
こんにちは、レトロゲームレイダー/ジョーンズです。
今回発掘した作品は、1995年6月、アテナよりスーパーファミコン用サウンドノベルとして発売された『夜光虫』。『かまいたちの夜』の半年後、『学校であった怖い話』の少し前に発売された、縦読み表示のミステリーサウンドノベルです。
さあ、今宵も、歴史に埋もれし、レトロゲームの魅力を掘り起こしていこう――。
『夜光虫』とは

『夜光虫』は、貨物船を舞台にしたサウンドノベルです。出航前から物語が始まり、外界との関わりが一切不可能な海上において「事件」が起きる。警察や名探偵に助けを求められない状況で、船長である主人公が事件の解決を試みる…という話になります。
が、
一般的には「ゲームボリュームが少ないサウンドノベル」という評価が付けられている作品でもあります。私の印象も同様です。6ヵ月前に発売された『かまいたちの夜』を遊んで楽しんだユーザーが次のミステリー作品を求めて期待を高めていた作品だと推測できますが、残念なことに本作には『かまいたちの夜』のようなボリュームはありませんでした。『夜光虫』は基本シナリオは3つ、選択肢はどれを選択してもその後の展開は大して変わりません。しかし、『かまいたちの夜』はシナリオ10パターン、選択肢によって予想もつかない展開になっていきます。つまり、ユーザーが勝手に抱いていた期待に応えられる内容ではなかった、と考えられます。
なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。
これは、完全に俺の推測ですが、『夜光虫』の企画はチュンソフトの『弟切草』発売後に作られ、「一歩進んだサウンドノベル」として「ストーリー物」を目指していた。ところが、本家チュンソフトが作った『かまいたちの夜』がアテナの想定を超える「三歩進んだサウンドノベル」だった。そのため、発売まで半年の間にこの装丁の差を埋める施策が打てず、結果としてボリューム不足を感じさせる内容で着地してしまったのではないでしょうか。
つまり、『かまいたちの夜』がなければ、また違った評価になっていた作品だったのかもしれないと思います。このブログでは、現在から過去を振り返ることで、過去の時代背景を俯瞰してみて、当時の印象に惑わされることなく、作品の本質に可能な限り迫っていくことを目的としています。では『夜光虫』とは、どんな世界観を作り出そうとしていた作品だったのでしょうか。ストーリーから追っていきたいと思います。
『夜光虫』のストーリー

夜光虫――。
直径1ミリほどの原生動物。昔は「海しらみ」とも呼ばれ、外部からの刺激で発光する。夏の夜、船の波頭に刺激を受け、漆黒の海に光の帯を残す。人はそれを幻影の航跡と呼ぶ…。
『夜光虫』のスクリーンショット




『夜光虫』の魅力

『夜行虫』は、チュンソフトの『弟切草』『かまいたちの夜』に比べると、どうしてもパンチの弱さが目立ってしまう作品です。登場人物が男性ばかりで、かつ、それぞれの個性が分かりにくい状態から本編が始まってしまうため、感情移入しにくいところも欠点でしょう。なぜ、そうなってしまうのか。それはシナリオが短いからです。このように書くとネガティブに聞こえてしまうかもしれませんが、『夜行虫』は1周がそこそこ長さのストーリーを楽しむサウンドノベルなのだと気が付きました。
『かまいたちの夜』と比べてしまうから、どうしてもボリューム不足とパンチ力の弱さに目が付いてしまうのですが、それでは『夜行虫』の魅力は見えてきません。
『弟切草』をサウンドノベル1.0、『かまいたちの夜』をサウンドノベル2.0とした場合、『夜光虫』はサウンドノベル1.5の位置にいる作品なのだと思います。1周が短いという話ですが、よくよく計算してみると『弟切草』の1周と同じ45分くらい。登場人物の個性が薄いのも『かまいたちの夜』の比べたらの話ですが、『弟切草』の主人公とヒロインと比べると同じくらいの情報量で、これはプレーヤーに想像の余地がある少なめの情報を意識していると思われます。
実は、チュンソフトのサウンドノベル作品は『弟切草』と『かまいたちの夜』とでは、プレーヤーのゲーム内登場人物への想像の余地比率が大きく変わっていて、分かりやすく言えば、『弟切草』はドラゴンクエスト型、『かまいたちの夜』はファイナルファンタジー型だと俺は感じていて。『夜光虫』は見え方は『かまいたちの夜』寄りですが、中身は『弟切草』に近いところがあるのです。
このように考えていくと、『夜光虫』の登場人物情報の少なさは、説明不足ではなく、プレーヤーに想像の余地を与えていることが分かるし、1周の短さも周回プレイを想定したものであり、行動の選択をしてもストーリーが大きく変わらないところも行き着くところは同じである『弟切草』的な部分であると見えてきます。
当時用人物のシルエット表示がなくて寂しさを感じるのも『かまいたちの夜』と比較しているからであって、そういった先入観を取り払ってみてみると、実写取り込み画像にさらに加工がされており、スーパーファミコンでも屈指の描き込みが施されていることに気が付くでしょう。
『かまいたちの夜』が凄すぎた作品で、しかも先に発売されてしまったがために比較評価され、マイナス面が強調されて印象に残ってしまったことが『夜光虫』の不幸だと俺は感じました。
『夜光虫』のレトロゲーム的な価値

前述した通り、サウンドノベル1.5の位置にいる作品として楽しむことが、『夜光虫』のレトロゲーム的な価値なのかなぁと思います。スーパーファミコン市場では完全敗北した『夜光虫』ですが、当然このまま終われるはずがありません。その思いが、ゲームボーイに移植された『夜光虫GB』、ニンテンドウ64で発売された『夜光虫II 殺人航路』に受け継がれていくわけで、そういった背景を知るためにプレイするのもまた一興かもしれませんね。
『夜光虫』で遊ぶ方法
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