【レトロゲームと俺物語】『TOKYOナンパストリート』と、ゆかいな先輩たちと、性欲のほとばしりの話。

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今回は、中学生の頃の話をしたいと思います。

俺は、藤子・F・不二雄先生とゆでたまご先生の影響を受け、プロの漫画家になることを目指していました。そのため、中学校の部活は迷わず美術部を選びました。ところが、美術部は女子部員ばかり。矢吹健太郎先生が描きそうなハーレム漫画そのままのシチュエーションだったのですが、先輩たちも年下の男子部員をどう扱っていいのか分からなかったのか、俺は腫物にふれるかのような扱いを受け、それがなんともストレスでした。だもんで、1年目の1学期で転部することに。クラスの中の良い友人の勧めもあり、科学部に入ることになったのです。

美術部はいい匂いのする女の園でしたが、科学部はなんかイカのにおいがする男の獄でした。一応、「科学全般を研究する」という部活でしたが、部員は何かと多感な中学生男子です。部室の引き出しには『投稿写真』や『デラベッピン』というエロ本が顧問の先生にばれないようにたくさん収納されており、科学よりも女体の研究に勤しんでいる総勢20名の男子集団――それが俺が所属した科学部でした。

そんな科学部には、日本初のマイコン雑誌といわれている月刊I/O(アイオー)のバックナンバーがたくさんありました。俺が中学生の頃は、NECのPC-9801がブイブイ言っていた時代であり、マイコンではなくパソコンという名称が一般的になっていました。しかし、部室に置いてあった月刊I/O(アイオー)はちょっと古い、数年前のものだったと記憶しています。月刊I/O(アイオー)は真面目なパソコン雑誌だったことと中学生が読むには少し専門的すぎる傾向がありました。でも、部員たちは月刊I/O(アイオー)にかぶりついていました。なぜか。ちょっとだけエッチなゲームのことが記事になっていたからです。

どんなゲームが載っていたかというと、現在では『軌跡』シリーズを展開している日本ファルコムの『女子大生プライベート』とか、現在では『無双』シリーズを展開している光栄マイコンシステムの『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』とか、そんな時代です。「すごいゲームが出る!」と紹介されていたのがジャストシステムの『天使たちの午後』でしたから、どれだけ古いバックナンバーだったか、分かる人には分かっていただけると思います。月刊I/O(アイオー)は大変すばらしい雑誌なのですが、一つ欠点があるとすれば、エッチな袋とじがないことです。エッチなゲームを取り扱ったといっても、2ページくらいでサラッと紹介されているくらい。ゲーム画面も1~2枚載っているだけ。『投稿写真』や『デラベッピン』を常食としている男子中学生には物足りませんでした。

そんなある日の放課後のこと。副部長の先輩が「すごいものを拾ってきたぞ!」と部室(化学室)にやってきました。その手には古いパソコンがあります。FM-NEW7(77と混同していました)というパソコンです。なんでも、モニターとゲーム数本といっしょに登校途中のゴミ捨て場で見つけたといいます。先輩は遅刻するのもいとわず、一度家に帰り、自転車を持ってきて、そのゴミ捨て場からFM-NEW7のキーボード部分とモニタを括り付け、こっその学校に持ってきたというのです。「回収する前に回収する必要があった」と語る先輩。先輩のご先祖様は歴史の教科書に載るような偉業を成し遂げた方なのですが、その貫く信念は子孫に間違った形で伝わっているようでした。部長の先輩は「でかした!」と言い、3年の先輩たちが中心となって、パソコンのセッティングにかかります。

ところが先輩たちは、ラジカセをFM-NEW7に取り付けようとしているではありませんか。「何をしているんですか?」と聞くと、先輩が教えてくれました。「ゲームのデータはカセットテープに入っている!それをロードするんだよ!」。俺は驚きました。というのも、当時の俺が触れていたMSX2+やPC-9801といったパソコンの記憶媒体としてフロッピーディスク。それより前の記憶媒体がカセットテープというのは知識としては知っていましたが見たのは初めてだったのです。「ファミリーベーシックでもそうだっただろ?常識だぞ!」と先輩は言います。「専用のカセットデッキじゃなくていいんですか?」「いや、磁気テープからデータを読み取れれば、音楽を聴くラジカセでも大丈夫なはずだ」「ゲームは何を立ち上げるんですか?」。副部長の先輩はニンマリ笑うと、手に持っていたカセットテープを見せてくれました。

『TOKYOナンパストリート』

と書かれていました。そう、俺たちはその存在を知っています。部室にある月刊I/O(アイオー)の記事で読んだことがあったからです。なんでも街にくり出して女の子に声をかけて、会話が上手くいけば、いい感じのことになるみたいなことが記事には書かれていたはず。しかし、月刊I/O(アイオー)の少ない情報では、どんなゲームなのか想像がつきませんでしたし、どこまで描かれているか(←重要!)も分かりません。だから、俺たちはこう考えました。

月刊I/O(アイオー)で書けないくらいのところまで描かれているゲームに違いない、と。

そんなわけで、性欲を持て余した男子中学生たちは、期待と股間を膨らませて、先輩たちのセッティングを見守りました。「よし、生きてるぞ!電源が付いた!」。部長の声に一同が湧きます。そして、カセットのスイッチが押され、ゲームロードが始まりました。・・・なかなかゲームが始まりません。「先輩、ロードってこんなにかかるんですか?」「バカ!知らないのか!カセットのゲームはロードに時間がかかるんだよ!」。そうなのです。カセットテープからのゲームデータのロードはすんごく時間がかかるのです。

メイン・プログラムをロードします
・・・もうしばらくおまちください・・・

そんな画面を見つめながらロードが終わるのを待つ20人の男子中学生。まだか、まだか。FM-NEW7よ、俺たちに大人の世界を見せてくれ。早く、早く見せてくれ。化学室にそんな邪悪な念を漂わせて待つこと20分。ついにゲーム画面は新たな進展を見せました。

ロードにしっぱいしました

「ウソだろ!」「マジか!」「ふざけんなよ!」「もう一回だ!」。一瞬にして怒号層圏と化した化学室でしたが、まだ理性を持ち合わせていた俺たちは、再ロードを試みました。しかし、2回目もロード失敗。再々ロードも失敗。4回目も失敗。人は期待が大きいと落胆も大きくなるもの。気持ちのパンツを脱いでいた俺たちも、なんとも言えない心持になって、FM-NEW7を囲む輪から離れていこうとしました。その時です!

「おま〇こー----!!!」

突如、天を仰いで放送禁止用語を叫んだ副部長は、引き出しから『投稿写真』を1冊取り出すと、再び「おま〇こー----!!!」と叫びながら化学室を飛び出し、廊下を駆けていきました。はるか遠くからもう一回「おま〇こー----!」という雄たけびが聞こえました。呆気にとられている俺に、部長が言います。「ちょっと性欲を脳が処理できなくなっただけだから。大丈夫だから」。そしていそいそとFM-NEW7を片付け始めました。

15分くらい経つと、副部長が帰ってきました。「やぁ!」なんてさわやかな挨拶をしてきます。少し前までのキ〇ガイぶりとはまるで別人。心なしか肌はツヤツヤしています。そして、手に謎のプレパラート。「みんな、サイエンスしようぜ!」と副部長は語り、部長は顕微鏡を用意。プレパラートをセットして、部員一人ひとりに見せていきます。俺も見させられました。小さいオタマジャクシみたいなものが動いていました。「なんなんですか、これは?」と俺が専売たちに聞くと、

副部長「生命の神秘さ」
部長 「バカの遺伝子」

とのことでした。

そんなわけで、男子中学生20人が期待した『TOKYOナンパストリート』は何が原因かは分からなかったのですが、ついにロードができず、ゲーム画面を見ることはできませんでした。ちなみに、副部長の放送禁止用語の雄たけびは何人かの教師が聞くことになり、放課後に生徒指導室に呼ばれて厳重注意を受けたとのこと。1980年代はこんな感じでギラギラした時代だったってお話でした。

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