『ダイの大冒険』がどんな物語だったか、ふり返ってみる⑦(森のアジト~ロロイの谷)

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こんにちわ、レトロゲームレイター/ジョーンズです。
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』がどんな物語だったかをふり返っていく企画も今回で第七弾。今回は、『ダイの大冒険』が力を敵を倒していく話ではないことが分かる、ある意味、全物語中でもっとも重要といえるフェーズになります。なので、これまでよりも、ちょっと文字数多めで解説していきますね。

森のアジト・ダイ逃げ出す

最終決戦と意気込んで潜入した大魔宮バーンパレス。しかし、竜騎将バランは死亡し、ダイたち一行は大魔王バーンに完膚なきまでに敗れ去りました。海を4日間漂流していたポップとマァムは、チウ率いるモンスターたちの捜索隊に発見され、一命を取りとめます。しかし、クロコダインとヒュンケル、そしてダイは行方不明のままでした。

その頃ダイは、竜(ドラゴン)の騎士が死んだときに現れるというマザードラゴンに抱きかかえられ、天上界に帰ろうとしていました。「俺が死んだら、また新しい竜(ドラゴン)の騎士が生まれるの?」と聞くダイに、マザードラゴンは首を振ります。「もう竜(ドラゴン)の騎士が生まれない」と。当初、人間の神・魔族の神・竜の神が想定していた以上に邪悪な存在は力をつけてきている。冥王竜ヴェルザーしかり、大魔王バーンしかり。そして神にかつてほどの力はない。竜(ドラゴン)の騎士はダイで最後となり、地上の運命はもうなるようにしかならないと。そんなマザードラゴンに「もう一度チャンスを与えてほしい」と語る存在が現れます。それはバランでした。

バランは語ります。マザードラゴンが感知した竜(ドラゴン)の騎士の死は自分のことであると。そして、本来、一代限りで潰えるはずの竜(ドラゴン)の騎士が人間との間に子を為したという奇跡こそが、「人間自身に人間たちの未来を託そう」という神の意志ではないかと。「力だけがすべてを司る今の時代に、魂をもって悪を討つ」。それこそ、新しい時代の竜(ドラゴン)の騎士の使命ではないかと。バランの言葉に納得したマザードラゴンは、自分の残る力をダイを与えて地上に戻し、バランを天上界へ導きます。しかし、ダイの剣は折られ、あらゆる攻撃が通じなかった大魔王バーンに恐れを抱いたダイは、バランに泣きつきます。しかし、バランは怒るでも嘆くでもなく、ダイが大魔王バーンを倒すことを信じて送り出すのでした。

神秘の国テランに突如現れたマザードラゴンとその光の中から現れたダイ。勇者の生還に、森のアジトに集結している人間たちの連合軍は大いに盛り上がります。森のアジトは、超竜軍団によって滅ぼされたカール王国のフローラ女王の呼びかけによって編成された人類最後の軍隊でした。「勇者ダイが生きていればなんとかなる!」。そんな人々の希望が自信を失ったダイには重すぎるプレッシャーでした。そしてダイは、ついに逃げ出してしまいます。

みんなが必死にダイの行方を探す中、たった一人ポップだけが「全然心配ねえって!」と笑っていました。

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思い出の地・ダイとポップ

最前線が逃げ出したダイは、とある思い出の場所にいました。そんなダイに話しかける存在が1人――ポップでした。二人でずっと旅をしてきたからこそ、ダイがルーラで行ける場所にはポップも行ける。ダイとずっといっしょだったからこそ、ダイが行きそうなところが分かる。ポップだからこそです。「逃げ出した俺を怒らないの?」と聞くダイに、ポップは「バカだな。そんなことで俺が他人を非難できっかよ!」「“逃げ出し”に関しちゃあ、俺のほうが大先輩だぜぇ!」と笑います。再び沈黙する二人。ポップはダイに静かに自分の思いを伝えます。

デルムリン島を旅立ってからずっと一緒に旅してきたからこそ、自分にはダイがどれだけ頑張ってきたか分かる。充分すぎるほど頑張ってきた。だから、ダイ自身がもう頑張れないというのなら、それでもいい。でも俺はもう一度大魔王バーンと戦いに行く。強い奴が怖くて逃げ回ってばかりいた自分だけど、世界一強い魔界の神との戦いからは逃げない。はじまりは、本当に小さな勇気だった。それをふりしぼって戦ってきたからこそ、今の自分がいる。何度も死にかけて、でも危機を乗り越えて、今ここにいることが誇りなんだ。今やめてしまったら、これまで積み重ねてきたことがすべて無駄になってしまう。それが耐えられない。これまで俺たちは、アバン先生のため、レオナ姫のため、いつも誰かのために戦ってきた。でも、もうすでにそれだけが戦う理由じゃない。これはもう俺たち自身の戦いなんだ。ダイは自由にすればいい。でも、俺はお前を信じている。信じられる。勇者だからではなく、竜(ドラゴン)の騎士だからではなく、いっしょに旅してきたダイを信じている。

一人になったダイは、ポップに言われたことを反芻します。そして自分の心の中に「答え」を見つけるのでした。最初から答えは決まっていたのです。それを教えてくれたのはポップでした。かくしてダイは、絶望的な戦いに向けて戦線復帰を決意するのでした。

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森のアジト・作戦会議

森のアジトでは、大魔宮バーンパレス攻略に向けてフローラから状況を打開する作戦が提案されていました。それは、大破邪呪文ミナカトールによる大魔宮バーンパレスの結界封印。大魔宮バーンパレスは大魔王バーンの超魔力によって結界が張られているため、現時点ではルーラによる潜入は不可能です。しかし、魔の影響を中和する破邪呪文ならば、結界を消滅させ、ルーラによる潜入が可能になります。しかし、相手は大魔王バーン。波の破邪呪文では効果がないため、呪文増幅効果のある特殊な石とその使い手5人で五芒星を作り、さらに伝説の大破邪呪文ミナカトールを使用するというものでした。

実は、アバンの使徒に配られている「アバンのしるし」輝聖石という魔の力をはじく力を持つ石であり、「アバンのしるし」を手渡された者は輝聖石に魂の力を反映できる素質があると認められた者でした。しかし、アバンの使徒は、ヒュンケル、マァム、ポップ、ダイの4人しかおらず、「アバンのしるし」も4つしかありません。女王フローラは自分の首にかけている「アバンのしるし」を差し出します。それは、かつてアバンが魔王ハドラーとの決戦に赴く際に、フローラに渡したものでした。そしてフローラは、「もしアバンが生きていれば、必ずアバンのしるしを持つにふさわしいと判断するでしょう」と、最後の「アバンのしるし」をレオナ姫に渡します。5人の使徒と5つの石が揃いました。

また、大魔王バーンはダイたちをおびき寄せるために、捕らえていたヒュンケルとクロコダインの公開処刑を宣言していました。その時は、頭上に大魔宮バーンパレスがあり、アバンの使徒も5人揃い、大破邪呪文ミナカトールを発動させるすべての条件が整うチャンスでもありました。

しかし、大破邪呪文ミナカトールを使えるものは、世界中どこにもいません。カール王国の森の奥に「破邪の洞窟」というダンジョンがあり、古文書によると、その地下深くに大破邪呪文ミナカトールが使えるようになる契約の場所があるとのこと。そこで、女王フローラ、レオナ姫、マァム、メルルの4人は、何層あるか分からない「破邪の洞窟」に大破邪呪文ミナカトールを習得するために潜るのでした。

調子を取り戻したダイは特訓に明け暮れます。大魔王バーンに通用する新必殺技を編み出すために。そんな中、一人絶望を感じている者がいました。ポップです。「アバンのしるし」は、持ち手の魂の力に反応して光り輝くもの。ダイも、マァムも、レオナもそれぞれの色が光りました。おそらくヒュンケルも光るでしょう。しかしポップは、何をやっても光りません。そしてポップは思い当たります。自分が正式に卒業していなかったことに。このままでは、みんながこの瞬間に賭けて起こそうとしている大破邪呪文ミナカトールが自分のせいで失敗してしまう。ポップはなんとかして「アバンのしるし」を光らせようと努力しますが、その試みはすべて失敗。自分と他のアバンの使徒たちとの決定的な違いを思い知るのでした。

どうにもならなくなったポップは師匠であるマトリフのもとに足を運びます。しかし、悩みを打ち明けられないポップの様子に察したマトリフは言います。「お前がすべてに恵まれた奴だったら、ここまてにゃなれなかった。弱っちい武器屋の息子だったからこそ、誰よりも強くアバンに憧れ、苦闘の道も歯を食いしばってこれたんだ」「自信を持て。お前は強い」「俺の…自慢の弟子だ」。マトリフから最大級の賛辞をもらって駆け出すポップ。自分を信じて、その時に「アバンのしるし」が輝くことを信じるしかない。そう決意します。

レオナ姫は無事に大破邪呪文ミナカトールを習得し、女王フローラ、マァム、メルルと帰還しました。また、ロン・ベルクは、ダイの剣を修復し、ダイの仲間たちのために新しい武器を用意。ダイもアバンストラッシュを改良した新必殺技を完成させます。決戦前夜、ダイは夢の中で初めて母ソアラと出会い、父バランと3人の時間を過ごします。バランは母ソアラを「太陽のような人」と言いました。自分も人間たちの太陽のような存在になりたい、そう決意を新たにするのです。

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ロロイの谷・ヒュンケル+クロコダイン救出作戦

処刑の時刻、人間の戦士たちは周囲の岩山に身を隠し、スキをうかがっていました。ヒュンケルに暗黒闘気による戦い方を教えたミストバーンは、ヒュンケルにもう一度、暗黒闘気を受け入れる気はないかを勧誘し、ヒュンケルはそれを受け入れてしまいます。しかし、それはヒュンケルの作戦でした。受け入れた膨大な暗黒闘気によって、反発する自分の光の闘気を引き出したヒュンケルは、今際でパワーアップに成功。それを皮切りに、人間の軍勢がヒュンケルとクロコダイン救出のために、処刑場になだれ込みます。しかし、魔王軍は人間の動きを読んでおり、強力な魔界の魔物たちを配備して、一気に人間の残存兵力を駆逐しようとしていました。

アバンの使徒たちは処刑場に降り立ち、五芒星を生成。大破邪呪文ミナカトールの準備に入ります。1人ずつ手をつなぎ、「アバンのしるし」が輝いていく。そして最後のポップの番です。

ポップの「アバンのしるし」は光りませんでした。

決定的な事実を思い知らされて傷つくポップ。大破邪呪文ミナカトールは光り輝く5つの「アバンのしるし」がなければ発動できません。自分のせいで仲間たちを、人間軍を最大の窮地に追い込んでしまったことが耐えられないポップは、仲間の静止を振りきって、処刑場から逃げ出します。完全にスキ状態のポップを仕留めるチャンスに気が付いたのは、妖魔司教ザボエラです。強力な猛毒を秘めた「毒牙の鎖」を光弾にしてポップ目がけて投げつけます。その動きに気がついた者が2人いました。1人はロン・ベルク。しかし、魔物の大軍を相手にしていたため手が離せません。もう1人はメルルでした。戦う術を持たないメルルは、自分の身体を盾にしてポップを守り、「毒牙の鎖」の餌食になってしまいます。

急速に猛毒が全身を回り、命が奪われていくメルル。自分のせいでメルルが死んでしまうことに絶叫するポップ。「毒牙の鎖」の猛毒は強力で、僧侶クラスの解毒呪文では効果がありません。高位の賢者でもいないかぎり、治療が不可能という重傷でした。「なんでメルルが死ななければならないんだ!」と叫ぶポップにレオナ姫が言います。「バカ!メルルは誰よりもあなたのことを信じているの!彼女はね、君が好きなのよ!」。メルルの思いを知って動揺するポップとマァム。メルルは最後の力をふりしぼって、自分の思いをポップに伝えます。

いつもお調子者みたいに振舞っているけど、本当は心が強く、どんなに苦しくても、どんなに怖くても、どんなに悲しくとも、最後は必ず乗り越えてしまう。そんなポップに憧れていた。ポップのそばにいたくて危険に付いていくけど思いはずっと伝えられなかった。言ってしまったら、今の関係が壊れてしまいそうで。どうしても伝える勇気が出なかった、と。

そしてメルルは最後の我が儘といって、「ポップさんの好きな人の名前を言って」と告げます。メルルはそれが自分ではないことを知っていました。ポップの本心を聞いて自分が諦めるために、そしてポップに今まで越えられなかった一線を越えてもらうために、命の炎が尽きる前に言ったのです。メルルの思いを汲んだポップは叫びます。

「俺はマァムが好きなんだよ!!」

瞬間、ポップの「アバンのしるし」が輝きはじめます。ポップの魂の力こそ「勇気」であり、勇気をふりしぼった一歩により、ポップは真の「アバンのしるし」使いとなったのです。喜んでメルルに輝く「アバンのしるし」を見せようとするポップ。しかし、すでにメルルは…。

「あああっ、ダメだ!目を開けてくれぇ!死んじゃいけねえ!死んじゃあ!こんな…こんな俺のために、死なないでくれぇぇっっ!」

ポップの魂の絶叫とともに、爆発的な魔力がポップから放出されます。それはパプニカ三賢者よりも強力な回復系の魔力。ポップ覚醒。かつて契約したものの、初級の回復呪文以外まったく使えなかったすべての僧侶系呪文が使えるようになり、その日、魔法使いの少年は絶望の奈落で賢者へと生まれ変わったのでした。

つづく

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