みんながよく知っている日本むかし話をベースにしつつ、誰も知らないまったく新しいむかし話が作られました。それが、こちらの作品。後に優れたアドベンチャーゲームをつくり続ける任天堂の初のアドベンチャーゲーム。ユーモアあふれる男の子と女の子の冒険譚。さまざまな出会いと別れ、少年の成長を描いた笑いながらエンディングで泣ける名作です。
さあ今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を紐解いていこう――。
※この記事には少しネタバレが入っています。
こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。
今回発掘した作品は、任天堂が1987年9月4日にリリースしたディスクシステム用アドベンチャーゲーム『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島 前編』。実はこの作品、任天堂の初のADVとなっています。
開発は、パソコンゲームでADVを得意としていたパックスソフトニカと任天堂の共同によるもの。このパックスソフトニカは名前が外になかなか出ませんが、2000年ぐらいまで任天堂の下請けを長らくしていた開発会社であり、任天堂の名作ADVのほとんどの開発に関わっていたり、ファミコンでは堀井雄二ADV三部作の1つ『オホーツクに消ゆ』も手がけています。
ひと言でいうと、「オーソドックスで誰でも手軽に楽しめるSF解釈の入ったむかし話」。
『未来少年コナン』、『天空の城ラピュタ』、『ふしぎの海のナディア』のような、男の子と女の子がいっしょに冒険しながら成長していく話が好きな人は、ほぼ間違いなく、どストライクな作品だと思います。
ゲームシステムは、基本的にはオーソドックスなもの。ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』からはじまるコマンド型ADV。その気になれば、コマンド総当たりしていけば先に進める作りとなっています。が、その一方で、実に挑戦的なオリジナル要素もあります。
【特徴①】 前編・後編の二部構成
ディスクシステムという書き換えなら500円という安価な媒体ということもあり、ADVでは初の前編・後編という二部構成。後編を遊ぶためには前編のディスクカードも必要になります。
ハドソン末期の『桃太郎電鉄』はみんなで対戦するためには、3DSの本体とソフトが人数分必要というクヒ仕様で「アタマ、沸いてんじゃねえのか」と思ったものですが、こちらは書き換え版もあるという価格設定が良かったのか、大きな反発はなく、ユーザーに受け入れられたようです。
【特徴②】 ザッピングシステム搭載
主人公は、男の子と女の子なのですが、「いれかわり」コマンドを使うことによって、プレーヤーが操作するキャラクターが変わります。ザッピングと書きましたが、後に出てくる名作ADV『イヴ バーストエラー』のような本格的なザッピングではありません。
男の子は言葉足らずだけど行動力がある。そのため、重い荷物を持ったり、崖を上るといったことは得意。そのかわり、人から話を聞いたり、説明するのは苦手。女の子はしっかり者だけど行動面が不得意。そのため、人から聞き込みをするのは得意だけど、アクション的なことはできない。この特徴を活かして、キャラを入れ替えながら進めていきます。
【特徴③】 ポップな演出&アニメーション
ADVだからといって、一枚の大きな絵を描こうとするのではなく。キャラクターと背景のチップを並べてシーンを描写。ストーリーが進展する際には、絵の一部分が変わったり、アニメーションするように。これは、パソコンでは硬派な推理物が多かったADVのイメージ払しょくのために、家庭用&子供向けのポップな演出が意図的に導入されました。
そんな『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島 前編』が、どんなお話であり、どんなゲームなのかをお伝えするために、ストーリーの一部をご紹介したいと思います。
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。二人には子どもがいなかったので、いつか子どもを授かれるようにお祈りをしていたそう。そんなある夜のこと。二人は別々に不思議な夢を見ます。
翌朝、二人は見た夢のことを伝えあい、不思議なこともあるものだと語り合いました。夢のお告げが真かどうか分からないまま、生活のために働きに行かなければなりません。おじいさんは山へ芝刈りに行きました。
そのころ、おばあさんは川へ洗濯に行くことにしたのですが…。
かくしてお告げ通りに、女の子と男の子を授かったおじいさんとおばあさんは2人を育てていくことになりました。そして、8年の月日が流れていくのです。
ここからは、この先、何が起こるのかをダイジェストでお送りいたします。
(なんと二人を育ててくれたおつうさんは人間じゃなかった!)
(雪女登場!隣村まで行く二人のお使いを邪魔をしてくる!)
(昔話のようにおむすびを使うと穴の中からネズミが出てきました)
(いろいろあって、なんとか隣村に到着した二人)
(なんでも都では邪悪な竜が暴れていて、人間を鬼にしているという)
(意外な人物から自分たちの出生の秘密を知ってしまう二人)
(空には月が出ていないのに、川面には月がある??)
(二人の前に現れる”おなべのばけもの”。その役割が語られることに)
(なぜか都にしかいないと言われている鬼が二人の家に!おじいさんとおばあさんがピンチ!)
(いつしかの六地蔵が、二人の旅立ちのために、旅に必要なものをプレゼント)
(鬼によって壊された家がいたるところに)
(余計なことをしないように、というけど、余計なことをしないと前に進めません)
(あることをしつこく行なうと、岩が崩れて温泉が噴き出してきました!)
(二人がお使いに行った隣村が短期間で湖の底に。鬼の仕業か!?)
(困っているところに、犬が登場。賢くて優しい犬の名前は「りんご」)
(川をわたるには船が必要ですが、たぬきの泥の船を信用していいものか?)
(ウサギの船は木製ですが、因幡の白兎の話からするとこっちもヤバそう…)
(ある出来事を経て、鬼と戦えるだけの身体を手に入れた男の子)
可愛らしいグラフィックと、昔話をもとにとんちを利かせた謎解き、FM音源によるステキなBGMでつづられる冒険劇はつづいていくのでした。
一部、選択を誤ると即死するところがあったり、セーブしていないと章の初めからやり直さなければならなかったり、ちょっとしんどいところはあるのですが、全然に先に進めないということはありません。任天堂のADVは怪しい場所では必ず「いつもと違う言葉」が使われるので、それをヒントにしていただければと思います。
=注意=
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