【名作発掘】『ときめきメモリアル』(PCエンジン)――それは灰色のリアルをきらめかせた恋愛シミュレーションというジャンルの出会いと別れ

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『ときめきメモリアル』とは

『ときめきメモリアル』とは、卒業式の日に好きな女の子に告白されることを目指して、高校生活3年間で、好きな子に告白されるだけの男に成長することを目指した自分育成シミュレーションゲームに、同級生の女の子たちとの友達以上恋人未満のドキドキ感を加えたゲームです。

ゲームは内容、「平日」と「休日」にそれぞれ「文系の勉強」「理系の勉強」「美術系の勉強」「運動」「部活」「身だしなみ」といったコマンドを行ない、ランダムでコマンドの成否があり、自分の各種パラメーターを上げていき、3年の卒業までに意中の同級生から告白されるだけの高パラメーター男子になっていることを目指すというものになります。隠し湯パラメーター設定やコマンドを実行すると表示されるチビキャラのアニメーションなどから、本作発売の前にPCで発売されていた『プリンセスメーカー2』を多分に参考にしているかもしれません。ただし、『プリンセスメーカー2』ではプレーヤーは自分の娘を育てる親の立場であるのに対し、『ときめきメモリアル』は自分を育てるというところが大きく違います。

娘を育てるのならば、パラメーター変化によって変わっていく娘の姿がゲームプレイのモチベーションになります。しかし、自分の分身を育てることにモチベーションを維持させることは難しいことです。だって、野郎を育てても面白くないんだもん。ゆえに、『ときめきメモリアル』はプレーヤーのモチベーションを維持させる&向上させるために、「バラメーターを上げるといいことあるぞ!」というイベントを「これでもか!」とぶち込んでいます。突発的に挿入される、意中のヒロインから「最近、輝いているね!」と褒められるイベントや放課後にいっしょに下校するイベント、新しいヒロインが登場するイベントなどが、それです。さらに、パラメーターが上がっていくと、週末にデートに誘ったり、デートに誘われることも。さらにさらに、季節ごとのイベントや学校行事はミニゲームになっていたり、意中のヒロインとの進展を予感させるイベントまで用意されているのです。

何が言いたいかというと、『ときめきメモリアル』と本作を模倣して作られた類似恋愛シミュレーションの大きく決定的な差は、プレーヤーを約5~6時間の高校生活3年間のプレイを飽きさせないために、どれだけ飽きさせないためのネタをぶっ込んだかの量ということです。

とにかく『ときめきメモリアル』はプレーヤーを飽きさせない方法の量がすさまじいと言えます。だって、攻略可能なヒロインが14人。すべてフル音声でしゃべるだけでなく、学校では夏服・冬服、私服は春夏秋冬の4バージョン+水着+体操着などまったく異なる立ち絵が用意されており、さらに一枚絵の限定イベントも1人につき何パターンか用意されているほど。物量がとんでもないわけです。世の中に恋愛シミュレーションを謳うゲームは数多くありますが、『ときめきメモリアル』クラスの物量を誇る作品はそうそうありません。そしてこの物量が、自分育成シミュレーションのゲームを恋愛シミュレーションに変える役割を担っている点が『ときめきメモリアル』の大きな特長です。

どういうことか。

私立きらめき高校にプレーヤーの分身を作り、それを育てていきながら同級生の女の子との膨大なイベントと遭遇していくことで、プレーヤー自身がきらめき高校の生徒になって、気になるアイツに認められる男になるために頑張るというさわやかさを持ちつつ、同級生の女の子たちと友達以上恋人未満のドキドキ感をバーチャルで体験できる仕掛けが生まれたのでした。俺をはじめとしてPCエンジンでこんなゲームを遊ぶのはリアル世界で彼女がいない非モテだけだと思うのですが、非モテ人間にとって私立ときめき高校で過ごす3年間は、灰色の現実世界よりずっと虹色の青春であり、彩のラブソングが流れ、新しいゲーム体験の旅立ちの詩だったのです。つまり、リアル世界では恋愛の「れ」の字とも縁がない人間が、このゲームの中では恋愛ができるステージに上がれて、憧れの女の子からデートに誘うだけで頬を染められる存在になれるバーチャルさが、『ときめきメモリアル』の恋愛シミュレーション(恋愛を知らない君たちに恋のドキドキを教えてあげるね的ゲーム)として心をつかんだのだと、かつてこのゲームにハマった自分の経験を踏まえて俺は分析しています。

しかし、『ときめきメモリアル』のすごいところは、恋愛シミュレーション側面だけでなく、自分育成シミュレーションとしてすでに面白いゲームとして確立されており、膨大なネタとイベント発生のランダム性によって周回プレイでも楽しめるゲームになったという点でしょう。ここが、その他恋愛シミュレーションゲームよりも『ときめきメモリアル』の深いところでもあります。

長々と語ってしまいすみません。でも、まだ続きます。

『ときめきメモリアル』のストーリー

はじまりがあれば、終わりがあるように。出会いがあれば、また別れもある。永遠につづく二人の関係。それはどんなに幸せなことだろう。

ここ、きらめき高校には1つの伝説がある。校庭のはずれにある1本の古木。その袂で、卒業の日に女の子からの告白で生まれた恋人たちは、永遠に幸せな関係になれるという伝説が。

永遠の幸せを夢見て、多くの若者がこの古木に挑んでいった。だが、彼らの運命を知る者はいない。そして今、また一人…。

『ときめきメモリアル』のダイジェスト

『ときめきメモリアル』の魅力

『ときめきメモリアル』が初めてどんなゲームなのか発表されたのは、CD-rom2付き雑誌『PCエンジンハイパーカタログ4』でした。そこで10分近いデモが収録されていたんですね。

【力作発掘】『PCエンジンハイパーカタログ4』収録のPCエンジン版『ときめきメモリアル』の予告編がかなりチカラ入っている件。
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これが当時は結構衝撃的だったんです。コナミ、お前もギャルゲー路線に走るのか、と。PCエンジンにおいてコナミの参入って後期のほうで、しかもリリースした作品のほとんどがハイレベルでした。『グラディウス』『沙羅曼蛇』『パロディウスだ!』『出たな!ツインビー』と完全移植ではないもののアーケードの雰囲気を充分感じられる作品を次々とリリース。PCエンジンSUPER CD-rom2では、PC版ではなかった完結編を付け加えた『SNATCHER』、ほぼ完全移植と言っていい『グラディウスII GOFERの野望』、涙が出るくらい凄い傑作『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』を発表していたのです。で、当時のPCエンジンは粗悪なギャルゲーも多くて、硬派なゲーマーはそんなギャルゲーを「女の子を出しておけば売れると思っているゲーム」として忌避する傾向があって。『ときめきメモリアル』のデモを見て、「俺たちのコナミも同じ路線を辿るのか!」と憤るのも無理がない話だったのです。

なので、当初『ときめきメモリアル』はまったく期待されていない作品だったのです。キッカケは、岩崎啓眞さんの『ときめきメモリアル』のレビューでした。パソコン通信でのレビューが最初だったらしいのですが、俺が見たのは電撃PCエンジンでの岩崎さんのゲームレビューです。岩崎さんのレビューは非常に作品の本質をついたものが多く、信頼のできるレビューとして定評がありました。「あの岩崎さんが95点をつけてる?嘘だろ!?」。PCエンジンユーザーの間でどよめきが走り、スルー案件だった『ときめきメモリアル』は一気に注目を浴びたという経緯があります。余談ですが、俺は発売日当日に購入しており、後の品薄騒ぎを尻目に、きらめき高校ライフを満喫していました(笑)

ここから先はかなり私見が入るのですが。

PCエンジン版の『ときめきメモリアル』って、ギャルゲーの皮を被った虎みたいなところがあるんです。一見するとギャルゲーなんですけど、一般的なギャルゲーとはまったく違うところでバリューを提供しているんですね。『ときめきメモリアル』の以前のPCエンジンのギャルゲーって、かわいい女の子が過激な格好やポーズを取っているお色気グラフィックがバリューでした。ところが、『ときめきメモリアル』もそういう部分はあるのですが、ギャルゲーとしての体裁を整えるくらいで、ゲームとしての面白さをバリューにした作品だと感じています。

もっと言えば、真面目にギャルゲーを作ろうという意志を感じないというか。だって、ギャルゲーとして売ろうとしたら『ときめきメモリアル』なんてタイトルは付けないと思うんですよ。お店のカウンターで聞けないじゃないですか、恥ずかしくて。それに、女の子たちの顔の赤らめかたも、大げさすぎるんですよね。ここに俺は「ギャルゲーってこういう感じなんだろ?」みたいな既存のギャルゲーを茶化している印象を受けるのです。でなければ、マンガみたいな設定の金持ちとかマッドサイエンティストとか番長が登場する舞台設定にはしないと思います。

もちろん、ただ茶化しているだけではなく、「俺たちはそこでは勝負しないぜ!」というメッセージと、それを証明するゲーム性を出しているところが、カッコイイのですよ。どストレートなギャルゲーとは少し距離を置いた作風が、いい感じに各部署と作用してPCエンジン版の『ときめきメモリアル』ならではの魅力を作っているように思えます。もちろん、そのすべては計算されたものではなく、偶発的な部分もあったと思うんですけどね。

レトロゲームとしての『ときめきメモリアル』

『ときめきメモリアル』に不幸があったとすれば、それは女の子たちと楽しい学園生活を送る「恋愛シミュレーション部分」が多くのユーザーでウケてしまい、ゲーム性を支えていた「自分育成シミュレーション部分」が目立たなくなってしまったところでしょうか。そのため、以降はユーザーが求める「恋愛シミュレーション部分」が強化されるような派生作品やシリーズ作品が作られるようになっていきます。それも『ときめきメモリアル』ではあるのですが、恋愛シミュレーションというジャンルへの向き合い方が、PCエンジン版『ときめきメモリアル』と、『ときめきメモリアル ~forever with you~』以降ではちょっと違ったりすると俺は思いますので、この点に注目してプレイしてみるのも面白いのではないでしょうか。

『ときめきメモリアル』で遊ぶ方法

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『ときめきメモリアル』の世界を楽しむ

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『ときめきメモリアル』のみなさんの思い出

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『レトロゲームレイダース 最後のゲー戦』は、管理人の感想を発表しているゲームブログですが、それは作品の感想の一面でしかないと思っており、みなさんの感想も集まることで、多面的な作品の魅力が見えてくると考えています。そのため、みなさんの思い出を募集しています。コメント欄に書き込んでいただいた内容は、随時、こちらの記事のほうに反映してきますね!

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