【名作発掘】『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(スーパーファミコン)――これぞ生き物のサガ!人間の光と闇を描いた、夢と現実とその間をかける冒険へようこそ!

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こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘した作品は、1995年12月にエニックスより発売されたスーパーファミコン用RPG『ドラゴンクエストVI 幻の大地』。今日まで続くドラゴンクエストシリーズ6作目であり、第二期「天空編」の完結編にあたる作品です。個人的には、シリーズ最高傑作だと思っています。

さあ、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を掘り起こしていこう――。

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(スーパーファミコン)とは

これまでシリーズの開発を担当していたチュンソフトが抜け、ハートビート開発となったドラゴンクエストの1作目であり、堀井雄二さんがシナリオやゲームデザインを主に一人で手がけていた最後のドラゴンクエストであり、鳥山明先生のアナログ画法時代の最後のドラゴンクエストであり、FF5にシステムとグラフィックで大きく負けたリベンジ作品でもあるドラゴンクエストだったのかな、と思います。

『ドラゴンクエスト』は、日本国内の家庭用ゲーム機におけるRPGのパイオニアだったこともあり、王道といわれながらもこれまで我流を貫き続けてきたのですが、本作では周囲のゲームを意識して、グラフィックを強化したり、映画的演出を取り入れたり、呪文以外の攻撃方法を増やすといった、マーケティング的な一面が垣間見えます。しかし、ただ流行を取り入れるだけではなく、「さすが王者ドラクエ!」といえる、遊び甲斐のあるRPG作品に仕上げてきたところはさすがです。

当時ライバルであった『ファイナルファンタジー』シリーズの作り方はビジュアル重視で、ハリウッド映画のように先にイメージビジュアルを作ってからゲームのカタチを作っていくのに対し、『ドラゴンクエストVI』の作り方は文学的…という言いかたが正しいのか怪しいですが、ゲームとして体験させる物語として作っている点が大きな差だと思います。ゆえに、FFは見た目は派手だけど物語の中身がスカスカっぽい(主観です)のに対し、DQは物語の中身がずっしり重い(これも主観)。これは制作体制の違いも大きく影響しており、本作では堀井雄二さんという人間を構成しているいろいろな部分を結構がっつり詰め込んだからではないか?と俺は夢想しています。このあたりについては後でくわしく話しますね。

テーマは「探求」。物語が「自分探し」になっているだけではなく、これまでと同等のサイズの世界が2つあり、それを交互に行き来して、少ないヒントをもとに探していく楽しみ――近年のシリーズで失われつつあった探す楽しみを思い出させてくれる作品でもありました。

そんな光の部分だけでなく、作品内で描かれている人間模様は意味が分かると結構アダルティックであり、ブラックユーモア満載だったりと、闇な部分があるのも、実に面白かったと思います。そんな『ドラゴンクエストVI 幻の大地』の物語は、これまでのシリーズとはまったく違う展開からはじまります。

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(スーパーファミコン)のストーリー

どこかの森の奥。
一人の戦士と美しい少女が焚き火を囲んでいる。すると、森の中から巨漢の戦士が現れる。「どうやらあの城で間違いなさそうだ」。一同は頷くと、焚き火を消して森の奥に進んでいく。行き着いたのは断崖絶壁。「言い伝え通りなら…」と少女は魔法の気配を感じるオカリナを吹く。その音色があたりに響きわたり、一呼吸おくと、空から強風が降りてくる。いや、巨大な黄金の竜が舞い降りてきたのだ。竜はオカリナの持ち主を“主”と認め、その背中に一同は乗る。そして、竜は断崖絶壁の彼方、暗雲渦巻く魔王の城へと飛んでいくのだった。

世界は魔王ムドーの脅威にさらされていた。戦士たちは魔王と討つために、長い旅を経てここまでやってきたのだ。不気味な城の抜け、魔王の間にたどり着く一同。しかし、突入した部屋は不思議な空間となっていた。魔王の罠だったのだ。嘲笑する魔王により、仲間たちが次々とやられていき、ついに最後の戦士も魔王の手にかかって…。

そこで目が覚める主人公。寝相の悪さを妹のターニアに笑われる。ここは山奥の村ライフコッド。魔王の脅威とは無縁の平和な村。そこで妹と二人で暮らす主人公は、村長から麓の街に買い物を頼まれることに。それはたった数日で終わるお使いのはずだった。

しかし、世界の秘密の一端にふれた主人公は、世界の謎に挑む果てしない冒険の旅に出ることになってしまうのでした。

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(スーパーファミコン)の魅力

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』の主人公は、大地に巨大な穴があいており、大地の下にもう1つの世界が存在することを知ります。もう1つの世界は「幻の大地」と呼ばれているのだとか。その幻の大地に落ちてしまった主人公は、幻の世界が自分たちの住む世界とよく似ているけど少し違う世界であること、幻の大地こそが現実世界であり、自分たちの住む世界は世界中の人たちの夢によってつくられた幻の世界であること、そして自分自身も誰かの夢であることを知ります。運命のいたずらによって、本来なら行き来することができない「現実世界」と「夢の世界」を行き来する術(すべ)を手に入れた主人公は、大魔王がまったく想定していなかった“異物”であり、大魔王が消し去ったはずの脅威を再び手に入れることができる唯一の存在でもあったのでした。

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』の魅力は、心の強さ・弱さにフォーカスした物語にあると俺は思っています。

本作に出てくる「夢の世界」とは、世界中の人々が観ている夢の集合体です。「現実世界」では失ったものでも、人々の心に残っているものであれば、「夢の世界」では存在し続けているのです。ダーマ神殿、メダル王の城、魔法都市カルベローナといった大魔王に脅威と警戒された施設は、現実世界では滅ぼされてしまいますが、「夢の世界」では存在し続けている。人の夢は何者にも奪えないのです。もっともそのことを知った大魔王によって、4つの重要拠点は配下の魔王たちによって守られているんですけどね。このように書くと「夢の世界」は希望にあふれていると思われがちですが、光あるところにまた闇もあるもの。人間が負った心の傷、後悔や無念といった思いも「夢の世界」では生き続けています。

ゲーム序盤に出てくる村アモールの老婆の話が象徴的です。彼女は人生の大半を若いころにやらかしてしまったある「出来事」を後悔しつづけて生きてきました。「夢の世界」での彼女はいまだに若いころの姿で、その「出来事」をくり返し続けているのです。もう戻れない過去のことではあるものの、主人公たちは「夢の世界」でそのときに起こった真実をつきとめて夢の中の本人に教えてあげることで、「現実世界」の老婆は新しいものの見方ができるようになり、長年の後悔から解放されることになります。

分かりますか、これが『ドラゴンクエストVI 幻の大地』なんですよ。

一見すると、これまでのドラクエと変わらないように思えます。しかし、「夢の世界」という設定を作ったことで、人の心の光と闇に関わる物語を描くことができるようになり、おとぎ話の体裁を整えながら実際に語っていることはえげつない大人の残酷物語であるグリム童話のように、大人のプレイにも堪えられる深みのあるイベントが目白押しなのが、『ドラゴンクエストVI 幻の大地』なのです。

第一作目の『ドラゴンクエスト』が発売されたのが1986年、『ドラゴンクエストVI 幻の大地』は1995年、かつて小学生だったプレーヤーたちも大学生くらいになっている。そんなユーザーの成長に合わせて、分かる人には分かる大人びた物語になっているんですね。

これを踏まえて本作に出てくる登場人物たちに注目してみると、めちゃくちゃ面白いですよ。ここにはない楽園がきっとどこかにあると信じて利用される者、自分の愛を正当化する者、目的を見失って迷走する人、愛する者たちのために自分を犠牲にできる人、職務に忠実であるがゆえに自分を見失ってしまう人、情けない自分と向き合って道を拓く人…。いろんな人間が出てきます。なので、作風としては『魔界塔士サ・ガ』に通じるものがあるドラクエなんですね。

で、非常に面白いのが、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』で「神の子」のように描かれてきた「天空の勇者」は、実は「強い男になって人々を助けたい」と願った一人の気弱な青年の心の叫びとそのために行なってきた行動によって行き着いた力――という解釈がなされている点です。これは深い。すべては自分の心次第という大ドンデン返しは、個人的には「勇者ロト編」三部作よりも大人っぽいまとめかたで締めたな思いました。

あと、完全に余談ですが、若者が好きそうな「自分探し」に対して毒を吐いているようなところが本作にはあって。主人公は旅の果てに本当の自分と出会うのですが、本当の自分は情けなくて格好悪くて、そして弱い。何よりも本当の自分を見つけても何の解決にもならず、むしろそこからの道のりが大変という点は、俺らの世代からすると“大人”だった堀井雄二さんの「人生ってそういうものだよ」というメッセージを聞いた気がしました(笑)

レトロゲームとしての『ドラゴンクエストVI 幻の大地』

レトロゲームとして本作を楽しむにあたって、前述した通り、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』をプレイしておくと、「勇者の力の根源は、心の力」という本作のメッセージがより強く感じられるので面白いと思います。

あとは、本作は次回作である『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』と兄弟のような存在であり、「表」と「裏」のような存在である点も面白いですね。『ドラゴンクエストVI 幻の大地』は「あの頃、子どもだった君たちに、ちょっと背伸びした大人の物語をあげる」という作品なのに対して、『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』は「さらに大人になった君たちに、子どもの頃のワクワクを思い出してほしい」という作品なわけで。この対比は今、レトロゲームとして冷静にプレイするからこそ見えてくる面白さかもしれません。

そうそう。本作に出てくるテリーとミレーユの姉弟は、その関係性が物語の上での重要になってきます。残念ながら2人の運命は決して幸せなものではないこともあり、作品の中ではあまり語られないのですが、そんな2人の姉弟愛については、『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』で少しだけ語られています。大好きなお姉さんを見つけるために、タイジュの国のモンスターマスターになった少年テリーがモンスターを仲間にしながら異世界をめぐってミレーユを探すお話なのですが、プレイするとテリーがミレーユをどれだけ慕っていたかがよく分かるし、対比して本作ではどれだけ変わり果ててしまったのか(どれだけ辛い目に遭ってきたのか)がよく分かるので、興味のある方はこちらのプレイもどうぞ。

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