【名作保証】『MOTHER』(ファミコン)――エンディングまで泣かないのは難しい!大人になってからもう一度プレイしてほしい、あの夏を感じるおつかいRPG!

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こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘した作品は、1989年7月に任天堂より発売されたファミリーコンピュータ用RPG『MOTHER』。コピーライターの糸井重里さんがゲームデザインを手がけた作品として有名な本作ですが、『MOTHER2』のほうが名作としては有名ですが、その前作である『MOTHER』もなかなか良い作品、いや、俺は『MOTHER 2』よりもこっちのほうがすごい作品だと思っています。今回はそんな『MOTHER』の魅力について語ってみる回です。

さあ、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を掘り起こしていこう――。

※今回の記事では、ゲームボーイアドバンス版『MOTHER1+2』のものを使用しています。

『MOTHER』とは

『MOTHER』とは、1980年代のアメリカの片田舎を舞台に、超能力や特技を持った少年少女たちが街に起きた不可思議な現象の謎を解き明かしていくという冒険RPGです。

ゲーム画面はスヌーピーっぽいのですが、ゲームのストーリーや雰囲気は、映画『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』『IT(イット)』『SUPER 8』『SUMMER OF 84』、Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス』のソレ。大人たちが常識の範囲内で事態収拾に駆けまわる中、子どもたちの柔軟な思考と発想力のほうが真実に近く、その行動が事態を解決させていくという感じの物語が好きな方には絶対ハマる作品です。

糸井重里さんは、『ドラゴンクエスト』のような中世ヨーロッパのような世界観じゃなくても、もっと子どもたちにとって身近なファンタジーはあると考え、ハリウッド映画に注目し、『MOTHER』のスートリー・世界観は作られていきました。そのため『MOTHER』は、1970~1980年代の子どもたちが好きなハリウッド映画ネタのごった煮になっており、いたるところに名作といわれる映画のオマージュがあります。

基本ベースは、スティーブン・キング作品だと俺は思っていて。ごく普通の少年が実は超能力を持っている。クラスの負け組生徒が実はすごい発明をしている。クラスのいじめっ子が仲間らなるといい奴になる。クラスの女子グループから外れた女の子が仲間になる。このような要素があって、線路沿いに歩いて次の街に向かったり、子どもしか入れない不思議な国に迷い込んだり、おばけ屋敷に潜入したり、バットやフライパンでどう考えてもこの世にいない奇怪な生物と戦ったりします。

少年少女たちは、おばけ屋敷に入ったり、猛獣が脱走した動物園を駆けまわったり、ゾンビが徘徊する墓地を通り抜けたりしてハラハラしつつも、戦車を動かしたり、謎の巨大ロボットが仲間になったりもします。自分たちに親切にしてくれる大人たちと出会ったり、ステージに立って歌を歌ったり、山小屋で同級生の女の子から告白されたり。そんないろいろな経験をして成長していく、ひと夏の大冒険――それが『MOTHER』というゲームです。

『MOTHER』のストーリー

1900年代のはじめ、アメリカの田舎町・マザーズデイの空に黒雲のような影が落ち、ひと組の夫婦が行方不明になりました。夫の名はジョージ。妻の名はマリア。2年ほどして、ジョージは家に戻りましたが、どこに行っていたのか、何をしていたかについて、誰に話すこともなく、不思議な研究に没頭するようになりました。妻のマリアはとうとう帰っては来ませんでした。

時は流れて1988年。マザーズデイの町に突如、異変が起こりました。動物園の動物たちは凶暴化して檻を抜け出し、墓場からは死人が甦る。何かとてつもないことが起こり始めようとしているかのようです。マザーズデイに住む1人の少年の家にも異変が起きました。家が地震のように揺れ始め、電気はスパークし、電気スタンドや人形が意志を持っているかのように襲いかかってきます。

少年は、母と妹をなんとか救い出すことに成功。そこに、仕事場から家族のことを心配したパパから電話がかかってきます。家の状況を聞いたパパは、起こっている現象を解決するには、少年に曽祖父の研究が役立つのではないかとアドバイス。秘密の地下室で曽祖父の日記を手に入れた少年は、この事態を引き起こしているのは「空駆ける船」であることを知ります。

実は、少年には普通の人にはない不思議な力がありました。超能力PSIです。大いなる力には大いなる責任がある。自分の力は、このときのために存在していたのかもしれないと思った主人公は、身支度を整えて旅に出る決意をするのでした。

『MOTHER』のダイジェスト

『MOTHER』の魅力

『MOTHER』のすごいところは、「コンピュータゲームとはプレーヤーに体験をさせながら物語を伝えられる」という特長をつかんだうえで、まるで映画を観終わったような、ゲームでもこういう感動をさせられるんだ、ということを意図的に作っているという点です。

1980年代、『ドラゴンクエスト』の大ヒットを受けて、ファミリーコンピュータではRPGが大量に作られましたが、それ多くがドラクエの表面的な模倣である場合が多く、作品としての志が高いものは少なかった気がします。そのような中で、『MOTHER』はアタマ1つ抜けている作品でした。

以下はネタバレを含みます。

『MOTHER』は、少年少女たちがラスボスをバットやフライパンやペンシルロケットでボコボコにしてぶっ殺してハッピーエンドというゲームではありません。実はラストバトルがゲーム内最大のイベントとなっているという大胆な作りなんですね。どういうことか。本作は「これまでの冒険で積み上げてきた経験値による強さを感じるゲーム」というよくあるRPGではなく、「これまでの冒険の意味をラストバトルで知るゲーム」という構造になっているのです。

というのも、

ラスボスの「ギーグ」が強すぎるのです。外の世界からやってきたギーグは、地球人をはるかに超越する科学力と超能力を持っており、もともと超能力を持っていたくらいの地球人の少年少女たちがちょっと強くなっただけでは、到底敵う相手ではありませんでした。その残酷な事実を戦ってみてはじめて知る絶望。何をされたかも分からないまま削られていくHP。あらゆる攻撃手段を講じてみても、そのどれもがギーグには通用しない。何か手はないか。人は生命の危機に瀕したとき、生き残るためにこれまでの人生すべての記憶を洗い出して、この危機を脱する方法を探すといいます。走馬灯というやつですね。そして、不意に戦闘コマンドに現われる「うたう」。冒険の中で覚えた、あのメロディーを口ずさむ主人公たち。途端に、ギーグに変化が起きます。「ソノ歌ハナンダ…!?」と。あきらかにギーグの様子がおかしい。歌い続ける主人公たち。「ソノ歌ヲヤメロ!」。ギーグはこれまで以上の力を持って主人公たちを傷つけ、そのメロディーを歌わせることを妨害してきます。しかし、その攻撃は精細に欠けたもの。ギーグはあきらかに動揺していました。なぜ、ギーグにメロディーが効くのか。あのメロディーは一体何なのか。プレーヤーの脳裏にこれまでの冒険の記憶が思い起こされていきます。

1900年代の初頭。夫の名はジョージ。妻の名はマリア。しっぽを振った赤ちゃん。本当の子どものように。天翔ける船の忘れ物。クイーンマリー。子守歌。

そこで唐突に分かるわけです。『MOTHER』というゲームは、ギーグにエイトメロディーを届ける物語だったということを。冒険で身につけた強さは、敵を倒すための力じゃない。ギーグに8つのメロディーを届けるために耐え抜く力だったのです。『MOTHER』とは究極のお使いRPGだったのです。8つのメロディーがギーグにとっての何だったのか。それを聞いてギーグが苦しんだ理由は何なのか。それは言葉にするととても陳腐なのでここには書きませんが、種族を超えたコミュニケーションによって生まれたものは、地球を救うくらい強力なものだったんですね。どんな攻撃も通用しなかったギーグが、8つのメロディーによってケタはずれのダメージを負っていくのです。

8つのメロディーをすべて聞き終えて、すべてを思い出したギーグには、ある感情が生まれてしまい、もう地球を攻撃することはできなくなってしまいます。メロディーが1つずつ奏でられるごとに、プレーヤーにもこれまでの冒険の思い出がよみがえってきて。いつも放課後にかかっていたカノンを卒業式に聞いたことでいろいろな思い出が噴き出してこみ上げてくるように。ラストバトルがどうしようもなく泣けるのでした(うええん)

レトロゲームとしての『MOTHER』

『MOTHER』は当時のRPGにしては珍しく、フィールドに街のシンボルがあって接触するマップが切り替わるタイプではなく、街もフィールドも同じマップ上に描かれており、とてつもなくマップの広いRPGです。

これは、ゲームとしての「売り」を作るという目的もあったと思いますが、他にも意図があります。それは、子どもの頃に駆けめぐった空き地や草原はあんなにも広く感じたのに大人になってからみると本当はそんなに広くなかった…というアレを作っているんですね。ゲーム中は広大に感じたマップですが、実際は電車で数駅分しかない地域でのお話なのです。俺が大人になってから『MOTHER』を遊んでほしいと思う理由は、こんなさまざまな仕掛けに気がついて、グッとくるからなんです。

いつも家に帰ると、自分の好きなものを用意してくれるお母さん。ゲーム時間が長いと心配して電話をかけてくるお父さん。自分のために命を顧みずに助けてくれる人たち。子どもたちを守るために奔走する大人たち。子どもの世界は、実はたくさんの大人たちの愛に包まれていたことが、大人になってプレイするといろんなところに見えてくるのです。

最後に、『MOTHER』の販促用キャッチコピーとボディコピーをご紹介しましょう。

エンディングまで、泣くんじゃない。

約束しよう。熱いけど、さわやかな涙が、きっと流れる。
昔話や神話なんかじゃなくて、
これは、キミ自身みたいなキミが生きていく、
愛と勇気と冒険の物語なんだ。
そうしてすごした数週間(数日?数ヶ月?)を、
キミはオトナになっても忘れない。
すでにオトナのひとには、
またちょっと別の理由もあって、いっそう泣ける。
名作ってそういうものなんだ。
小学生からインテリ(アタマの良いオトナ)まで。
『MOTHER』って、そういうR.P.G.なんだ。

謳い文句に偽りなし。『MOTHER 2』は目指しているところが違っており、まったく別のゲームになってしまっているので、『MOTHER 1』が『MOTHER 2』の劣化版という認識を持っているとしたら、それは間違っていると思います。でも、1980年代を知っている人のほうがきっと楽しめる。『MOTHER』ってねそういうR.P.G.なんだって思います。

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