
こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘した作品は、エニックスが1992年9月にスーパーファミコン用RPGとして発売した『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』。ドラゴンクエストシリーズとしては初のスーパーファミコン作品であり、映画『ドラゴンクエスト YOUR STORY』の原案となっている作品でもあります。
映画『ドラゴンクエスト YOUR STORY』の公開によって、ふたたびスポットを浴びて再評価されていることは個人的に大変うれしいのですが、行き過ぎた礼賛が多くて「そこまで神作じゃねえだろ」という個人的な思いもあり、自分の中での 『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』 のゲームレビューを語ってみたいと思います。

ドラクエ5って、どんな作品?
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』という作品の大きな特長は、次の点だと思います。
(1)シリーズ初、モンスターを仲間にできる
(2)親子三代にわたるストーリー
(3)結婚という選択がある
ドラゴンクエストという作品は、パソコンで流行っていたRPGの面白さをファミコンで子どもたちに知ってもらうことを目的にしたシリーズであり、キャラクターメイキング&パーティプレイ&周回プレイまで実現した『ドラゴンクエトIII そして伝説へ』でひとまず役割を終えました。
しかし、超人気シリーズになってしまったがゆえに辞めるわれにも行かなくなり、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』からは、家庭用RPGを牽引するブランドとして家庭用RPGの新たな可能性を模索する実験作という傾向が強くなった、と俺は見ています。
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』では、RPGのプレイ時間の大半を占めているモンスターとの戦闘に着目。すでに、お約束となっており、マンネリにもなっているモンスターとの戦闘を、いつもと違うものに、いつもと違う達成感がある展開にするために、戦い終わった後、改心したモンスターが「仲間になりたそうにこっちを見ている」となって仲間になる。そして、戦闘では呪文とは違うモンスターならではの特殊攻撃で、いままでと違った戦闘になる。という新機軸を作り上げました。
これって、実はスゴイ大冒険です。なぜなら、これまでのドラゴンクエストの不文律をぶっ壊しているのですから。モンスターが仲間になるということは、パーティの編成がかなり入れ替わります。1軍、2軍みたいに馬車やモンスター牧場に待機させるわけですね。となると、武器・防具も仲間にしたモンスター分必要になるわけですから、それってイコール、お金も今までのシリーズ以上に必要になるわけで。つまるところ、今までのシリーズ以上にフィールドでモンスターと戦ってお金を稼ぐ必要があるってことで。そう、賢明なる読者の方はピン!と来たと思うのですが、不文律をぶっ壊しつつも仲間になるモンスター探しの戦闘とお金稼ぎの戦闘が両立するいいバランスになっているのです。
ちなみに、「動物に懐かれる」って人間の本能としてグッとくるじゃないですか。鳥山明先生の描くモンスターって、愛嬌があるじゃないですか。このリンクも計算されているわけです。大人になると、動物に癒されたい欲求が増えてきませんか。ゆえに、大人になってからのほうが、『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』とか、本作のゲームシステムから派生した『ドラゴンクエストモンスターズ』シリーズとかは、大人になってからのほうが面白く感じるんですよ。
ただ、このシステムには問題点があります。
モンスター収集に夢中になって、ゲームの進行が疎かになりかねないということです。「あー、もうずっとモンスターたちと旅を続けていたい」。そんな風に思われると、ゲームが停滞してしまうので。プレーヤーに「先に進めたい」と思わせる仕掛けが必要になってきます。それが、親子三代にわたるストーリーであり、結婚システムに連動するあの娘に会いたい演出なのです。
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』 は、シリーズの中でもストーリーが強めです。堀井雄二さんも「やりすぎたかも」と反省するくらい。ドラゴンクエストシリーズって主人公になりきってプレイしてほしいという思いの前提で作られているので、プレーヤーがゲーム内の主人公を客観視してほしくない。できればなりきって一体化してほしいわけで。つまり、ストーリーが強めの本作は、プレーヤーに主人公を客観視しやすい環境を作ってしまっているわけで、反省点ってここだと思うんですよね。
しかし、ストーリー性が強いからこそ、「故郷の街はどうなったかな?」「父さんが入っていった洞窟には何があるんだろう?」「あの子は元気にしているかな?」という思いがプレーヤーに湧き、旅を進めるための原動力になっているのです。
それは家族再生の物語
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の主人公は不幸です。生まれて間もなく、母親は魔物にさらわれてしまい、母親の愛情をほとんど知らずに育ちます。その分、父親のパパスは主人公に愛情を注いで育てますが、その父親もある事件によって志半ばで死んでしまいます。少年時代の大半を奴隷として暮らし、その生活から逃れることができたと思ったら、今度はモンスターと心を通わせられるという特異体質により迫害を受けることに。
そんな彼の理解者である奥さんと、親友と、古くから知っているおじさん、そして付いてきてくれたモンスターたちが、主人公の心のよりどころなのです。
俺には、一度は戦ったモンスターと和解して、次々とモンスターを仲間にしていく主人公の姿が、自分が幼少期に得られなかった”家族”を作ろうとしているようにしか見えません。
容姿や出自に偏見を持つことなく、愛情を持って受け入れていく。彼は母の愛情は知りません。でも、父の愛情は知っている。自分の子どもや仲間がピンチになったら、ホイミをかける。戦闘が終わったら「大丈夫か?」と声をかける。亡き父がしてくれたことを、今度は別の誰かにしてあげながら、自分の”家族”をつくっていくのが、 『ドラゴンクエストV』 という物語。そして、母の愛を知らない主人公をやさしく抱きしめてくれて愛を注いでくれる存在が、ヒロインである”天空の花嫁”なのです。
大人になった俺たちは、いろんな理由で、孤独を感じて生きています。孤独が心を攻撃的にしてしまっている一面もあるでしょう。その姿は、本作に登場するモンスターのようです。でも、たった1人でも、あなたのことを理解してくれる人、受け入れてくれる人がいれば、好きでもない攻撃性を棄てることができます。人間とはそういうものです。
人としてどう生きるべきか。たかがレトロゲームなのですが、大人になってからプレイすると、いろんな事情があってちょっと泣けてくる。 『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』は、そういうゲームな気がします。

みなさんの感想も聞かせてください
■2さわさん
母親も知らず、父親もゲームの途中死んでしまい、奴隷の身から始まるドラクエ5の主人公ほど、悲惨な設定はないと思っていますが、主人公に妻が出来、子供ができ、気が付けば、手なずけたモンスターに囲まれてゲームを進めていくのは、男が家庭を作って、家族を養い、家庭や職場でも自分の居場所がある、サラリーマンの物語と通じますね。
ジョーンズ:
そういう点で考えると、大人になってからプレイすると、また違った味わいのある作品なんですよね。ドラクエVって。
※こちらに追記していきます。


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