【レトロゲームと俺物語】『大魔界村』と、『サイコソルジャー』と、『フェリオス』と、駄菓子屋ゲーセンの話。

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俺が『大魔界村』と出会ったのは、1989年の春だったと記憶しています。当時、地元からちょっと電車に乗ったところにあったボーリング場兼映画館という施設には巨大ゲームコーナーがあって、そこは今でいうゲームセンターの『ウェアハウス』やパチンコ店の『MARUHAN』のような真っ赤なカーペットが敷かれているリッチな娯楽空間でした。そこに『大魔界村』があったのです。

初めて見た時、雷をくらったような衝撃を受けました。あのアーサーが黄金の鎧を着て、魔力をチャージして雷の魔法を放っていたのですから。『魔界村』は肌に合わないゲームでした。先に進んでも敵の攻撃が激しくなるだけで、油断を刷れば一瞬で死ぬ。100円が消える。当時の俺には面白さがさっぱり分からないゲームだったんですね。しかし、『大魔界村』はかなり違いました。難易度が高いのは変わらないけれども、ステージの先に進むにつれて、ありえない世界観が広がっていきます。

墓場に無数に並ぶギロチン台。吹きすさぶ豪雨。地面から生えてくる根。森の向こうに見える遠雷。自分の首を取って襲いかかる巨人シールダー。坂の多い廃墟の街。建物の中に巣くうアリジゴク。炎を回す風車。骸骨の山で待ち構えるレッドアリーマー。地響きとともに浮き沈みする大地。炎に包まれた街。地獄の番犬ケルベロス。塔を上昇していくエレベーター。悪魔の舌をわたっていく空中戦…などなど。

こんなの見たことがない!まさに「大」魔界村の名に恥じない内容に、ゲーム少年だった俺は歓喜したのでした。

ところが、俺の地元は田舎だったため、ゲームセンターがありません。『大魔界村』はたまに行くく大きな町のボーリング場兼映画館という施設に行った時にしか見られない&遊べない高嶺の花だったのです。

電車代の捻出に悩んだ俺は、20キロ近い道のりを自転車で半日かけて大きな町まで行き、ボーリング場兼映画館という施設に『大魔界村』をプレイしに行ったのでした。バカですね。しかし、そんなある日。俺は例のボーリング場兼映画館という施設で、やばいゲームとの出会いを果たします。それが『サイコソルジャー』と『フェリオス』でした。

『サイコソルジャー』は、SNKがリリースした横スクロールアクションゲームで、主人公である超能力少女麻宮アテナを操り、太古の眠りから目覚めた異種生物・屍愚魔の軍団と戦うというもの。カプコンの『SON SON』が派手になった感じのゲームなのですが、なんとこのゲーム、歌うのです。

ファミコン版『アテナ』についてきたカセットテープに収録されていた謎の歌はこれだったのか!?と驚きました。そして、荒廃した街をセーラー服の超能力少女が戦い続けるという世界観、聞いているうちにクセになってくる清水香織さんの『サイコソルジャーの歌』が、『ドラえもん のび太の鉄人兵団』でリルルが荒廃した街でのび太に「弱虫!」となじるシーンで感じた疼きと似たようなものを感じ、プレイせずにはいられなくなるのでした。

『フェリオス』は、ナムコがリリースした縦スクロールシユーティングゲームで、天馬ペガサスに乗った主人公アポロンがデュポンにさらわれたアルテミスを助けるために奮闘するというもの。システムIIの拡大・縮小・回転機能を使い、各ステージをドラマチックに演出したゲームで、ステージ3以降にパワーダウンも感じるものの、なかなか面白いゲームです。このゲーム、なにがやばいかというと、ステージクリアのたびにさらわれているアルテミスの現在の状態が表示されるのですが、ステージ1から両ワキ見せのセクシーポーズなんですね。

ここの姿を見た思春期の俺は、脳の中の何かのトリガーとなり、以後、両ワキ見せをしてくる女の子を見ると異常なほどの情欲を感じてしまうことになります。また、アルテミスですが、結構、胸があってですね。その胸の膨らみと大きさに、昔、鬼怒川温泉に行った時に駅で販売していた温泉ヌードテレフォンカードを思い出し、こちらもプレイせずにはいられなくなるのでした。

胸に湧き起こるよくわからない情動に駆られ、『大魔界村』と『サイコソルジャー』と『フェリオス』のことばかり考え続ける日々。しかし、20キロ先にある大きな町には毎日行くわけにはいきません。どうしたものかと思っていた俺は、当時所属していた科学部の先輩から耳寄りな情報を聞くことになります。

「『大魔界村』なら、〇〇の駄菓子屋で稼働していたぞ」

〇〇というのは、俺が通っていた学校から1キロくらい言った先にある地名で、チト遠いけど、自転車だったら余裕で通えるエリアでした。『大魔界村』だけでもあればいい。そう思った俺は、放課後、先輩から聞いた駄菓子屋にさっそく向かったのでした。

その駄菓子屋は、古い木造の佇まいで、入口にはコラコーラやスプライトやフアンタの瓶が縦に収納されている自販機が置いてあり、中は小さい照明がポツリポツリと付いていて薄暗く、平台にたくさんの駄菓子が並べられているお店でした。そして店の奥に、いくつものテーブル筐体が並び、そこから複数のゲームミュージックが聞こえてきます。なんともいえないアングラな感じがたまらない空間でした。

そんな聞こえてくるゲームミュージックの中に、「サイコソルジャー」というかけ声を聞き、俺は足早に奥のテーブル筐体スペースに行きました。そこには12台くらいのテーブル筐体が並んでおり、その1つに『サイコソルジャー』があったのです。

「『大魔界村』だけじゃなくて『サイコソルジャー』もあるのか!」

さらに俺の耳は、「アポロン、私はデュポンの神殿にいるわ」という声も聞きました。そう、この駄菓子屋ゲーセンには、俺の大好きな『大魔界村』と『サイコソルジャー』と『フェリオス』があったのです。天国でした。

かくして、俺は塾のない日はほとんどその駄菓子屋ゲーセンに通うこととなります。駄菓子屋ゲーセンのゲームはすべて50円でした。両替機がなかったので、店番をしているおばあちゃんに「両替お願いします」と頼んで、50円玉を手に入れるという方式です。俺は足しげく通い続けたので、そのおばあちゃんと顔見知りに、結構仲良くなりました。

俺は学校のゲーム友達を連れて放課後にその駄菓子屋ゲーセンに行き、みんなで駄菓子を食べ、スプライトを飲み、遊びに来ていた小学生とゲーム対決をして遊んだりしていました。おばあちゃんとも世間話する仲になっていて、「他のゲームは入れ替えてもいいけど、『大魔界村』と『サイコソルジャー』と『フェリオス』だけは替えないで!」とお願いしたり。「わかった、わかった」と笑うおばあちゃんは約束を守ってくれて、『大魔界村』と『サイコソルジャー』と『フェリオス』はずっと残してくれていました。

長いこと通っていた気がしますが、実際は1年くらいだった気がします。高校を受験を控え、勉強が忙しくなってくると、俺は駄菓子屋ゲーセンから足が遠のくようになってしまったのです。季節は変わり3月に。なんとか高校に合格した俺は、ひさしぶりに駄菓子屋ゲーセンに顔を出しました。

「おばあちゃん、おひさしぶりです」
「おお、ひさしぶりだねぇ、元気だったかい」
「ようやく受験も終わったからさ、遊びに来たよ」
「試験はどうだったんだい」
「志望校に合格できたよ」
「おめでとう、よかったね、コレ、お祝いにあげようね」
「ありがとう」

ひさしぶりにきた駄菓子屋ゲーセンは、かつての活況をなくしていました。いつも見ていた子どもたちの姿は見えなくなっていたし、駄菓子の販売スペースは2/3ほどに縮小しており、テーブル筐体の数も減っていました。

「おばあちゃん、お店、どうしたの?」
「お客さんの数が以前より減ってきてね、お店をやめるかもしれない」
「えっ、そうなの?」
「まだ、どうするか決めていないんだけどね」
「そうなんだ」

以前、おばあちゃんは語ってくれました。もともとは生活必需品を売っている商店として開業したけど、食品スーパーが建つようになってからは、子ども向けの駄菓子屋に転向した。旦那さんが亡くなってからは、お店に集まってくる子どもたちの笑顔が活力になっていて、子どもの笑顔を見るためにお店をやっているようなものとのこと。子どもが以前ほど来なくなったせいか、おばあちゃんは寂しそうに見えた。

「できるかぎり、遊びに来るからね」
「ありがとう、いつでも待っているよ」

そんな他愛もない会話が最後になりました。

その後、他県の進学校に進んだ俺は、なかなか地元の駄菓子屋ゲーセンに行く時間が作れず、高校1年の夏休みになって、ようやく「あっ、あの駄菓子屋ゲーセンに行こう」と思い立ちました。

店の前まで来ると、駄菓子屋ゲーセンはシャッターがおりていました。店休日ではないはずです。シャッターの1つは半開きになっていて、中から一人のおじさんが出てきました。

「あの、お店、やめちゃったんですか?」
「そうだよ、ごめんね」
「お店のおばあちゃんはお元気なんですか」
「母は入院したんだ、だからもうお店はつづけられなくてね」

そのおじさんはおばあちゃんの息子さんだったのかもしれない。おじさんはシャッターをしめて、車に乗るとどこかに行ってしまった。馴染みの店の閉じたシャッターを見ると、なんだかとても寂しい気持ちになってきて、俺は店の前に並んでいる自販機で炭酸飲料を買った。

しばらくして、ふたたび駄菓子屋ゲーセンに行くと、あの古い木造の店は壊され、コンビニエンスストアになっていました。セブン-イレブンでもなく、ローソンでもなく、ファミリーマートでもない、聞いたことがないコンビニ。カウンターで働く人たちを見たけど、あのおばあちゃんの姿はありませんでした。

駄菓子屋ゲーセンには、そんなさびしい思い出があります。

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