
こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
1992年4月7日に、ナムコからPCエンジン用アクションゲームとして発売された『源平討魔伝 巻ノ弐(かんのに)』。PCエンジンは最初はHuカードというカードメディアでソフト供給を行なっていて、後にCD-ROMへ移行していくのですが、本作はHuカードの後期に発売された作品であり、非常にていねいに作られている作品です。
さあ、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を掘り起こしていこう――。
『源平討魔伝 巻ノ弐』とは

『源平討魔伝』は、源平合戦の裏に隠された魔と亡者の戦いをアーケードの圧倒的なグラフィックで大胆に描いた作品でした。本作はその続編であるPCエンジンオリジナル作品です。レトロゲームを題材にした傑作マンガ『ハイスコアガール』でも、主人公のハルオに「この存在がPCエンジンユーザーであることに誇りを持たせたと言って過言じゃねえ」と言わしめた作品でもあります。
前作『源平討魔伝』が、横スクロールアクション、トップビューアクション、BIGモードアクションという3つのゲームモードを詰め込んだ作品だったのに対して、本作はBIGモードだけです。そのため、「規模が大幅に縮小された続編」という見られ方をされがちですが、それは違います。
駅弁で例えるならば、「幕の内弁当と先代牛タン弁当のどちらが美味しいか」を論じるようなもの。いろいろな食材の入っている幕の内弁当の方が豪華に見えますが、原材料費の多くを食材に費やした仙台牛タン弁当が劣る存在というわけではありません。いろいろな要素が入っていれば全体として華やかに見える反面、1つひとつの食材の質は落とさざるを得ませんし、何が美味しかったという印象が残りにくいもの。かたや、1つの要素に特化した場合は、食材の質にこだわれるとともに、味のインパクトを印象に残すことが可能でしょう。
何が言いたいのかというと、『源平討魔伝 巻ノ弐』はボリュームダウンしたのではなく、スポットの当て方を変えてより洗練された『源平討魔伝』と捉えるべきではないでしょうか。
『源平討魔伝 巻ノ弐』は、何を目指したのか?

前作『源平討魔伝』の特長の1つは、「和」の世界の表現でした。当時、『源平討魔伝』ほどかつて日本らしい原風景を描き込んだゲームはありませんでした。アーケードゲームだった『源平討魔伝』は、そのビジュアルインパクトで、ゲームセンターに訪れる人々を魅了したのです。そのもっともたる部分が、BIGモードでした。
BIGモードは、キャラクターが大きいことはもちろんのことですが、背景をしっかり見せることができました。前作『源平討魔伝』ではBIGモードは、「ここぞ!」というところで出現するステージだったわけですが、それをゲーム全編で展開するということは、『源平討魔伝 巻ノ弐』は前作で好評だった「和」の世界観を、全展開しようとしていたのではないかと推測されます。
もちろん、アーケード版同様の開発人員・開発環境があるわけではないので(外部のナウプロダクション開発)、戦力の分配を考えたときに3つモードを引き継ぐのは厳しかった(3つ別のゲームを作るようなもの)と思われますが、BIGモード1つに絞ったのは、なかなかの決断だったのではないでしょうか。背景の描き込みの他、キャラクターがデカいアクションゲームのバランス調整はかなりクセがありそうと予想されるからです。
しかし、その決断によって、『源平討魔伝 巻ノ弐』はその独特の世界観をプレーヤーに提供してくれたと思います。
実は、舞台は前作とは異なる世界

『源平討魔伝 巻ノ弐』は、『源平討魔伝』の続編ではありますが、別の世界の物語です。世界の名前は「魔界日本」。日本でありながら日本でない、並行世界です。そのため、今回はステージ付けられている地名も、日本にありそうで日本にはない地名となっています。
九焔山州 (くえん さんしゅう)
沙界四州 (さかい ししゅう)
京獄 (きょうごく)
麓仙州 (ろくせんしゅう)
機関八州 (からくり はっしゅう)
鎌倉腭 (かまくら あぎと)
なぜ、このような世界が舞台となっているかというと、前作で倒したはずの源頼朝の魂は消滅には至っておらず、次元の壁を越え、地下深くに位置するもう1つの日本「魔界日本」にて復活を遂げようとしていたからです。天帝の命を受けて、一度は永遠の眠りについた平景清は再び肉体を与えられ、頼朝の魂を今度こそ完全消滅させるために魔界日本に降り立つのでした。
オカルト寄りの話になりますが、並行世界に迷い込んだ人たちが「日本なのは間違いないんだけど、知りない地名や駅名が使われている」という話があります。大阪の飛田新地の小料理屋の建築様式は、大正時代から分岐したもう1つの昭和を経たような建物だったりします。漫画『夜叉鴉』では地獄とは現世のもっともひどい時代を模写して創られた異世界という描写があります。これらの話に通じる世界設定が、個人的には『源平討魔伝 巻ノ弐』のツボかなと思っています。
とにかく『源平討魔伝 巻ノ弐』の各ステージの背景は、知っている気がするけど知らない日本のおどろおどろしい美しさが満載なのです。ステレオタイプの地獄や魔界を描いているわけではないところが、ディモールト(最高)なんですよ。
天帝に利用される哀しき武士(もののふ)

主人公の平景清(たいらのかげきよ)は亡者です。壇ノ浦の合戦で討ち死にした平氏きっての剛の者といわれた武士でした。しかし、彼は天帝の手によって再び命を得ることとなります。その使命は、魔族と手を組んだ源氏の総大将・源頼朝(みなもとのよりとも)を倒すこと。三途の川の渡し守である安駄婆(あんだばあ)から「滅びし平家の恨み、忘れたわけではあるまいな」とけしかけられ、死してなお戦いに身を投じます。
ただし、別の見方をすれば、彼は天帝によっていいように利用されているのです。もし、彼が正義の使徒であるならば、あのような悪鬼羅刹のような顔にはならないはず。この世に恨みを残して死んだ者の怨念と生前の武のチカラを利用されている哀しき存在。亡者であるからして、死後硬直がはじまっていますから、身体の動きがギクシャクしていると俺は解釈しています。ロメロ系ゾンビと同じ理屈です。出来の悪い操り人形のようではありますが、彼自身が傀儡なわけですから、さもありなんというわけですね。
毒をもって毒を制す。亡者をして怨霊を斃す。本作でやっていることは分かりやすく言うと、映画『貞子VS伽椰子』と同じ。勧善懲悪などでは全くなく、悪いやつと、その中間管理職と、哀れな武士しか出てこない物語ということ。だが、そこがいいのです。












本作では一部のステージで時間の流れが存在します。夜を迎え、月が上り、月が落ちて、東の空に日がさしていく。そのような演出がなされているのですが、それって、疲れを知らない亡者と怨霊が人外魔境の地で、昼夜を問わず戦いつづけているってことなんですよ。ステージやボスによっては長期戦になることもあり、その場合は戦いが数日に及ぶことも。最高にカッコイイ絵だと思いませんか。これが『源平討魔伝 巻ノ弐』という作品なのです。
アーケード版とスタッフが異なりますので、厳密に言えば、前作と少し雰囲気が異なる点は否めません。しかし、これはこれで全然ありだと思っています。戦いの果てに何を見るのか。それはプレーヤー次第。個人的には、平景清の魂が永遠の安寧を得られることを切に願っています。
この作品で遊ぶ方法
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