【名作発掘】『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』――少年は偉大なる父の背中を追いつづけ、そして追い越していく!勇者ロトをめぐる最後の物語!

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こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘した作品は、1988年2月にエニックス発売されたファミコン用ロールプレイングゲーム『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』。ドラゴンクエストシリーズナンパリングタイトルの3作目であり、勇者ロト3部作といわれているシリーズの完結編となります。「名作!」として挙げられることが多い本作のどんなところが名作なのか、俺なりの解釈を語っていきたいと思います。

さあ、今宵も、歴史に埋もれしレトロゲームの魅力を掘り起こしていこう――。

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』とは

『ドラゴンクエスト』と『ドラゴンクエストII』の記事の時にも語りましたが、初期のドラゴンクエストシリーズは、1980年代にパソコンで人気だったコンピュータロールプレイングゲームという大人向けジャンルの面白さを、ファミコンで遊ぶ子供たちに伝えることを目的としていました。そのため、初期のドラゴンクエストシリーズはコンピュータRPGの見本というか、翻訳のような意味合い・役割があり、『ドラゴンクエスト』は超入門編として移動と成長がある『ポートピア連続殺人事件』のようなアドベンチャー的なアプローチを行ない、『ドラゴンクエストII』ではパーティ制と世界を探索するというフィールド型RPGの面白さを伝えてきたという流れがあります。

そして3作目である『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』では、いよいよキャラクターメイキングによるパーティ編成による冒険という『ウルティマ』や『ウィザードリィ』といった古典名作コンピュータRPGの醍醐味を伝える段階にシフトしていきます。

ここで大切なのは、『ドラゴンクエスト』という作品は「ドラゴンクエストという物語を作りたい」として作られたものではなく、「コンピュータロールプレイングゲームの面白さを分かりやすく伝えたい」という目的から作られていたということ。

「ドラゴンクエスト=やさしい、とっつきやすい」というイメージはここから生まれていると推測されます。また、ドラゴンクエストのヒット以降、ファミコンではドラクエクローンというべきドラクエによく似たRPGが氾濫するわけですが、それはファミコン時代のドラゴンクエストシリーズが、コンピュータロールプレイングゲームの面白さを伝えることに成功したモデルだったからこそ、各社がこぞってお手本にしたのではないかと俺は推測しています。
 

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舞台は、過去作に一度も名前が出てこなかったアリアハンという国。倒すべき敵も、初めて聞く魔王バラモス。まったく新しい世界でプレーヤーの分身である勇者と、ルイーダの酒場で出会った(キャラクターメイキングした)仲間たちと魔王討伐に向けた大冒険をくり広げるゲームが、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』です。

ところが、中盤のある展開から過去作に出てきたアレフガルドの存在が明らかとなり、既視感のあるアレフガルドの旅が『ドラゴンクエスト』『ドラゴンクエストII』で語られてきたこととリンクし、エンディングでアレフガルド王から授けられる称号によって、このゲームのサブタイトル「そして伝説へ」の意味が分かります。時系列的なミッシングリンクの補完によって円環がなされ、『ドラゴンクエスト』『ドラゴンクエストII』『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』のプレイの記憶がよみがえってきてグッとくるという仕掛けが施されているという、控えめに言ってすごい作品でした。

発売当初のキャッチコピーは「触れたら最後、日本全土がハルマゲドン」。まったくもって意味不明ですが、ラストの展開を体験すると「たしかに!」と妙に納得してしまった記憶があります。

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』のストーリー

その昔、アリアハン国は世界中を治めておりました。しかし、大きな戦争が起り、国は分裂してアリアハンも、今では小さな国…。その戦いののち、アリアハンの勇敢なる戦士オルテガは、火山に落ちて、その命を絶ったと伝えられています。そして今、国王の待つ城へと向かう、ひとりの若者の姿があります。この者こそ、あの勇士オルテガの息子だったのです…!亡き父のあとを継ぎ、冒険の旅に出るという若者に、国王は重大な任務を命じました。それは闇の国より現れた魔王バラモスを倒すこと…。世界中の人々は、まだバラモスの名さえも知りません。しかし、このままでは世界は、滅されてしまうのです。アリアハンの若き勇者、それがあなたです。さあ、仲間を集め、魔王バラモスを倒すべく、立ちあがってください!こうして、あなたの冒険の旅がはじまったのです…!!

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』の魅力

本作の魅力は、6つの職業と2つの性別から選べて自分で名前を付けられるキャラクターメイキングと、そのキャラクターのパーティ編成による冒険の楽しさでしょう。

本作は、ゲームスタート時から4人パーティで冒険ができます。仲間が1人ずつ増えていく前作『ドラゴンクエストII』とは大きく違うところです。いや、正確に言えば、パーティを組まずに旅に出ることも可能ですし、3人パーティや2人パーティで旅に出ることも自由。もちろん、どのように旅をするかで難易度は変わります。パーティ編成に自由があるのに対し、ゲーム進行は途中までほぼ一方通行です。制限こそされていませんが、回っていく町やダンジョンの順番は中盤までほぼ固定されています。なぜか。それは、キャラクターメイキングとパーティ編成による“変化”を楽しむことにプレーヤーを集中させたいからだと推測されます。

ドラゴンクエストシリーズの面白さの神髄は、「プレーヤーによって生み出されるドラマ」です。与えられたマップやモンスター、それに挑むパーティといった要素の中で偶発的に生まれるピンチやチャンスといった体験がプレーヤーにとってオリジナルのドラマになる。このような信念がゲームデザインの中にあると俺は思っていて、ストーリーも世界設定も堀井雄二さんにとっては化学反応を起こすための添え物に過ぎないのでしょう。このように考えていくと、本作は前作の最大の面白さであった「探求」をあっさりと捨てていることも頷けます。前作『ドラゴンクエストII』にあった「ほとんどヒントがない中で世界中を歩いて探す」という要素がありません。見つけなければならないものについてはきちんとヒントがあり、遠方まで探しに行くというリスクが軽減されるかのような一度行った町や村はルーラやキメラの翼で戻れるという仕様にもなっています。なぜか。探す楽しさではなく、パーティ編成による“変化”を楽しむようにゲームデザインされているからです。

スタンダードなパーティ編成は、「勇者・戦士・僧侶・魔法使い」でしょう。武器防具にお金をかけたくないなら「勇者・武闘家・僧侶・魔法使い」という手もあります。しかし、序盤はいいのですが、敵の攻撃が激しくなってくる後半、装備できる防具が少ない武闘家は厳しいです。「勇者・戦士・商人・僧侶」という編成だと肉弾戦がメインになりますが、装備にお金がかかる戦士のフォローを取得ゴールドが多い商人がサポートしていい感じ。「勇者・戦士・魔法使い・魔法使い」はダンジョン探索は難しくなりますが、攻撃呪文の波状攻撃により戦闘が早く終わり、効率のいい経験値稼ぎができます。このようにパーティメンバーの組み合わせによって、攻略方法は変わり、苦戦するポイントも変わってくるのです。プレーヤーの分身である主人公・勇者がオールラウンダー的性能なのは、パーティ編成によって、攻撃役にも、回復薬にも、魔法攻撃役にもなれる措置なんですね。救済処置と思われがちですが、ダーマ神殿による転職や遊び人による第7の職業「賢者」への転職もパーティ編成による“変化”を作るためのもの。商人の離脱による新しい町づくりもパーティ編成による“変化”を作るためということが見えてきます。

興味深いところは、パーティ編成による“変化”をゲームデザインの中心に置いているということは、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』は周回プレイ、一度ゲームをクリアし終わったらパーティ編成を変えてもう一回プレイすることを想定していることですね。これは、「探求」という一度目のプレイが一番面白い前作『ドラゴンクエストII』を受けた本作が目指した「前作越えの回答」だと思います。

エンディングで大魔王討伐を祝う宴の最中、「その後、主人公の姿を見た者はいない」という表示がされますよね。これは『ロトの紋章』とかを無視して個人的な解釈をぶち上げると、俺は「やり直すために時をさかのぼった(周回プレイをしに行った)」というのが一番しっくりしています。なぜなら、主人公とはプレーヤー自身であり、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』とは周回プレイを前提としたゲームだからです。これを読んでいるあなたが、本作をプレイし終わった後にもう一度パーティを組みかえてプレイし直した経験があるなら、俺の解釈も大きくハズレていないのではないでしょうか(笑)。『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』のタイムリープの元ネタは本作にあるんじゃないかとまで思っています。

本作が周回プレイを想定して作られていると考えると、ほぼ一本道のゲーム展開にも意味が出てきます。2回目以降、次はどういうダンジョンがあって、どういう敵が出てくるということが分かっていたほうが、対策を練ることができるからです。もっと言えば、次に何があるか分かっていても、パーティ編成が前回と違っていたら同じ展開にはならないため何度でも楽しめるわけで。このようなところが『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』の懐の深さであり、名作と言われる所以なのではないでしょうか。

「ほぼ一本道の物語」という言葉にはネガティブな印象が付きまとうものですが、本作の場合はそこにも意味が付けられています。それは、「子どもが父の背中を追う物語」として成立している点です。

主人公は父オルテガが成し得なかった魔王バラモス討伐を果たすために、父が歩んだ道を辿っていきます。子が親の後を辿っていくというのは、主人公にとってこの旅は、ほとんど家に帰ってこなかった父親を理解する旅でもあったわけです。やがて父が討ち死にしたといわれる地点を主人公は越えていくわけですが、なんと父は死んでおらず、主人公たちのさらに先を進んでいることが分かります。偉大なる父は、まだ先を行くのか。そして最後の最後で、主人公は父に追いつき、残念なことに父オルテガは死んでしまうのですが、主人公は父の思いを受け継ぎ、父を超えて大魔王と挑むわけです。過剰な演出がまったくされていないので気が付かない人も多いのですが、めちゃくちゃアツくないですか、この展開!

このことを踏まえて、フィールドBGMに注目してください。曲名である「冒険の旅」、そしてあのメロディに別の意味が感じられてきませんか。「名作」といわれる作品には、時代を超えて人々の心に響くものがあると言います。子ども時代に感じたこととは違うものを、大人になってから感じられるといった二重構造になっていたりするのですが、まさに『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』はそういうゲームなのかもしれませんね。

レトロゲームとしての『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』は、ナンバリングタイトルの中では異質な存在だと思います。まず、冒険する舞台が俺たちが住んでいる世界に(地形的に)そっくりという点ですね。それに伴い、出現するモンスターも俺たちの世界にいる動物が巨大化したデザインのものが多く、本作以降、登場していないモンスターも結構います(正式に数えていないので印象で話していますが)。

これは、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』の最大の仕掛けである『はてしない物語』(ネバーエンディングストーリーの原作)的な仕掛け、「実はゲームをプレイしているプレーヤー自身が、これまでシリーズ内で何度も語られてきた勇者ロト本人だった」を実現するための重要な構成要素の1つという面もあります。ファミコンとカセットというアイテムを使って、ここではないどこかの世界にゲームプレーヤーが転生・転移してその世界を救う。この構造を成立させているのが、ファミコン版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』なのです。

なので、リアルタイムで『ドラゴンクエスト』『ドラゴンクエストII』『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』をプレイしてきた人たちがファミコンの名作として「ドラクエIII」を挙げる熱量が、リアルプレイでプレイしていない人に比べて高すぎる理由がここにあると俺は思っていて。『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』の仕掛けは、『はてしない物語』とか当時のアニメで使われていた異世界転移者大活躍モノのグッとくるポイントの焼き直しではあるものの、それを知らない子どもたちにドカーンをぶつけたということが、つかむべくしてハートをつかんだというか、それ込みで「すごい作品」だったわけです。

そんな仕掛けがあるドラクエなんて他のナンバリングタイトルにはありませんから、やっぱりファミコン版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』って異端であり、特別だったんだなということが、今プレイし直して分析してみるとよく分かりますね(笑)。

この記事が、あなたが『ドラゴンクエストIII そして伝説へ』にふれてみる機会、もう一度プレイしてみる機会になれば幸いです。

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