキュラ』(アーケード版)とは

ひと言でいうと、ファミコンディスクシステムで発売された初代『悪魔城ドラキュラ』の設定や世界観をベースにアーケード用にゲームを再構築して新しいドラキュラを作ろうと試みたものの、ディスクシステム版の呪縛とアーケードゲームの宿命という重き十字架に押しつぶされてしまった『悪魔城ドラキュラ』と、俺は感じています。
主人公は、ディスクシステム版『悪魔城ドラキュラ』と同じシモン・ベルモンドです。ムチを武器に使うところも同じですが、武器はパワーアップしていき、最終的に使うのは「剣」。サブウェポンも「ブーメラン」「爆弾」と『悪魔城ドラキュラ』っぽくありません。サブウェポンはハートを使って使用するのですが、ハートはロウソクを破壊して収集するのではなく、敵を倒した時に出現するものを取っていくスタイルに。このように、見た目はディスクシステム版に似ているのですが、中身は結構異なります。
俺がこの作品を大失敗作とこき下ろす理由は、純粋に面白くないからです。このゲームからは「何をもってプレーヤーに面白いと思わせるのか?」が感じられません。
例えば、ディスクシステム版『悪魔城ドラキュラ』は悪魔城の先に進めることが楽しいように設計されており、シモンの進撃を阻む敵やギミックの突破方法は思いついて実行していくプロセスが面白い作品です。では、本作はどうか。基本的にはディスクシステム版と同じ文法で作られているように見えるのですが、先に進むためにはかなり作業的な操作を強いられ、先に進んでもそんなに面白いと感じられません。なぜか。それは、求められる作業をすればカンタンに先に進めてしまうし、進んだ先で待ち構えているステージや敵や演出がきわめて凡庸なため、「ほう…」くらいしか感想が出てこないのです。
グラフィックは当時としてはすごく綺麗なのですが、使いかたがあまり上手くなくてもったいない感じになっているし。ステージ内の演出もいろいろ挑戦しているのですが、「こう来たか!」と驚かせてくれるものはなく、むしろ「なんでこれを採用したの?」と思えるものばかり。これを言ったらお終いでもあるのですが、ゲーム全体的にセンスが悪いんですよ。
ただし、このアーケード版『悪魔城ドラキュラ』は制作するのが難しかったことも理解できるのです。そもそも『悪魔城ドラキュラ』はコンシューマ向けの作品であり、ライフ制、残機制、コンティニュー制であることが前提で、何度倒れても無限に立ち向かっていくプレイスタイルのゲームです。ところが、アーケードゲームの場合は、インカムという「お金をいかに稼ぐか?」という発想が求められます。1コインで遊ばせすぎてはいけない。遊ばせなさすぎてもいけない。コンシューマでの文法がそのまま通じないわけです。ゆえに、アーケードゲームとしての『悪魔城ドラキュラ』の新しい楽しませ方(ゲームバランスなどを含めて)を設計しないといけなかったと思うのですが、この解答が見つからないまま、従来のアーケードゲームの文法で作ってしまい、また、80年代のコナミのアーケード作品でたまに見る大雑把な作りが悪いカタチで出てしまったのかなーと、俺は思っています。
ただし、音楽はすごくいいんですよ。名曲揃いです。この作品で埋もらせてしまうにはもったいないものばかりであり、後年、別の作品に使用されるようになって日の目を見た曲が何曲かあります。かなり主観が入っているのですが、アーケード版『悪魔城ドラキュラ』はこんな感じのゲームでした。
『悪魔城ドラキュラ』(アーケード版)のストーリー

邪教徒達の血の儀式によって、闇の魔王ドラキュラ伯爵が100年の眠りから蘇った。ドラキュラ伯爵は、教会の屋根に備え付けられている十字架に稲妻を落とし、聖なる加護を破ると協会に襲撃。その教会で行われていた結婚式の花嫁セレナをさらってしまう。花嫁をさらわれた青年シモンは、セレナを救うためドラキュラの棲む悪魔城へと向かうのだった。
『悪魔城ドラキュラ』(アーケード版)の魅力

俺が感じる『悪魔城ドラキュラ』(アーケード版)の魅力は、ディスクシステム版の設定や世界観をベースに再構築した新しい『悪魔城ドラキュラ』というところだと思います。
「婚約者がドラキュラにさらわれる」という点も、もともとはディスクシステム版にあった設定だと聞きます。ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』でも、主人公の婚約者(妻)が襲われるという展開があり、彼女を助けるために主人公ジョナサン・ハーカーが奮闘するという構成は、『悪魔城ドラキュラ』にも受け継がれている要素ですね。
少し話は変わりますが、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』は面白いので興味を持った方はぜひ一度読んでみてください。また、その小説の映像化をした1992年版『ドラキュラ』は、フランシス・フォード・コッポラがメガホンを取り、ゲイリー・オールドマンがドラキュラ伯爵、キアヌ・リーブスがジョナサン・ハーカー、彼の奥さんであるミナをウィナノ・ライダー、ベルシング教授をアンソニー・ホプキンスが演じている豪華さに加え、ヴァンパイアの背徳的な美しさがとてもきれいに描かれているので、こちらも興味がある方はぜひ見てみてください。
で、ここからは俺の推測になるので、そういう前提で読んでいただきたいのですが、
ディスクシステム版『悪魔城ドラキュラ』はドラキュラ小説(もしくは映画)から着想を得ており、あの世界観のゲームを作りたかった。しかし、ハードの制約やゲームデザインを考慮してホラーアクションゲームとしてのディスクシステム版『悪魔城ドラキュラ』が生まれる。その制作過程では本当は取り入れたかった要素がたくさんあったが削ぎ落とすことになった。以降、3作目の『悪魔城伝説』のゲームデザインを見れば分かるが、ディスクシステム版が『悪魔城ドラキュラ』というゲームのベースデザインとなっていく。本作は、その分岐に戻り、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』らしさを出した新しい『悪魔城ドラキュラ』を目指した。そんなふうに俺は考えています。
つまりそれって、ディスクシステム版第二作目の『ドラキュラII 呪いの封印』に通じる制作スタンスでもあるんですね。
吸血鬼を題材で扱う以上、昼→夜への時間経過は欠かせません。「奴らの時間が来る…!」という絶望。また、それは同時に人間の住む世界から魔の支配する世界に足を踏み入れる恐怖もあるわけです。こういった要素は、『ドラキュラII 呪いの封印』でゲームシステムに取り入れられていたのですが、実は本作アーケード版『悪魔城ドラキュラ』でも、背景の変化といった演出で描かれています。そういう意味では『ドラキュラII 呪いの封印』とアーケード版『悪魔城ドラキュラ』は同じものを目指した兄弟作とも言えるかもしれません。
残念なのは、両作ともその工夫点がいい感じに昇華しきれていないということです。
ステージ1の夕焼けに彩られたトランシルバニアが少しずつ暗闇に染まっていく背景の変化を際立たせたいのならば、ステージ途中の雨の演出や地面が炎に包まれる演出に必要性を感じません。BGMの「十字架を胸に」はいい曲ですが、その曲を一度止めてても演出を強化するべきだったのではないでしょうか。同年11月より稼働されるナムコの『スプラッターハウス』は、この点がとてもよく出来た作品でした。少し話がズレてしまいましたが、このように考えていくと、ディスクシステム版『悪魔城ドラキュラ』ではできなかったことをやろうとしている、本作アーケード版『悪魔城ドラキュラ』の魅力が見えてくる気がします。
レトロゲームとしての『悪魔城ドラキュラ』(アーケード版)

本作は、もともと稼働数が少なく、俺にとっては長年「幻の作品」でした。PS2のオレたちゲーセン族シリーズで復刻され、近年ではアーケードアーカイブスシリーズでもリリースされたことで脚光を浴びたのは嬉しいことです。
この作品自体の出来は決して良いものではなく、コナミ社内での評価も高くなかったらしく、電波新聞社がこの作品のX68000への移植を打診した時も、話をはぐらかされてしまったそう。実はその裏では、名作X68000版『悪魔城ドラキュラ』が作られていたというお話もあります。
また、本作で使用されたBGMや、本作で登場したモンスターや演出は、カタチを変えて後の作品に受け継がれている点も見逃せません。レトロゲームの楽しみかたは、ただ昔のゲームをプレイするだけではなく、その時代に何を目指した作品なのか、その挑戦の結果はどうだったのか、その経験はどこに引き継がれたのかを探っていく楽しみかたもあります。失敗した挑戦作からこそ、得られる情報は多かったりするものなので、悪魔城ドラキュラシリーズに興味をお持ちの方ならば、前後の作品とともにプレイしてみてはいかがでしょうか。
関連記事












この作品で遊ぶ方法

現行機で手軽に遊ぶには、ダウンロード専用の『アーケードクラシックス アニバーサリーコレクション』がオススメです。PS4、Xbox ONE、steam、ニンテンドースイッチ版があるので、お好きな環境でお楽しみください!
また、下記のような方法で遊ぶことも可能です。
みなさんの思い出
▼みなさんの思い出募集!▼
『レトロゲームレイダース 最後のゲー戦』は、管理人の感想を発表しているゲームブログですが、それは作品の感想の一面でしかないと思っており、みなさんの感想も集まることで、多面的な作品の魅力が見えてくると考えています。そのため、みなさんの思い出を募集しています。コメント欄に書き込んでいただいた内容は、随時、こちらの記事のほうに反映してきますね!
■グリーンヒルさん
確かにアーケード版のドラキュラは色々と残念な点も多かったですね。プレイヤーの動きがちょっと重たいので、思ったよりも敵の攻撃が避けられないうえに、ボスの攻撃も回避が厳しい攻撃が多くあった覚えがあります。それから、時間停止のアイテムがボスにも効果があるので、これさえあれば簡単なゲームになってしまうというバランスの悪さも問題だと思いました。ただ、BGMはちゃんと悪魔城しているので、それだけは救いでした。そして、このゲームの中で個人的にどうしても受け入れられなかったのがムチの振り方です。なぜ、ファミコン版や他のドラキュラシリーズの様にムチを後ろに大きく振りかぶってから振り下ろさないのでしょう?あの振り方がカッコ悪すぎて、やる気を削がれるのは私だけでしょうか?

ブログランキングに登録しています。この記事を読んで「面白い!」「応援したい!」と思ってくださった方は、下記の2つのバナーをそれぞれクリック(外窓が開きます)してくださると、更新がんばる気が湧いてくるのでうれしいです!







=注意=
この記事に使われているゲーム画面やゲーム音楽の著作権はすべて権利者にあります。当ブログは権利者の温情によって使わせていただいている立場ですので、権利者から削除要請があった際には迅速に対応いたします。